◇・◇ お許しください、大佐殿 ◇・◇

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 1. うちの妻に、甘いのいらない

 

 結婚すると環境が変わるというけれど――。

「心優さ〜ん、俺、俺、気絶してもいいですかあー」
 久しぶりに御園准将が空母艦で雷神の訓練を見たいと言い出し、秋晴れの珊瑚礁の海を連絡船で渡って、甲板に着いたところだった。
 甲板には、今から演習訓練を始める白い飛行服の雷神パイロット達が並んでいた。
 初めて空母艦に付き添ってきた後輩の吉岡光太が、心優の後ろでずっと興奮しっぱなし。
「ソニックの隣のいるのが、もしかして、もしかして、マリンスワロー飛行部隊のアクロバットを指揮していたエンブレム、橘大佐?」
「そ、そうだね」
「雷神の、右から七番目! 黒髪の日本人男性。あの人が、もしかして、もしかして、もしかして……、雷神エースの、バレット。鈴木少佐?」
「そう。彼の右隣にいる六番目の栗毛の男性が、バレットと僚機の、」
「スプリンターっすか!」
 うわー、うわー、俺、雷神のDVDいっぱい持っている! あの映像のあの人、あのアクロバットをしていたあの人、あの人はタッククロスが綺麗で……。と、心優の後ろでずうっとずうっとマニアックな呟きをしている。
 そのささやきに、心優の前にいたミセス准将が振り返る。
「コータ、興奮しすぎ」
 アイスドールの冷ややかな眼差し。頬に赤みもない感情も宿していないその顔は、まだ慣れていない光太にはゾッとしたようで、一瞬にして押し黙った。
 心優の後ろでシャキンと姿勢を正すと彼も真顔に。なのに、そこでミセス准将がふっと母親のような柔らかい微笑みを見せた。
「まったく、駒沢君みたいね」
 あ、そういえば似ているかも。心優もそう思えた。夏に栄転で小笠原から司令部広報室へと異動してしまった駒沢少佐も、海軍、戦闘機、パイロット、空母、大好きな飛行マニアで、その熱い航空愛で広報を盛り上げていた男性。その少佐に負けぬ航空愛を、新人護衛官、吉岡光太は発揮している。
 くすっと僅かに微笑んだミセス准将だったが、すぐに視線は雷神のパイロット達へ。
「いまの、俺、まずかったですか……」
 心優の隣で、光太がこそっと呟く。
「ううん。むしろ、和んだんじゃないかな。でも謹んでってことだよ」
「う、和んでいたんすか? わ、わかりにくいっす。噂には聞いていたけれど――」
 まったく読めない無感情ミセス――というのが、まだ慣れていない吉岡光太のミセス准将への感想。
「大丈夫だって、でも、いまからコンバットだからどんなにスゲエと思っても心のなかで、だよ」
「了解です。でも、すげえ、雷神のコンバット!」
 だめだ、顔に出ているよ――と心優も苦笑い。またミセス准将がほんの少し微笑んで振り返ったのを、光太は気がついていない。
「航海までに演習に集中するように。行け」
 雷神の指揮隊長である橘大佐の険しい声で、パイロット達がカタパルト装着前の戦闘機へと散らばっていく。
「では、准将。ブリッジへ行きましょうか」
 橘大佐も今日は笑っていない。彼も今回は任務に着任はしなかったものの、部下のパイロット達を航海に出すまでは、彼等が還ってこられるようにみっちりとしごく覚悟のようだった。
「雅臣、今日はどうする。バレットとスプリンターの指揮につくか、敵機になる八機につくか」
「今日のところは二機の動きを見定めたいので、バレットとスプリンターの指揮でお願いします」
「じゃ、俺は他の八機につく……が、」
 そこで橘大佐がブリッジの入口に向かいながら、潮風に栗毛をそよがせ甲板要員の動きを見つめたままの御園准将に向かった。
「葉月ちゃん、そろそろケジメつけてほしいんだよな」
 ケジメ? なんのことだろう。心優はすぐになんのことかわからず、首を傾げるけれど。
