「じゃあな、また一ヶ月後。ごめんな」
今日は夏制服姿の彼がいってしまう日。これだけはわかった。彼が小笠原を出て本島に行くことだけが。でもどこか教えてくれない。
ボストンバックを担いででかける姿は、まさに航海に行こうとしている男のよう。
玄関先で心優がじっと見つめていると、雅臣が困った顔で緩く微笑む。
「そんな目で見るなよ、すごく、弱いんだよな……、心優のその目……。俺の心臓がズキズキする」
「だって。どうにもできないんだもの。メールしかだめって……。准将に内緒で会いに行くとどうなるの?」
雅臣が焦った顔になる。
「とんでもない! 俺、クビになる……」
「そうなの? そんなことなの」
「うん。そんなことだ」
きっぱり真顔で言いきった。そんな雅臣のシャーマナイトの目を見て、心優も悟る。彼も本気で真向かう気迫で行くのだと。
「わかったよ、我慢する」
そんな彼がボストンバッグを放って、目の前にいる心優を抱きしめてくれる。
「帰ったら俺達の夏休みだ。お互いの実家への挨拶が終わったら、どこかで一泊か二泊でもいいからゆっくりしよう」
「ほんとに?」
好きな男の人と、何処かに泊まりに行くだなんて心優にとっては初体験だった。しかも婚約者の、憧れていた大佐殿と一緒。
「どこに行きたいんだ、心優は」
「隠れ家みたいな温泉かな」
「いいな、それ。一日中、心優を抱けるな……。くたくたになるまで、抱いてやる」
そういって、彼が綺麗な微笑みで心優のくちびるにキスをしてくれる。
一日中……、二人きり。軍服を脱いで、ほんとうの二人きり。長いキスをしながら、それを思うだけで心優もとけてしまいそうだった。
「研修中に探しておくな。心優も探しておけよ。帰ったら相談しよう」
それを楽しみにして。そういって、雅臣は笑顔ででかけてしまった。
心なしか、彼はその研修をとても楽しみにしているような気もする?
―◆・◆・◆・◆・◆―
とうとう雅臣が行ってしまった。よくわからない研修に行ってしまった。
すでに寄宿舎を引き払い、すっかり雅臣とふたり、官舎住まいに慣れてきたところだったのに、数部屋もある官舎に一人でいるととっても寂しい。
もう、こうなったらガンガン仕事打ち込もうと、心優は意気込んでいる。
たった一ヶ月じゃない。たぶん……。
軍の仕事が極秘であることはままあること。ここで動揺しては大佐殿の妻とも婚約者とも言えないじゃない!
そう言い聞かせ、心優は秘書室の仕事も、護衛部での新しい訓練官としての仕事にも邁進。
時折、杏奈ちゃんが准将室に乱入してきて、鈴木少佐をひっかきまわしているのを見ていると、それはそれでちょっと面白い。
しかも橘大佐が『杏奈ちゃんが帰ってきてくれて助かったー。英太が急に大人の顔でおとなしくなったわー』と言っていたぐらい。
雅臣にもメールでそのことを伝えると、『杏奈ちゃんに会ったのひさしぶりだったのに、ゆっくり話せなかった。英太攻略法を知りたい』なんて返信が来た。
今夜は大事な仕事がある。
心優は、シックな黒のワンピーススーツを着て葉山に着ていた。
マリーナに停泊するクルーザー。シェフが出張でフルコースの料理を作ってくれる船舶フレンチに、御園准将と共に招待されていた。
迎えてくれたのは、若白髪の司令殿と彼の秘書官。彼等も品の良いスーツ姿、桟橋で待ちかまえていた。今夜は貸し切りだと聞いている。
「まっていましたよ、葉月さん。貴女の好きなものを揃えておきましたからね」
「海東司令、お招きありがとうございます。いつも素敵なお席をご用意くださって嬉しいです」
司令はプライベートのつもりなのに。准将はあくまで上官からのお誘いという顔に徹している。
海東司令は航海を終えた御園准将を労うために、あの手この手で上等なご馳走をしてくれるのが恒例になっているらしい。
危うい雰囲気にならないか心優は警戒していたが、紳士的な男性としての労りと、それを快く受ける女性の清い空気しかかんじない。
こうして二人きりになる場に誘うのも、誘われて警戒なく向かうのも、そこに『二人だけでしか話せないなにかがある』からなのだと、心優も心得ているつもりだった。
海がよく見える窓際の席に、海東司令と御園准将が向かい合い。今日はレディファーストで海東司令がかいがいしく御園准将をエスコートしてご機嫌だった。
なのに、御園准将はとっても素敵な水色のスーツを着ていても、やっぱりここでもアイスドールのお顔。だから余計に海東司令がなんとか笑わせようとしているのが、ちょっと痛々しい。
そして心優は『お供専用』の少し離れたテーブルで、司令殿の秘書官と向かい合っていた。
「いつもあんなになるんだよな……。ミセスが航海から帰ってくると、ほんと司令は尽くそうとするというか……」
おつきの秘書官も溜め息をついている。司令としてそれはちょっとどうかと頭を痛めているようだった。
「大神中佐なら、もうご存じですよね。海東司令と御園のご関係。司令の御園と共にありたいという気持ちの表れではないでしょうか」
向かい合ってオードブルを口に運びながら、心優からかまをかけてみた。すると大神中佐が目を見開いて驚いている。
「けっこう、はっきりくるね。園田さん。もっと控えめで……」
「准将の後ろにひっついているだけの女の子と思われているのはよく知っています」
そう告げると、いきなり彼がくすっと笑いを抑えに抑えていた。
「どうやら、今回の航海で化けたというのは本当のようだね」
「とっても刺激的な航海でした。本心は二度とごめんなのですが、准将が艦長を務める以上、これからも心してお供をする覚悟です」
「うん、いいね。秘書官の鏡だ。今回もミセスに負けず劣らず冷たい顔をするラングラー中佐と無言で向きあって食事かと思っていたけれど、自分のお向かいさんも素敵な女性で今夜は嬉しいですよ」
そういって、素敵なスーツ姿の大人の男性が、心優のグラスにワインボトルを向けてくる。
本当はお酒は飲まないと決めていた心優だったが『ひとくちだけ』ご馳走への感謝の気持ちを込めて、グラスに注いでもらうことにする。
「園田さんも遠慮なくどうぞ。どうせ、僕たちは食べるだけしかできないのですから。おもいっきり行きましょう」
いつもは怖い顔で海東司令の隣に常にいる司令秘書官の大神中佐。そんな彼もスーツを着ていても、男っぽくて凛々しい。さすがエリート秘書官。でも心優の夫になる男も、元々エリート秘書官。負けていないものね……と密かにほくそ笑んでしまう。でもその反面、恋しくなってしまって困る。臣さん、会いたいな。声を聞きたいな……という想いが募るばかり。
「今夜は園田さんも素敵ですね。城戸大佐とご結婚されるとか、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
准将についていると、こちらも極上の女性としてエスコートをしてもらえるので、なんだか心優は落ち着かなくなってしまう……。元はボサ子だったのに、こんなところにこんな姿でいるようになるだなんて。一年前の自分を思うと激変だった。
食事をすすめていると、徐々に准将も笑い声をたてるようになってきた。海東司令と懐かしい空の話をしている。
海東司令は准将より五歳ほど年下。かの女性パイロットを一目見た時の……と、雅臣と話していたようなことをこちらも話している。
食事も最後になってきた頃。すこし、上官二人の会話が止まった。良く喋るのは海東司令だったから、彼が口をつぐむととても静かになる。
その海東司令が唐突に告げる
「貴女の次のポジションが決まりそうですよ」
御園准将の食事をする手が止まる。彼女が琥珀の眼差しで、若白髪のスーツの男を静かに見上げた。
「かねてより計画されていた小笠原に訓練校を設置するという話、工事の着工も目処がつき、そろそろ人事へと移る段階です。そこで初代の校長を務めて頂こうという話が出ています」
「校長ですか」
御園准将が微笑まずに答えたが、その目は海東司令に感謝する眼差しに心優には見えた。
「ありがとうございます。横須賀訓練校の校長をしていた叔父とおなじ仕事に就けるのですね」
「そう。航空機専門の訓練校ですから、貴女にはぴったり……。というより、そこは単なる居場所に過ぎず、貴女はそこを拠点にして暗躍するのでしょうね。期待していますよ」
「暗躍ですか。いつも酷いですわね、司令殿ったら」
御園准将が笑うと、海東司令も笑う。二人がワイングラスを掲げ、無言でカチリと合わせた。
「司令のためなら、離島でも存分に暗躍いたしますわよ」
「嬉しいね。頼りにしていますからね。御園のお嬢様」
この食事は定期的にかわされる『秘密契約の確認』なのだと心優は感じた。
ミセス准将にとっては、海東司令という将来有望なかばいだてをしてくれる上官が必要。