「わかっています。今日、そうします」
 准将にはひとことで通じている。
「それから。雷神に対応してくれてるフライトチームを手配してくれよ。雷神の十機だけで演習は、今回は無理だ。バレットとスプリンターの敵機をこなす前に、八機の雷神は、このエレメントの援護という役割を今回は磨き上げていかなくてはならない。そのための、雷神ではないチームを手配してくれ」
「わかりました。ご希望は――」
「小笠原ならベテランチームのダッシュパンサーか、コリンズ大佐が監督をするビーストーム、あるいは、岩国の空海だ。できれば、空海。すでに奴等を見ているからな」
「そうね、そういたします」
 橘大佐が描く指揮に、御園准将は「わかった」と頷くだけで、口を挟むことはない。
 以前なら、彼女の方が先手を打ってどんどん提案していたと思う。こういう姿を見ると、本当に彼等に譲って自分は手を引こうとしているんだなと心優はかんじてしまう。
 橘大佐もブリッジの階段を上がり始めると、溜め息をついた。
「そうだな。こんな時、専門にやってくれるアグレッサーが必要だと俺も思うわ。マジで作るなら早く実現して欲しい」
 橘大佐にもその旨はもう伝えられているようで、今回の大陸国の攻撃に遭い、切実に感じているようだった。
 御園准将はそこでは、橘大佐と暫くは見つめ合っていたが、なにも言わない。この人達も、もう目で会話ができちゃうんだなと心優も思っている。そのパートナーとしての仕事も、そろそろ解消かという空気も感じていた。
 だからなのか、二人の間に静かな寂しさを漂わす波もある。でも、まだそこに本人達も周囲の人間も触れない。
 それぞれの行く道を決めている覚悟もありそうだった。
 ブリッジの管制室へと入り、コンバット訓練の準備をする。
 ブリッジのカウンターに雅臣がヘッドセットをして立つ。
 橘大佐もすぐ隣のカウンターに、そして御園准将は、最前線へ出すと決めた二機の様子を見たいのか雅臣の横に立った。
「あなた達も見ておきなさい」
 付き添い護衛でついてきた心優と光太にもヘッドセットが渡される。ただしマイクは使うなと頭の上に上げた。
「うう、なんかすげえ緊張してきました」
 管制室の緊迫感、そして雅臣と橘大佐の気迫を見せる横顔。そして目の前の、アイスドールの冷たい眼差しをしたまま淡々としているミセス准将。これだけの指揮官が放つキリキリとした空気を感じないわけがない。それが光太にもわかるようだった。
「雅臣、全機、キャプティブ弾を搭載済みだ。容赦しねえからな」
 キャプティブ弾は、模擬弾のこと。発射はできないが、センサーのみつけられており、航空機が放出する熱源にむかって感知しトリガーを引いた時点で、ロックオンしたかどうかを判定する機能がついている。
「機関砲については、機関砲の照準に重なった時点でキルコールする」
「はい、徹底的にお願いします。できれば、英太を怒らせるぐらいで」
「簡単じゃねえか」
 橘大佐がニヤッと不敵な笑みを見せた。
 ――雷神、行きます。
 管制クルーの報告。1号機のスコーピオンから順に、カタパルト発進をし上空へと散らばっていく。
 もうそれだけで、心優の横でぶるぶるとした興奮を必死に抑えている光太の姿。心優もちょっとだけ和んでしまいそうだった。
 それでも光太は初めての空母艦を目の前に、きちんと大人しく控えてくれていた。
 にしても……。心優は滅多にない切迫した指揮官達の鬼気迫る横顔に、また不安を覚える。
 でも、臣さん。官舎ではいつだって、心優には優しくて楽しくて、頼もしいお猿さんでいてくれる。
 今日、ここで彼のそんな大佐殿の険しい顔を知らないままになりそうだったと、思い改めさせられた気持ちになる。
 自宅では、少しでも心優と楽しく過ごしたいという彼の気持ちも忘れたくない。妻としてなにを肝に銘じるべきか。心優はまだ自分はとっても未熟だと痛感してしまう。