そして海東司令は、どうしても手を下せない時の『奥の手』が必要。闇で動いてくれる味方、御園家が持つ『黒猫』が。
そんな二人を見て、心優の心にまた滾るものが襲っていた。
近い将来。わたしは訓練校校長の秘書官となり彼女を護り、陸から彼女と共に海の男達をサポートする。
陸にウサギが帰ったら、今度、海にいるのはわたしの夫と彼女の夫だろう。
ぜったいについていく、離れない、一緒に彼等を護る。その思いで溢れていた。
―◆・◆・◆・◆・◆―
雅臣にメールをしても、返事が遅いし、たまにまったく返ってこない時もある。
どのような研修か知らされないまま。でも、やはり彼が必死になって日々を過ごしているのが伝わってくる。
それがわかると、心優は静かに待つ気持ちになってきた。
それにしても、いったい何をしているのだろう
海東司令との密会フレンチから暫く。各中隊や部署へのお遣い廻りで准将室に帰ってくると、ご無沙汰の男性がいた。
彼は御園准将と一緒にソファーで向きあって、お茶をしているところ。
「お久しぶりです、駒沢少佐」
小笠原広報室の少佐だった。
「お久しぶり、園田さん。中尉に昇進されるようですね、それから城戸大佐と結婚も。おめでとう!」
「ありがとうございます。あ、空母で撮影した広報映像、公開日に城戸大佐と一緒にネットで閲覧しました。すごかったですね! アクセスもガンガンあがっていて、大佐が興奮しておりました」
「でしょ! 見てくれた? 城戸大佐が現役エースだった時のカットも入れ込んで、この撮影には三人のスワローパイロットが関わり作り上げたというストーリー風にしてみたんだ」
「はい。城戸大佐がとても喜んでおりました。自分も飛んだみたいだって」
迫力あるテンポ良いハードロックの音楽に合わせ、スピーディーなカット割りで繰り出される今回の飛行部隊広報映像は大好評だった。
雅臣の狙いどおり、コメント欄には航空マニアからの『かっけえぇえ』の文字が躍り、ホワイト機とスワロー機の競演はマニアを興奮させていた。
その少佐が、今日はどうして准将室に? 心優が不思議に思った瞬間に御園准将が告げる。
「貴女が昇進したように、駒沢君も栄転するの。今度は司令部の広報室に行くのよ。お別れの前に、私が呼んだの」
それを聞いて、心優も驚き駒沢少佐に『おめでとうございます!』と祝福すると、彼が照れて頭をかいている。
「いままでは、その基地のタウン誌を作る程度の気持ちだったので、司令部の広報など務まるか不安ではあります。しかも、今回、評価された広報映像は御園准将が途中から企画を変更してくださったからより効果的だったわけですし、自分の実力ではないのです」
「なにを言っているの。貴方が元より企画した力があったからでしょう。小笠原でもタウン誌程度ではなかったでしょう。外部との取材や対応は広報室に任されていることなのですから」
はあ、と駒沢少佐は少しだけ気後れしている。
「心優、貴女にも聞いて欲しいから、ここに座って」
准将の隣に促され、心優も座る。
ミセス准将が駒沢少佐をじっと見ている。
「駒沢君。司令の広報室で存分に経験を積んできて欲しいわ。その後、」
そこでミセス准将がその先を躊躇っているのが、心優には伝わってきた。だが彼女が意を決したように言う。
「その後、私のところに来てくれないかしら」
唐突な申し出に、駒沢少佐が面食らっていた。
「は、あの、准将……。どういうことでしょうか」
「私の側近になって欲しいと言っているのよ」
「え!?」
心優もびっくり仰天。このウサギさんは突然なにかやりだす! ついに彼女のヘッドハンティングを目の当たりにしてしまう。
「あの、ですね。准将……。広報の仕事の後に? ですか?」
引き抜いてくれるなら、今ではないのか。その疑問も当然で、心優もそれを聞きたい。
「はっきりとは今は言えないけれど、私も今後の行く先がわかっているの。その時に、駒沢君が欲しいの」
「ですが、准将には既に優秀な秘書官が――」
「いつまでも一緒ではないし、いつまでも私の側に置いておくつもりもないわよ。彼等にもステップしてもらうために手放す覚悟もできているの。その後に、私のところの秘書室は人を入れ替えて新設するつもり」
心優にもわかってきた。『校長室の秘書室、側近集め』にミセスはもう動き出している!
「でも、駒沢君がその時に広報の仕事を全うしたいという気持ちが強かったなら、私はそれを応援するわ。他を当たります」
「嬉しいのですが……。先のことはわかりません。どうしてその時なのか……」
紅茶のカップを手にして、准将がそっと一口飲むと、そこでふっと不敵な微笑みを見せた。それだけで駒沢少佐がおののいている。
「軍隊の中枢、司令本部の広報室を経験する男に魅力を感じているの。だからよ。存分に経験してくれた男を護りに欲しいの。広報にいたのなら、民間との対応はプロでしょう」
なるほどと心優も頷く。でもかなり先の話だった。
「その時にならないと自分自身わかりませんから、お約束は出来ません」
駒沢少佐は気さくな男性だが、こんな時はきっぱりしていて頑固なところが見られる。
「いいのよ。私が数年前にこんなこと言っていたなと思いだしてくれたら。絶対に引き抜きに行くから、その時は思い出してね」
「わかりました。……あの、自分などに声をかけてくださって有り難うございます」
駒沢少佐が立ち上がって深く頭を下げた。
「いつも私を引き立てる記事を書いてくださってありがとう。そして、パイロット達のことも。私の次の仕事は、まさにパイロットと共にある仕事よ。飛行機も毎日一緒。駒沢君、本当は貴方こそが飛行マニアでしょう」
准将がにんまりとした笑みを駒沢少佐に見せる。そしてそれは当たっていたのか、少佐が頬を染めた。
「そうです。それで海軍を目指したほどですから。パイロットになりたかったわけではなく、子供の頃から好きだった航空機や空母に関わりたかったのです」
「それほどの愛好家でなければ、あの広報映像も、隊員の広報も造り出せないわね。その気持ちも欲しいの。私の次の仕事にぴったりの心意気なの」
そうなのですか? と、駒沢少佐はまだぴんとこないようだった。心優はもどかしい。言ってしまいたい。この小笠原にパイロットを育成する訓練校が出来て、その校長のお手伝いをする秘書官ですよと。でもグッと堪えた。
駒沢少佐なら、空を飛ぶパイロット達を大事にしてくれるはず。あんなに広報映像でパイロットを見つめてくれた男なのだから。
「そうそう、今日、駒沢君は他にも用事があって私のところに来てくれたのよ。ね、駒沢君」
「あ、ああ。そうでした、そうでした。僕の目的はそちらが本題」
引き抜きの話はひと段落。駒沢少佐がまたなにやら書類をばたばたとテーブルに準備をした。
「園田さん。僕の小笠原で最後の広報記事のお手伝いをして欲しいんですよ」
「え、わたしがですか?」
企画書を差し出され、心優はそのタイトルにギョッとする。
【 女性隊員、戦闘機に乗る! 】
「あの、これ。本気ですか?」
「うん。女性が戦闘機に乗る体験を記事にしたいんだよね。かといって、誰でも良いというわけではなくて、園田さんなら身体能力的にも機内同乗クリア出来ると思うんだよね」
一瞬、迷った。戦闘機に乗る!? エースの鈴木少佐だって、ベテランの橘大佐だって、上空ではあんなに苦しそうな呼吸になるのに?
その反面、また心優に熱い気持ちが滾り始める。『それって、臣さんの最高の場所だった世界を体験できるってことだよね?』と。
「軽く飛ぶ程度よ。パイロットは英太にお願いしてあるから上手に飛んでくれるわよ。あ、もっと落ち着いたパイロットの方がいいかしら」
心優は即座に首を振っていた。
「いいえ。スワローだったパイロットでお願いします」
と言いきっていて、心優はハッとする。隣にいる准将と、目の前の駒沢少佐が揃ってニヤニヤしながら心優を見ている。『スワローだった大佐殿と同じような空を体験したい』という本心がばれてしまった。
「じゃあ、決まりだね。園田さん、よろしく」
心優は頬を染めながら、こっくり頷くしかできなくなってしまった。
「それなら駒沢君。こちらで心優がコックピットに同乗できる準備をしていいかしら」
「助かります。そこはパイロットだった准将にお願いしたいです」
鈴木少佐の後ろに乗るには、まずは多少の訓練が必要ということらしい。
気圧の変化に対する訓練や体験など。たとえ民間のマスコミが撮影でコックピットに乗ることになっても、同じ訓練を受けていないと乗せてくれないとのことだった。
心優はこれから暫く、その訓練をすることになった。
―◆・◆・◆・◆・◆―
広報撮影のため、戦闘機のコックピットに乗って、その実況中継をするという企画になっていた。
雅臣と連絡が取りづらく、なおかつ、そばにいない寂しい日々を過ごしている心優には張り合いになっていた。
低酸素症に対応するための航空生理訓練から。減圧された室内で、999から1ずつの引き算を紙に書いていく。低酸素症になると意識が朦朧としてきて、自分は正常に計算しているつもりでも、文字を書いているつもりでも、正解を書けず文字も書けなくなる。
心優はそれをこなしつづけ、さらに、雷神のパイロット達自らの訓練で三半規管を鍛える体操をしたり、鈴木少佐が操縦する『チェンジ』のシミュレーションに同乗するなどを繰り返していた。
ある日、駒沢少佐がまた准将室に来ていた。
「お疲れ様、園田さん。狙い通りコックピットに搭乗できるよう訓練をクリアできたんだってね」
でも、そこで駒沢少佐がちらっとデスクに座っている御園准将を見た。なにか彼も言いたげで、でも躊躇っていた。
しかもミセス准将が心優を見て、また不敵な微笑みを浮かべている。
彼女が手元にあるなにかの報告書を閉じると、心優にそれを差し出した。
「貴女に戦闘機に搭乗するために必要な最低限の訓練を受けてもらったけれど、あら、もしかして……と思って、『正式な訓練』をしてもらっていたのね」
「なんのことですか?」
駒沢少佐が自分がいいたそうにうずうずしている。でもやっぱり准将に遠慮して黙っている。
「雷神のパイロットに『心優を指導して』とお願いしていた訓練、実は本当に戦闘機に乗れる能力があるかどうかの訓練校並の訓練だったってこと。そうしたらね、面白い結果がでたのよ」
すると、ミセス准将がうずうずしている駒沢少佐に振ってしまう。貴方が言っていいわよ――と。その途端、駒沢少佐が心優の両肩をがっしりと握って迫ってきた。
「園田さん! 君、パイロットになれるよ!」
はあ? 心優は面食らってぽかんと呆けた。なにを言い出すかと思えば、そんなあり得ない話!