 

 ―◆・◆・◆・◆・◆―

 

 ひさしぶりの訓練を監督した御園准将だったが、昼前に陸へ帰る連絡船では無言。青い珊瑚礁のキラキラした水面を見つめながらも、その眼差しは遠い。
 こんな時、心優も静かに黙っているが、心優の隣に控えている光太はなんだか居心地は悪そう。まだ慣れていない証拠だった。

 御園准将のランチに、心優と光太も毎日付き添う。
 いまカフェテリアに行くと、光太が注目の的。心優が浜松で鍛えていた後輩、護衛官として引き抜かれたと知れ渡り、ミセス准将のそばに若い青年が付き添うことになってまた皆がざわついていた。
 それでも、光太のことについて話しかけられると、ミセス准将もお母さんのような優しい顔で皆に返答する。
「ええ。あと数年もすると、長男が彼のようになるのかと思うと、もう母親の気持ちです」
 と、話しかけてくる幹部男性達にそう微笑む。ミセスが優しく微笑むので、これまた話題になっていた。
 そんな彼女の優しい紹介が重なると、光太もちょっと緊張が取れるよう。
 この二人の距離と、光太の固さを取り去るのも心優の今の使命だと思っている。
 難しい。男性よりも女性の護衛官が必要なのだと言われ彼女についたけれど、今度はその女性護衛官として、異性の隊員、または若い隊員との架け橋になれという課題だった。
「光太もいっぱい食べるわね。私も遠慮なくいっぱい食べられるわね」
「恐れ入ります。でも、自分、少食だったんです。園田先輩に指導してもらうようになってから、食べられるようになりました。食べ方もいろいろ教わったんです」
「食べ方?」
 光太の返答に、珍しく御園准将が首を傾げた。
「はい。ご実家のお母様が栄養士をされているとかで、そのお母様に教わったバランスの良い食べ方です」
「へえ、それ。私も知りたい。いままでそんな話になったことなかったわね」
 准将と青年の会話が弾んで心優にまで振られてきた。
「母ほどではありませんが、母が言っていたこと、守りなさいと言っていた豆知識を教えただけですよ」
「でも。身体を動かす、造らなくてはならない軍人やアスリートにとっては大事なことよね。うちは隼人さんがそういうこと気遣ってくれてきたから……。でも私もこれから一人になった時の食事は考えなくちゃいけないな、なんて思っていたところ」
 一人になる。近頃、御園准将がぽつぽつと言うようになった言葉だった。本人は気がついているのか、わかっていて言っているのか心優にはわからない。
 夫が自分と離れた生活をする、息子が独り立ちして家を出て行く、いつか。彼女はもうそこが見えてきているようだった。
「今度、母にも聞いてみますね」
「豆知識でも知りたいわ」
「俺も知りたいです!」
 ミセス准将との他愛もない会話が成立。なんだこうして話していける。これを積み重ねていけば、きっと光太も大丈夫。と心優も少し安心する。
「それにしても、光太。今日、すごく我慢していたわね。おかしかったわよ。すっごい嬉しそうなのに我慢しているの」
 最後に准将があの切羽詰まったブリッジ管制室の空気の中、大好きな海軍パイロット達の本物のコンバットを目の当たりにして興奮を抑えている光太のことを思い出して、やっとクスクスと笑い出す。
「ええっ、笑いそうなお顔ではなかったですよ、准将!」
 お、吉岡君らしいツッコミができていると心優はいい感じと目を瞠る。
「だって。あそこで笑ったら、橘さんに叱られるのは私だもの。あの人と喧嘩すると大変なんだから」
 あのミセス准将が、あの人怖いとふて腐れたので、今度は光太が目を瞠っている。この人ってこんな人? ミセス准将のアイスドールのイメージもこうして崩れていくことだろうと、心優も懐かしくなってくる。自分もそうだったなあ……と。
「橘大佐と喧嘩……するんですか……」
「すっごい剣幕で怒るわよ、ねえ、心優」
「ですよねえ、少し前に、横須賀に帰るかと准将がひと言言っただけで、もの凄くお怒りになって、説明も聞かないで飛び出していきましたもんね」
「まあ、あれだけ熱い人だから、マリンスワローの悪ガキ達を束ねてこられたんでしょうけれどね。……実際に、パイロットとして空母で一緒だった若い時の、あの人の破天荒さは記憶に残るほどよ」
 あの橘大佐が若さで破天荒だった時なんて、想像するだけで怖い。じゃじゃ馬お嬢様だった彼女にここまで破天荒と言わしめる男ということ。
「でも、でも、かっこよかったです! うー、仕事でなければ握手してほしかったし、エンブレムのサインも欲しかったです!」
 くー、あの指揮をする大人の男、かっこいい! ソニックもすげえ飛行を指示していて、しびれた! ついに光太が本性を露わにする。
 だが、彼がはっと我に返る。
「し、失礼いたしました!」
 素が出てしまって、はしゃいでしまってごめんなさいとばかりに、光太がミセスに頭を下げる。
「嬉しいわね。光太のようなファンが、また防衛に勤しむ、技術を磨く男達の励みにもなっているのよ。橘さんにも伝えましょうね」
 やっぱり。母子のような微笑ましさだった。これはこれで、光太はまたミセス准将にいい影響を与える気がする。心優もそう思えてきたし、光太もちょっと固さが取れたよう。
 そうだよ。いまのところは、かわいい男の子でいればいいんじゃないかな。……心優が言われたマスコットと暫くは言われそうだけれど、光太もそう見せかけて、そうじゃないという護衛官にも育てなくては。心優はまた教育について肝に銘じる。

 

 ―◆・◆・◆・◆・◆―

 