「見て、これ。園田さん、訓練校でパイロットに選出される身体能力を全てクリアしているんだ。つまり! いますぐにでもパイロットになれるってことなんだ。すごい!!」
また駒沢少佐が興奮している。そしてミセス准将も楽しそうだった。
「まあ、当然よね。元々それだけの身体能力を秘めているんですもの」
「ま、待ってください! わたしはパイロットなんてなるつもりはありませんから!」
「それはそうよ。貴女がパイロットを目指したら、私が困るわよ。空手家の護衛官であってほしいわね。でも、貴女が雅臣のようなパイロットを目指すなら、それも有りよ。どう?」
心優はぶるぶると頭を振った。あんな過酷な空の世界、そこでまた精神的に追いつめられる世界なんて到底無理! どうせ追いつめられるなら、やっぱり武道でそうありたい。
「うわ、もったいないなあ。パイロットになりたくてもなれなくてエルミネートになって泣く男がどれだけいることか。ミセス准将のように女性ながらも、その身体能力を秘めていることは素晴らしいことだよ」
と、駒沢少佐が本気で嘆いているので、心優は即座に否定する。
「困ります。今回は広報で戦闘機には乗ってみますけれど、それっきりです」
すると、ミセス准将がふと呟いた。
「エースだった雅臣と、メダリスト候補だった心優の子供って、どれだけ素晴らしいDNAを引き継ぐことかしらね。末恐ろしいわ」
「ほんとですね! うわあ、エースが誕生するのか、メダリストが誕生するのか。将来が楽しみだな!」
ほんとだ。と心優も思った。雅臣が冗談で言っていたけれど、まさか自分にまでパイロットの能力があるとは思わなかった。
でも。生まれた子が空であの過酷な世界を生きるのかと思うと、まだ生まれてもいないのに心配で気が遠くなりそうだった。
徐々に撮影日が近づいてくる。
官舎で一人の夜。心優はベッドルームにある戦闘機に乗る男の写真を眺め、徐々に気持ちを高めている。
「臣さんがメールもくれない間、わたしもパイロットの世界を知っちゃたものね」
帰ってきたら、雅臣をびっくりさせよう。わたしに、パイロットの能力があったんだよって――。
撮影、当日。心優はあの真っ白な飛行服を着させてもらっていた。
ミセス准将が貸してくれたものだった。
「准将、ありがとうございます。雷神ではないわたしにこの飛行服を着せてくださって」
「雷神のエースが操縦するコックピットに乗るのよ。広報の撮影だもの。広報のために訓練してくれた貴女にも着る資格があるわよ」
さあ、撮影に行きましょう。
これから撮影をする空母へ行くという。
ミセス准将と共に准将室を出た。この時、心優はすこし違和感を持った。
いつも准将のお供についてくるラングラー中佐もハワード大尉も一緒ではなかった。
心なしか、本部室の本部員も白い飛行服を着ている心優を見て、ニヤニヤしているような気がしたし、女性隊員達がどこか嬉しそうな顔で『がんばって』と手を振ってくれている。
夏の白シャツ制服姿の准将と二人だけで歩いているのに、すれ違う隊員の誰もが心優を見て、笑顔で『がんばって』とか『おめでとう』と言ってくれる。
「おめでとう……って、なんかおかしい激励ですよね。広報の撮影で、戦闘機に乗るだけなのに」
変な挨拶と心優は苦笑いを浮かべたが、ミセス准将はふっと静かに微笑むだけで返事をしてくれない。
そんな彼女の後をついていくと。いつも空母へ行くための連絡船が停泊している桟橋とは違う方向へと連れられていく。
おかしいな、なんか、おかしい。
極めつけが、准将が向かっているのが、管制塔だったこと。
「あの、准将。桟橋へは行かないのですか」
「ごめんなさいね、心優。今日、搭乗してもらう機体を変更したの」
「え、変更?」
「艦載機では飛べなくなったの。でもね、その変更した機体でも貴女なら大丈夫だから」
なにかがあって変更になった。それならそれでいいのに。どうして搭乗する本人に直前になって言うのだろう? いつもの准将ではない。やっぱりおかしい!
そんな彼女に不信感を初めて抱いたのだが、御園准将が管制塔一階にある滑走へと出るドアを開こうとしていた。
「今からその機体と、本日操縦してくれるパイロットを紹介するわね」
ドアが開けられる。いつもの海からの潮風がふわっと入ってくる。潮の匂い、小笠原の緑の匂い。そして、目の前には戦闘機とは違う飛行機と……、心優は目を見開く。そこにもうひとり、真っ白な飛行服姿の男がいる。
栗毛の彼女が、いつにない優しい微笑みを浮かべ、その男性へと心優を促す。
「私からの結婚のお祝いよ。ソニックと一緒に飛んできなさい」
そこから心優は動けなくなる。お揃いの飛行服を着て、川崎T-4の前に立っているパイロットは雅臣!
「ど、どういうことですか」
それだけではなかった。
「ミユちゃん、おめでとう!」
橘大佐を先頭に、雅臣が立っているそこまで、ラングラー中佐やハワード大尉やコナー少佐に福留おじさんといった秘書室の先輩に、心優を訓練してくれた雷神のパイロット達、そして鈴木少佐。そして御園大佐、さらに駒沢少佐まで。みんなが花びらを片手に待ちかまえてくれていた。
「広報なんて嘘。駒沢君を引き入れて、それっぽくやっただけ。雅臣の研修というのは、最低限のパイロットの資格を取り戻すための再試験を浜松基地で受けさせていたの。残念ながら、戦闘機パイロットの資格は無理だったけれど、中等練習機やセスナなどの小型機の免許は取得できたの。中等練習機もギリギリで、連絡業務飛行ができる程度の許可しかできないレベル。だから、今回だけの飛行を許可します。彼にとって、これが本当に戦闘機パイロットとして最後のフライト。妻になる貴女に見届けてもらいたいそうよ」
嘘……。心優は顔覆って泣きそうになった。
目の前に、雷神の飛行服を着込んだ大佐殿が、もうコックピットに乗り込む装備をまとってヘルメット片手に滑走路に立っている。
「一ヶ月の研修って……。どこにいるか内緒って……。会いに行っちゃだめって……。その間、必死そうだったのって……」
「そうよ。どうしても、貴女と空を飛びたいからよ。T-4は連絡機だけれど、それでも広報機でアクロバットにも使われた程だから、戦闘機操縦能力も試される。いま、雅臣がチャレンジできるギリギリの機体なの。しかもこれが最後。貴女も、エースだった男の世界を知りたかったのでしょう」
心優は涙を堪えながら、はいと頷く。
「いっていらっしゃい。空で一緒になってきなさい」
栗毛の准将が心優の背を押してくれる。
「園田、城戸君。おめでとう!」
御園大佐が手のひらの花びらをぱあっと空に投げると、それを合図にして、両脇にいる先輩達が『城戸大佐、園田少尉。おめでとう!』と花びらを潮風に乗せた。
心優の足下まで綺麗な花びらがひらひらと舞ってくる。花びらのシャワーの向こうには、雷神の飛行服姿の大佐殿。
川崎T-4の前に立っている彼と目があって、心優は花びらが舞う中そこへ駆けだしていた。
おかえりなさい、大佐殿!
真っ白な飛行服の彼に、真っ白な飛行服を着ている心優はおもいっきり抱きついた。
そして泣きながら、彼の胸を叩いた。
「なによ、なによ。すごく不安で待っていたんだから。なのに、帰ってきたらコックピットに乗れるだなんて……!」
もう、絶対に彼は飛行機を操縦できないと思っていた。
「ただいま、心優」
彼がまず心優を抱きしめてくれる。
「俺もそう思っていた。でも、御園准将がダメモトの方法もあるし、私ならそれを許可できる。だから、最後に挑戦してみないかと言ってくれたんだ。ダメモトだから、もしだめだったらまた心優に心配かけると思って言えなかったし……。准将が成功したあかつきには、心優への結婚祝いにしたいから黙っていてと皆を巻き込んでサプライズにしてくれたんだ。だから、言えなかった」
ごめんなと彼が耳元にただいまのキスをしてくれる。