 午後の業務が始まって暫く、御園准将が愛用しているパイロット腕時計で時間を確かめる。
 光太のデスクは心優と並べられ、いまは空母研修時間以外は、秘書室の簡単な事務作業を教えている。そこにいる心優へと准将が告げる。
「雷神室の雅臣を呼んで」
「かしこまりました」
 なんだろう。心優は雅臣がわざわざ単身で准将室へ呼ばれるのはどのような意図があってなのか、そう思いながら内線受話器を手に取る。
 雷神室へ連絡すると、事務官の松田さんがでてくれた。
『いま在席中ですから、すぐに伝えます』
 城戸大佐に伝言し、すぐにそちらに向かいますとの返答。
 心優はドキドキして、夫になった大佐殿を待った。
 その間、御園准将は皮椅子に座ったまま、柔らかな秋風に珊瑚礁の海が見える窓を遠い目で眺めている。その目が最近とっても気になる。
「なんか寂しそうに見えますね……」
 光太も気になったのか、心優にだけ聞こえるようにこっそりと呟いた。
 やがて、雅臣がやってきてドアがノックされる。いつもどおりに心優がドアを開け迎え入れる。
「お呼びですか、御園准将」
 凛々しいネクタイの制服姿の雅臣が、准将デスクの前に立つと敬礼の挨拶。
 ゆっくりと御園准将が席を立ち、デスクを挟んで雅臣と向きあう。
「ケジメを付けておこうと思ってね、呼んだの」
「ケジメ……ですか」
 今日、空母艦で橘大佐が言っていた『そろそろつけてほしい』と言っていたもの。そのケジメがなんなのか、いまからそれを彼女が告げる。
 そのケジメがなにか雅臣に伝えられた。雅臣はそれを聞いても驚かなかった。だが、心優とまだ新人の光太は一緒に驚いた。
 驚いたままでいると、御園准将が心優に言う。
「英太を呼んで」
「はい」
 またデスクの内線電話を手に取り、心優は鈴木少佐がいる第一中隊所属の第一飛行部隊雷神班室へと連絡をする。
 そこで班室をサポートしている事務官が出てくれ、大隊長の准将が直々にお呼びと告げると、すぐに伝えます――と応えてくれる。
「すぐにいらっしゃるとのことです」
 准将に報告した心優はそこから、ミセス准将と雅臣が向きあっているデスクから離れるようにして、距離を取り控えた。上官同士の遣り取り、その空気感を邪魔しないための秘書官の配慮。それがまだ光太にはすぐには思いつかないようだったので、彼に目線で訴える。でもすぐに通じた。
 心優が立ったその位置、その隣に光太もじっと起立して控えてくれる。
 その間も、ミセス准将と雅臣は黙ったまま。間をつなげる会話など一切しない。それだけ、これから二人がしようとしていることは、真剣なことだからだった。
 おちゃらけた世間話もいらない。いまミセスと大佐殿はそこ一点に気持ちを研ぎ澄ませている。ただただその時を待つだけ。
『雷神の鈴木です』
 鈴木少佐が来た。
 彼もどうして呼ばれたのか怪訝そうな顔で、まず御園准将の顔色を窺っている。
「お疲れ様、英太」
「お疲れさまっす……」
 彼女が家族のように『英太』と呼べば、彼も遠慮なく弟の心構えに崩れる。どんな時もそれが許されるのが、彼が御園家と家族になった特権でもあった。
「雅臣、こちらに」
 デスクの皮椅子から立ち上がった御園准将が、自分の隣へと雅臣を呼んだ。
 鈴木少佐の目の前に、デスクを挟んで、御園准将と城戸大佐が目の前に並んだ。
 心優は息を呑む。新人の光太でさえ。
「あの、お二人揃って、どうされましたか」
 准将のデスク、そこに二人の上官が並んでいる光景に、鈴木少佐もただならぬものを感じ取っているのが心優にもわかる。
 ついに。御園准将が、それを告げる。
「鈴木少佐、バレット。貴方に選んでもらいたい」
 鈴木少佐が眉をひそめる。嫌な予感がするといった顔。
「次回の航海にて、どちらの指揮で飛びたいか。選んでもらいたい」
 それだけで、鈴木少佐の目が静かに見開いた……。
「選ぶとは、御園准将の指示で飛ぶか、城戸大佐の指示で飛びたいか、そういうことですか」
「そう」
 途端に、鈴木少佐の顔が歪んだ。『なんでそんなこと、俺に選ばせるんだよ』と言わんばかりの、チッと舌打ちも聞こえたような気がしてしまうほどに。
「次回は大陸国とは接戦になる。指揮をする軸を決めておきたい。いざその時、英太、貴方は私と雅臣、どちらの指揮でのドッグファイトを望むのか」
 雅臣も表情を一切変えず、徹した真顔のまま。しかも鈴木少佐とは目を合わせない。自分はただそこに置かれているだけ。選択をしてもらうために、こちらもミセス准将に負けない無感情さを漂わせている。足を肩幅に開いて、手を後ろで組んで、きりっと立っている軍人らしい姿の大佐殿。
 その二人を目の前に、鈴木少佐が躊躇っている。
 次回任務で、いざドッグファイトになったら、どちらの指揮を望むのか。
 マリンスワローから放り出され問題児として持てあまされていた彼を見出し、雷神というトップフライトにスカウト、問題児に徹底的な躾をしてエースという称号を得るまでにリードとしてくれた、バレットの絶対的女王『ミセス准将』。
 片や、マリンスワローで一緒だった時から尊敬するエースパイロットで先輩、小笠原で雷神の指揮官になった途端、今まで以上の能力を引き出そうとしてくれるエースの能力を持つ男、『エース、ソニック』。
 いままで慣れてきた女王様か、女王様にはない領域へ引き出そうとしてくれるパイロットのヒーロー、エース殿か。
 どちらの指揮官にもそれだけエースで問題児だった男をリードしてきたプライドがあると思う。
 だから、心優も光太もドキドキしている。女王様を選ばない男がいるのか、バレットの絶対的女王様だった彼女を見切るようなことなど、そんな選択があるのか。
 鈴木少佐も、ミセス准将の目をじっと見つめている。やっぱり……。そうなるよね。いざという時の判断力は、やっぱりミセス准将。雅臣ではまだ指揮官として日が浅い……から……
 
「城戸大佐で、お願いいたします」
 
 心優は一瞬、耳を疑った。
 うそ。あの鈴木少佐が、姉貴として慕い、心に女王様として置いてきただろう彼女を見切った?
 まだ転属してきたばかりの光太も息引く驚きを密かに見せている。ミセス准将を選ばないということなんてあるのかという驚愕だった。
 だけれど、ミセス准将と大佐殿はどちらも表情を変えず、淡々としている。
「わかりました。接戦となるとき、城戸大佐に貴方の指揮をしてもらいます。最終的な責任は私が持ちます」
「かしこまりました」
「答えてくれてありがとう。もう帰ってもよろしいわよ」
「失礼いたします」
 弟分の英太ではなく、『鈴木少佐』という一人のパイロットとして大人の顔で彼が去っていく。
 去っていく鈴木少佐の背に迷いはない。姉貴を、女王様を、切ったその決断に心苦しさはあるのだろうが、決めた以上振り返りもしない。
 そこに心優は、ひとつの変化を見届けた気がした。どうしてか、心優の胸に押し寄せてくる『寂しさ』と『希望』という極端な感情が入り交じる複雑なもの。
 鈴木少佐が退室し、やっと雅臣が葉月さんの隣で、ひと息ついて姿勢を崩した。
「ケジメになりましたね」
 雅臣のひと言に、心優もやっとケジメがなんであったのか理解する。
「そうね。あの子が自分で選べたことに喜ぶべきというか……」
 彼女の琥珀の瞳が、光っているように心優には見えてしまう。涙ぐんでいる目尻。
 それに気がついたのは、心優だけではなかった。雅臣も光太も。雅臣が青いメンズハンカチをさしだす。
「どうぞ。見なかったことにしましょう、艦を降りて頂くまで、貴女にはアイスドールであってほしいです」
 でも、ミセス准将はそれを手で制して遠慮し、自分のエレガントなハンカチを取りだし、目尻を押さえた。
 感情が高まっているいま、言葉を発したら余計に涙が溢れてしまうのか、御園准将は目元をハンカチで押さえそのままなにも言わない。
「あいつ、大人になりましたね。葉月さんが育てたと俺は思っていますよ」
 雅臣の穏やかな声かけ、それだけでまた御園准将が口元を歪め、ついに背を向けてしまう。
「ありがとう……、雅臣……、貴方が来てくれたおかげよ。バレットをお願い」
「もちろんです。お任せください」
「雅臣、私を甲板から追い出す……、そう決してくれて感謝するわ」
「貴女に安心して頂くためでしたが、生意気をいたしました。その分、きちんと引き継がせて頂きます」
 雅臣の確固たる決意は、あの時から始まっていた。『コードミセスに勝つ』。そして心優もお願いした。『城戸大佐。お願いします。御園准将が安心して去れるように、気持ちよく追い出してあげてください』と。夫の城戸大佐は、心優のその願いをほんの数ヶ月で達成させた気がする。
 もう葉月さんに弱い雅臣君ではない。ミセス准将の歴とした後継者になる大佐殿。彼は彼の力でそこへ行く。
 その責務がどれだけ重いか。ミセス准将のそばに常にいる心優にはどのようなものかわかっているからこそ、彼女の責務を城戸大佐が引き継げば、いままで心優がミセス准将の苦労を案じてきたものは、そのまま夫を案ずるものへと変わっていくのだろう。
 それもまた、近頃、胸を痛める原因となっている。だがこれこそ『大佐夫人』の覚悟であると思うこの頃。
 海軍夫妻の新婚は甘いばかりではない。進めば進むほど、覚悟がいる。
「雅臣。貴方にも、海東司令の意向を伝えておくわ」
「わかりました。自分も、准将にこれからの訓練について相談したいです」
 ゆったりとした応接ソファーへと、御園准将が雅臣を促す。
 ミセスが単体のソファーに座ると、すぐ角合わせで傍になる長椅子の端に雅臣が座る。まさに額を付き合わせて話し合える位置取りだった。
 二人の手元に、白い用紙が置かれ、二人の手にはボールペン。それぞれの手元には手帳。二人だけのミーティングが始まる。心優と光太は、用紙を準備したりタブレットを運んできたりのアシストに徹する。
「海東司令が『優先』するべき指針を置いていってくれたの」
「優先、ですか」
「そう。まず、望む優先順序は、」