もう心優も涙を拭いて、雅臣を見上げ微笑む。
「つれていって、臣さん。ソニックの空につれていって」
もうグローブをしている指先で、雅臣が優しく心優の涙を拭ってくれる。
「訓練したんだってな。聞いたよ。パイロットの素質があるだなんて、ほんと、心優はとんでもない最強の奥さんだな」
だったら大丈夫だなと、雅臣も強く頷いてくれる。そして彼がコックピットを見上げた。空母艦でよく見せてくれていたパイロットの顔になっている。
「搭乗します」
雅臣が告げると、准将もアイスドールの顔になって頷く。
それまで二人を取り囲んで和やかだったお祝いムードも消え去って、一瞬にして川崎T-4の周りに整備員達が集結してきた。
指示を出しているのは、元甲板要員だった御園大佐。
雅臣がコックピットへと登る梯子をあがっていく。ついに彼がコックピットのシートに座ってしまった。
「園田。シートのベルトをセットするから上がって」
御園大佐の指示で、心優も後部座席へとかけられている梯子を登る。
雅臣が乗り込んだコックピットへの梯子には、もう機体メンテナンスの整備員がついていて、雅臣の身体へのベルトをセットし、酸素マスクのパイプもセットしている。
心優も同じく。御園大佐がベルトを掛けて締めてくれ、ヘルメットを被せてくれ、酸素マスクもセットしてくれる。
心優の目の前がヘルメットのシールド色になる。太陽の眩しい光線がダイヤモンドの形で連なって飛び込んでくる。
「大丈夫か、園田。チェンジで英太に派手な回転で振り回されてもケロッとしていたらしいけれど、今度は重力が加わるぞ」
「それも、疑似体験しています。本物の上空は初体験ですけれど」
「気絶しそうになったら、城戸君にきちんと言うこと。管制塔に控えている葉月に申告することいいな。結婚前の大事な身体だって忘れるなよ」
「はい、大佐」
「城戸君と話せるようになっている。管制塔との会話は城戸君のみ。知らせたいことは城戸君経由で管制塔の指令室に伝えるように」
「了解です、大佐」
御園大佐がそこで少しだけ心配そうに、シールド越しに心優の目を見つめ、そしてグッジョブサインを見せて微笑んでくれる。
「グッドラックではなくて、ボンボヤージュ」
いい旅を! 御園大佐らしい見送りに、心優は笑顔になる。そして大佐はコックピットで準備を済ませた雅臣の肩を激励で叩いて梯子を下りていく。
ついに梯子が外される。
『キャノピー締めます』
ヘルメットから雅臣の声が聞こえた。飛行機の天蓋、キャノピーが降りてきて密閉ロックがかかる。
T-4の下に整備員が群がる。
『エンジン、オン』
T-4の甲高いエンジン音が心優をとりまく。キーンと高まっていくエンジン音。バタバタとフラップを動かす翼。空へと飛ぶ準備を雅臣がひとつひとつこなしていく。
今日こそ、彼は本物のパイロット。そして心優も彼と一緒に空へ行く!
滑走路誘導員マーシャラーの手振りで、ついに機体が動き出す。少しだけエンジン音を落としたT-4が、滑走路の端で止まった。
基地の棟では、窓辺に沢山の隊員が並んでこちらを見ているのも気がついてしまう。窓を開けて手を振っている隊員もいる。心優を『おめでとう』と見送ってくれたのは、基地の隊員達も滑走路に雅臣が復帰している姿を知って言ってくれていたのだと気がついた。
上空障害物なし、飛行許可OK。管制塔と雅臣との確認が繰り返される。
「行ってまいります、キャプテン」
聞き慣れた呼び方、滑走路を見るともう御園准将の姿がない。管制塔の指揮カウンターにいるのだと心優は管制塔の窓を見上げる。
「行くぞ、心優」
だがそこで心優は『待って』と言ってしまう。
前座席にいる雅臣が酸素マスクをしたヘルメット姿で少しだけ振り返った。
「臣さん。研修の訓練でアクロバットもしたの?」
彼が黙った。心優は確信する。彼はそれをしたのだと。答えてくれないのは、上手くいかなかったから?