 

1. 警告のみで大陸国飛行隊が撤退し、通常の侵犯措置で完了すること。
 
2. 警告に従わず、接戦を仕掛けられる場合。接戦に応じるとしても、あちらが侵犯してからとする。接戦中も、あちらが侵犯をした接戦を試みても、こちらからは絶対に侵犯をしてはならない。
 
3. 已むを得ず接戦に巻き込まれ、危機に陥った場合。安全に回避するための判断として、こちらからの侵犯も厭わず。ただし、この場合も、大陸国が先に侵犯してからとする。

 

 海東司令が先日置いていった『次回任務での、侵犯措置及び接触に対する指針』が御園准将から伝えられる。
「つまり、こちらからは絶対に侵犯しない。したとしても最悪の手段であって、あちらから侵犯をしてきたから応じたに過ぎないというスタンスで行くと言うことですね」
「そのとおりよ。まず今回『1』で解決するのは難しいと見て、かといって『3』は最悪の事態。できれば『2』で対応したいということよ」
 雅臣も目の前の用紙にペンを走らせる。用紙の中心に黒い一本線を引いた。
「同じ事を訓練で考えております。これは、領空線です。訓練でこのラインを設定し、バレットとスプリンターはこちら側には入れない。でも、敵機を担当する戦闘機のパイロットには、このボーダーラインの左右どちらも行き来できる訓練を実施したいと思います。まずはバレットとスプリンターにチェンジの演習で感覚を掴んでもらう所存です」
 用紙に引かれたライン、バレットとスプリンターを模した戦闘機の印は、片側のエリアのみの飛行を許され、ラインから向こうへは行くことは許されない。だが、他の戦闘機の印はラインなど関係なく自由に行き来ができるという線を雅臣がペンで走らせた。つまり、侵犯し放題、バレットとスプリンターにはライン越えは許されないという訓練だった。
「いいわ、やってみて。それと、コンバットの敵機の動きなんだけれど、こうしてくれるかしら」
 さらに御園准将が用紙に敵機の印を書き入れ、空戦の配置を示す。
「そうですね、その形態も考えられますね」
「こうなると、二機がわざと向こう側相手国の空域に引き込まれ、連れて行かれ、意図せずとも侵犯したと誘導される可能性も」
「以前、ミラー大佐が最北大国のミグ数機に一機だけ囲われ脱出できずにそのまま連れて行かれ侵犯を誘われそうになった危機、あの時のように、ですか」
「そうよ。きっと、大陸国も私達側からは絶対に侵犯すまいというスタンスをわかっていると思う。対等にするためか、自分たちから侵犯したとしても、おまえ達もしただろうという抗議の理由付けによ」
「では、この形態で、いかがでしょう」
 パイロット同士の話し合いが白熱する。准将と大佐殿の手元にある用紙が、徐々にボールペンのラインで黒くなっていく。
 その話し合いを秘書官は控えて黙って聞いているものだったが、光太は興味津々のようで、すっかり見入っていた。
「心優、お茶をお願い」
「はい」
 白熱する会話で喉が渇いたのか、准将からのご所望。心優もすぐに動き出す。
「准将はアイスティーですか、ミルクティーですか」
「アイスティーよ」
「城戸大佐はアイスコーヒーでしょうか」
「うん、よろしく」
 雅臣も用紙に目線を向けたまま、返答するだけ。心優もそこは邪魔をしないよう、余計なことは挟まない。
 でも……。准将と額をくっつけそうなほどに、今後のことを話し合う大佐殿の目、シャーマナイトの目がきらっとしているのを心優は見る。
 そして、彼はほんとうに大佐殿。そこがどんなに切迫している話し合いでも、責務の大きさで不安になってしまう妻でも、やっぱりかっこいい、セクシーで素敵だなと見惚れてしまう。
「光太。カフェテリアに行って、ドーナツ買ってきて」
 話し合いながら、准将が当たり前のように真顔で指示したのだが。そこで雅臣がふっと笑って、緊張の糸がそこで切れた。
「ドーナツって……」
「え、なんかおかしいの? 雅臣……」
 当たり前の顔をしているミセス准将を見て、雅臣がさらに『あはは』と笑い出した。
「こんな侵犯だ、連れて行かれる、こんな攻撃をされたらどう体勢を取ると話し合っているのに。ドーナツ挟まれたんですよっ、緊張がとけちゃいますよ」
「そう? だって甘いもの補給しないと頭が回らないでしょう。あるいは、頭を使うと甘いもの欲しくなるでしょう」
「女の子らしいですね、葉月さんも」
 あの雅臣が、いままでどうにも敵わなかったお姉様に、にやっと男らしい笑みを見せた。
 心優はドキッとする。その顔、御園大佐に似てきた? やり手の女性だって易々と手玉にとれちゃう、男の余裕を見せられた気がした。そう言う時の男ってすっごい色っぽいから、余計にドキッとときめいた。
 さすがの葉月さんも、年下ソニック君に『女の子ですね』と言われ、いつになく頬を染めている。
「からかわないでよ。雅臣はいらないの」
「いりますよ。吉岡、ミセスにはチョコレートがけのオールドファッションと、粉砂糖たっぷりかかったシュガードーナツだ。俺は、オールドファッションでいいよ。園田は、ストロベリーチョコのドーナツだ。吉岡も好きなものを選んできな」
 胸ポケットからスマートに指に挟んだ二つ折りのお札を取り出した雅臣が、それを光太に渡した。
「かしこまりました。ご馳走になります。行ってきます」
 光太がお札を握って、准将室を出て行った。
 准将も緊張がとけたのか、ふっと呆れた顔をしてソファーにゆったりと腰をかけた。
「あら、ご馳走様になっちゃったわね」
「たまには、男らしくさせてくださいよ」
 大人の男の余裕をミセスに見せ始めている。
「さすが、元秘書官ね。私の好みを熟知していること。心優のお好みに関しては、夫としてかしらね」
 今度は、ミセス准将がにんまりとした。そこは、さすがに雅臣も、新婚ゆえにお猿の愛嬌でにっこり照れている。
 またそんなかわいいお猿の照れにも、心優は妻としてどっきりしちゃったから、困ったもの。
 やっぱりまだ初々しい新婚さん。ふたり揃って、葉月さんに笑われてしまった。