「どうしてそんなことを聞くんだ、心優」
「それは、出来たの。出来ないの? 教えて」
また雅臣が困ったように黙っている。彼はもう心優のことを良くわかっている。妻になる女が言いそうなことだと、だから答を躊躇っていると心優は確信した。
「出来たんだね。ローアングルキューバン」
また彼が黙っている。それが出来たといえば、心優がなんというかわかっているからなのだろう。だから、心優は言う。
「やって、ローアングルキューバンテイクオフ。お願い」
「ひさしぶりにやった俺でも、めっちゃきつかったんだぞ。初めての心優は気絶する」
「それでもいい。気絶するぐらいで死にはしないでしょう。知りたいの。あの世界を。あなたがどんなことを体験したか知りたいの」
そして心優はさらに言う。
「お父さんがどんなパイロットだったか、いつか子供に教えたいの」
雅臣がそこで溜め息をついて俯いてしまう。
「それを体験した母親も相当なもんだけれどな。おまえ達のお母ちゃんは肝っ玉だって教えてしまう」
「いいよ、肝っ玉でも、ボサ子でも」
ボサ子でもって。雅臣が笑ってしまった。
「あーあ、今の会話。管制塔でキャプテンが聞いていたよ。たった一度だけ許可するってさ。気絶しても吐きまくっても、トラウマにならないようにと彼女が言っている」
准将から許可が出た。でもたった一度きり。そしてそれは壮絶な体験になると釘を刺されている。でも心優は空を見据える。
「大丈夫。それでも絶対に後悔しない。それならそれで、とてもすごいことをお父さんがやりのけていたってことだもの」
ついに雅臣が強く頷いてくれた。
「わかった。パイロットの素質がある女だと知らなかったら絶対にお断りだったが、俺の女房になる女は最強だもんな」
――行くぞ、心優。
――ラジャー、ソニック。
二人揃ってコックピットの向こうに伸びる滑走路を見つめる。
コックピットで高まるエンジン音、発進前のカウントダウン発信音。
「GO!」
雅臣の一声で、T-4が滑走路を走り出す。本当ならある程度滑走したところで機首を上げて上昇するのだが、ローアングルキューバンテイクオフは、滑走路に沿ってひたすら低空飛行で飛んでいく。
このアクロバットはいきなり始まる。いままで滑走路と平行の低空飛行だったのに、いきなり機首を上げて急角度の上昇に入る。『GO、NOW』。心優には聞こえないが、雅臣の耳には御園准将からの合図があったはず。心優にはそのタイミングが何故かわかってしまう。
「……っぅぐうっ」
急角度の急上昇、目の前が滑走路だったのにそれが消えてぎゅっと空だけの景色に囲まれるコックピット。そして心優を押しつける重圧。
胸がつぶれそう! 確かに吐きそう! でも心優は堪える。一生懸命に目を見開く。
コックピットは上昇速度の間隔を伝える発信音がピピピピピと繰り返している。やがてその音がピッピッピとゆっくりになったと思ったら、心優の目の前は逆さま、上が海で下が空になっている。しかもその瞬間、コックピットがとても静かになっている。
あの綺麗なループの頂点にいる、コックピットが半回転したところ。キャノピーの上へと見上げているのに、上は空ではなく珊瑚礁の海と白い渚という不思議な世界。
「心優、気絶した?」
「……してない……」
していない。ぼんやりだけれど、気分が悪いけれど、でも見えている。雅臣と同じものをいま、わたしは見ている。
珊瑚礁の海、白い砂浜。緑に囲まれた基地。そして空と雲。逆さま!
わたしも、いま、パイロット!
恍惚として、いつまでも心優の目の前にその景色がある。
いつか教えてくれたよね。
藍の天蓋が見えるんだって。
宇宙を目の前にした藍が目に焼き付いているって。
そして珊瑚礁の天蓋。地球の様々な『青』が俺のまわりにあって包まれる。
あれをもう一度、見たくて飛んでいたのかもしれない。って。
これのことだよね? 綺麗、本当に綺麗……。
いつまでもその青に包まれて、吸い込まれそうな……。
だが、ふと我に返った心優の目の前にあるのは、海原。
あれ、いつの間に海上に??
「気がついたか、心優」
ハッとした。あのループ頂点を最後に、やっぱり気絶してしまったらしい。
「えー、嘘! あそこから下まで降りるところも見たかった!」
もう一度やってと心優はつい叫んでしまった。
「無理、俺はもう無理。足が痛いんだって」
「そ、そうなの」
「しかも心優が気絶したから、キャプテンからすぐに中止命令がでてローアングルキューバンは頂点到達時点で中止。降下時の横回転せずに降りてきたところだよ」
「えー、そんな……」
「それでも、パイロットでもないのに、あのループの頂点で気を失っていないのはたいしたもんだよ」
「とっても綺麗だった。コックピットが宇宙みたいだった」
雅臣が優しく笑う声がヘルメットに聞こえてくる。
「同じものを見たんだな。俺と心優。俺が大好きなあの世界を、まさか、一緒に見てくれる女がいたなんて。こんな最高なことが他にあるか」
彼が囁いた。
愛している、心優。最高の空をありがとうな。
心優も微笑む。
わたしの大佐殿。
空を飛ぶお猿さん。
そんなあなたを、傷つけたことがあったけれど。
お許しください、大佐殿。
やっぱりあなたしか、愛せなかった。
傷つけても愛したかったの。
だから、どうしても知りたかった。あなたが手放せないほどに愛した空を。
いまは、あなたと一緒に空の上。
あなた達が見た藍の天蓋も、珊瑚礁の天蓋も。
わたしはもう知っているよ。あなたの空を!
■ お許しください、大佐殿 完 ■
約一年の連載になりましたが、長期連載に渡るお付き合い、そして長い作品をお読みくださって有り難うございました。
しかも、毎回長文構成の更新連載についてきてくださって本当に心からの感謝を!
あとがきは、ブログにて綴ろうと思います。
また他の作品でお会いできたら嬉しいです! *茉莉恵*
Update/2015.10.7