 

 ―◆・◆・◆・◆・◆―

 

 17時のラッパが響く終業前、工学科の御園大佐から『またデーターが揃ったから取りに来て欲しい』と連絡があり、心優は光太を伴って向かう。
 往く道の途中、心優の横で光太が溜め息をついた。
「どうしたの、吉岡君。疲れた?」
「はあ。浮き沈みが凄いなと思って……」
 浮き沈み? どんなことを感じているの? と問うてみると。
「防衛て大変ですね。俺、いままで広報のかっこいいところしか見ていなかったんだとつくづく思っています。もちろん、防衛を前提にした訓練もすごくかっこいい。でも、そうじゃない。メンタルも体力もめちゃくちゃ極限に置いて、生きているギリギリのところにいるんだって、やっと身近に感じています」
「そうだね。わたしも一年前に来た時はそうだったよ。これから一緒に空母に乗ると余計にかんじるよ。初めて、侵犯措置の本番で、モニターに本物の最北大国のスホーイを見た時は、もう気が遠くなりそうだった。ほんとうに、わたしたちの国の空、ギリギリに攻めてくるんだって」
「俺も目の前にしたらビビると思います。ドキュメンタリーの向こうの映像ですもん、いまはまだ」
 それに――と光太が続ける。
「御園准将の心が、すごく深海みたいで計り知れないです。俺、新人なのに、あの方のおそばに付くのが今の仕事だからと、いろいろと極秘の情報を教えてもらい、目の前にしても……。どうしても近寄りがたいです」
 他愛もないお喋りができていたのに。でも、無理もないかと心優は思う。
「大丈夫だよ。わたしもそうだったから。吉岡君らしく、わたしが知っている吉岡君のままで大丈夫だよ。気負うことがマイナスになって空回りすることもあるから、いまはできることひとつひとつこなしていこう」
「ですよね。今日も……、鈴木少佐を目の前に、どちらを選ぶかなんて。きっと俺、すごいものを目の前にしていたのでしょうね」
 それも確かに。ミセス准将の秘書官だからこその、人知れぬ大事な場面だったと思う。心優ですら、あの鈴木少佐が大人の顔で、女王の貴女じゃないエースの先輩を選ぶという顔を見せた時に、あれだけ荒れていた鈴木少佐も一歩踏み出したんだと、その決別の始まりに泣きそうになったから。
「また今日も、一時間ほど残ってね。わたしとミーティング室で、准将室で必要な情報を伝えるから」
「はい」
 心優がそうして教えてもらってきた『御園秘書室で大事な極秘の情報と、扱い方。護衛官の心得』を、大隊長本部のミーティング室を借りて、一時間ほどそこで、御園准将室にいるために必要な情報を指導している。
 その中には、御園准将が艦を降りる決意をしていること。ご主人の御園大佐はまだそれを知らないこと。降りたその後は、すでに小笠原基地の訓練校校長に就任する人事が決まっていること。これもまだ秘書室から出ていない情報として、口外しないよう念を押していた。
 そろそろ、御園のタブーと御園准将の体質について伝える順序に来ていた。ラングラー中佐からも『これから校長室秘書官として大事なことは、先輩のミユに引き継ぎたいから、いまのうちにミユから伝える練習をしよう』と託されていた。
 そして光太にももうはっきりと伝えている。『貴方は、これから校長に就任する御園准将の、校長秘書室の一員になるために引き抜かれた』のだと。だからそれを見据えて、護衛官としての心構えを整えていくように伝えている。
「今週は、空母に搭乗する護衛官と警備隊のミーティングがあるね。吉岡君も参加だよ」
「はい。空母の警備隊って、特殊部隊並の隊員ばっかりなんですよね。うー、また興奮してきた!」
 いつものかっこいい男達大好きな男の子に戻ったのでほっとした。
 この階段を上がりきり、その角を曲がって少し向こうが工学科科長室。そこまできて、心優は光太と共に階段を上がってそこを曲がろうとした時。
「城戸大佐! よろしかったら、こちらどうぞ!」
 長い黒髪の女性が、工学科科長室から出てきたばかりの雅臣を追いかけている姿を見る。
 心優は何故か一瞬で、階段をあがった角に隠れてしまう。光太も出て行かないよう腕を引っ張り一緒に隠れるようにした。
「え、心優さん。どうして」
「いいから」
 自分でもどうして隠れちゃったのかなと……。でもなんとなく嫌な予感がしていた。
 長い黒髪の女の子は、九月の新年度に、横須賀から御園大佐のもとで例年通りに教育してくれと選ばれて配属されてきた科長室新人だった。
 そっと身を潜めていると、彼女の澄んだ声が聞こえる。
「これ横須賀で買ってきたんです。いま吉田大尉にもお土産に。よろしかったら、奥様とどうぞ」
 なかなかぬかりない女子力高そうな新人さんだった。でも心優は、ちょっと警戒している。
 そして雅臣も毎日工学科科長室をデーター入力のために訪ねてくるから、彼女にも毎日会う。どう接していることか。
 お願い、臣さん。受け取らないで!
 それが心優の本心。何故なら、心優より少し若いだけの彼女に『ボサ子さんと結婚すると聞いてびっくりしました。おめでとうございます』と怪しい笑みで言われたことがあり、女として妙なものを感じていたからだった。
 でも。男にはわからないだろうな、あの女子力を駆使した細やかな気遣いの最終目的がなんのためなのか。それが読めずに受け取っちゃうんだろうな……。受け取ったら、心優から彼女にお礼を言わなくちゃいけない。その時、どんな顔をされなにを言われるのか。心優は密かにしゅんとする。
「ありがとう。気持ちだけいただいておくよ」
 ハッと顔を上げる。雅臣が断った声に。
「そうですか……。女性はみなさん、このお菓子、好きだと思うんです」
「申し訳ない。妻は体調管理に気遣うアスリートなので、気持ちだけいただいておくよ。妻にも伝えておく」
「奥様に喜んで頂こうと思って特別に買ってきたんです。……これ、どうしましょう」
 彼女の困り顔に、それをどうすればいいか答えて欲しそうな上目遣い。もう心優ははらはら。
「それは御園科長に渡したらどうだろう。奥様の御園准将が甘いものが大好きなので喜ぶよ」
「え、科長に、ですか」
「御園准将からお礼があるかもしれないよ。おなじ奥様なら、うちの妻より、そちらの奥様の方が喜ぶし、科長も喜ぶと思うから」
 あのお猿さんが。綺麗な女の子に流されないできっぱり断ってくれた姿。でも心優はふっと覗いた瞬間に見た、雅臣の笑顔になにかを見てしまう。
 にっこりとしたあの笑みは、愛嬌の微笑みではなくて、お腹に黒いものを秘めた時の室長時代の、いや大佐殿の笑みだった。
 そして彼女は『御園准将からお礼がある』の言葉に、何故か青ざめているほど。
 あれ、臣さん。もしかして、あの彼女のなにかを感じ取っている?
「残念です……。いつのまにか城戸大佐が結婚されていて。私、ソニックのファンだったのに。こうしてお近づきになれて嬉しいんです」
 彼女が泣きそうな顔で静かに呟いたその言葉にも、雅臣はただにっこり。
「でももうコックピットは降りたからソニックでもなくパイロットでもないから、ご期待には添えないことになるかな。科長室での業務、早く慣れるといいね」
 にっこりしながらも、やんわりと『あなたが興味ある男ではない。応えられない』と否定してくれて心優は泣きそうになる。臣さん、ありがとう……と。
「うわー、露骨だな。新婚さんだってわかっているだろうに、ひでえ」
 光太は心優の中にある嫌な気持ちを汲み取ってくれたようだった。
 御園大佐の工学科科長室に新たに来た綺麗な女の子。その子の言動と行為にも心優は警戒中。
 大佐殿の妻だからとて、油断はできない! も、肝に銘じているところ。

 

 

 

 

Update/2016.11.27
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