◇・◇ お許しください、大佐殿 ◇・◇

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 3. シルバースターの理由(わけ)

 

「ムッカつく!」
 工学科の帰り、光太はずっと怒っている。
 先ほどの、春日部嬢の態度に怒り心頭だった。
「あの御園大佐に、父ちゃんの上官にいいつけてやるなんて言ったんですよ!」
「いいつけるだなんて言っていないよ。お父さんの上にいるのは司令総監だと言っただけだよ」
「同じじゃないっすか! 御園大佐が怯むことなく『言えばいい中佐如きのおまえの父親の言うことなど聞くもんか、俺のところまで司令総監の言葉が直々に届くようにしろ』と言ってくれてスカッとしましたよ。恐れることない男の信念、かっこよかったっす」
 やはりミセス准将の旦那様と、光太も鼻息が荒い。
 それもあるけれど。でも、ちょっと違うなと御園家を一年以上見てきた心優は思う。
「御園大佐が司令総監を盾にされても、堂々とできるのは他にも理由があるよ」
「え、そうなんですか」
 男の信念かっこいいに水を差すようだけれど、心優は光太にも知って欲しいと教える。
「元々、御園大佐が婿入りした御園家のご当主は、葉月さんのお父様。フロリダ本部で、陸部司令総監をされていた中将だよ。退官されたとはいえ、お父様の配下にいた高官もまだまだいっぱいいてその威光も消えていない。しかもいまだって、フロリダ本部の大将になられたロイ=フランク大将が葉月さんとご兄妹同然の仲であって後ろ盾、こういっては失礼だけれど横須賀の司令総監なんて『御園の後ろ盾』を出されたらひとたまりもないもの。春日部中佐やお嬢様の言葉ひとつでどうにかなるような立場じゃないのが御園大佐の強み。とりたててリスクもないから思い切って言い返しているんだと思う。預けるのにいい場所だったんだろうね。それに、御園には御園の『力』があるからね」
「御園の力、ですか……。ですよね、ミセス准将は軍人一家の三世でお嬢様ですもんね」
「わたしも横須賀で長沼准将に言われたんだ。敵が百万円というコストで御園にしかけても、御園はその百万円というコストで五百万円ぐらいの成果でやり返せる力を持っているって」
「うへえ、なんっすかそれ。怖いなあ」
 怖いな――が最近の光太の口癖のようで心優はまた苦笑いをするのだが、『そのうちにミスターエドに会うだろうし、黒猫のこともいいタイミングで伝えられたらいいな』と思い描く。まだまだ教えたいことがいっぱいで、でもすぐには教えられなくてもどかしい。
 こうして振り返ると、心優自身もだいぶ御園家に染まっているなと実感した。
「そうか。だから御園大佐の下では、いままでの『パパに言いつける』という彼女の切り札が通用しないわけか」
「いままでの所属部署の上官さんも、きっと最初は聞く耳もなたかったんでしょうけれど、中佐のお父様が動かずとも、春日部さんがあのように押して押して、だんだんと怖くなるようにしちゃったのかもね」
「それで居場所をなくしたんですよね。自業自得じゃないっすか」
「でも、春日部中佐自身が細川連隊長にお願いしたということだから、お父様もここで成長して欲しいと思っていることでしょうね。彼女がどう騒いでも、お父様ももう聞くつもりはないという意志を小笠原に示してくださっているから大丈夫よ」
 だから、もう彼女のいうことで恐れる必要はないと、心優は光太に聞かせた。光太もそれなら気にしないと、いつものおおらかな笑みになる。
 そこで心優は『あれ』と思った。
「あと二ヶ月ほどで出航だけれど、御園大佐も工学科科長室を留守にして搭乗するんだよね。春日部さんどうするんだろう」
「そういえばそうですね。あの彼女は、御園大佐ではないとコントロールできそうにないし。吉田大尉なら任せられそうですけれど、負担ですよね」
 まさか。留守の間、それより上の者がいる場所はどこかと心優が考えた時、正義さんがいる連隊長室か海野副連隊長室しか考えられなかった。
 どちらにしても、もう彼女は逆らえないところに配置されそう。それでも彼女の切り札だった春日部中佐が聞く耳もたないことだけわかって安心した。
 あとはあの嫌味に耐えればいい……と。それに自分たちももうすぐしたら艦に乗っちゃうしね。少しの辛抱と心優は思うことにしている。

 お遣いが終わって准将室に戻る。
「ただいま戻りました」
 光太と一緒に入室すると、またデスクにミセス准将がいない。またもや応接ソファーにお客様と向きあっていた。
 ちょうど、福留少佐ご自慢のコーヒーがお客様の目の前に置かれたところ。
 でも心優は身構える。ボスと向きあっているのは父だったから。
「お帰りなさい。お父様がご挨拶にきてくださったのよ」
 准将は心優ににっこりと微笑みかけてくれたが、心優と父は警備隊ミーティングのキルコールがあったばかりなので気まずいだけ。
 ここでは『お父様』ではないし、父も『娘』とは思っていないはず。
「いらっしゃいませ。園田少佐」
 心優が楚々と冷めた顔つきで挨拶をしたので、光太も続けて同じように『いらっしゃいませ』とお辞儀をした。そしてミセス准将は困惑している。
「娘がいろいろとお世話になっているため、ご挨拶に来ただけだ。新居のための土地購入についても随分と世話になったようだしな」
 そうなんだ……。だよね、娘のボスを避けて居られるはずもないよね。ましてやミセス准将だもん。この基地のナンバー3と言ってもいい将軍様だから。
「お帰りになるまでに、お父様も一度新居の土地を見ていってくださいませ。私の自宅の近くですの」
「さようでございますか。そうですね。いまの訓練指導が完了しましたら、帰りにでも娘と雅臣君に案内してもらいます」
 そこで父は『では、これにて失礼いたします』と、福留少佐のコーヒーを一口だけ含んで席を立ってしまう。娘が居て居心地が悪いようだった。
「もう少しゆっくりしていってくださいませ。まだ積もるお話しが……」
「いえ、それはまた帰る頃にさせてください。寄宿舎の手配、有り難うございました。小笠原のメシも楽しんでいきたいと思います」
 最低限の挨拶のみで、娘との関係がなるべく希薄に『あくまで少佐』として去ろうとする父を見て、御園准将が溜め息をつく。
「私の父もそうでしたわね。プライベートではお茶目なパパなのですけれど、軍服を着ている父は娘だからこそ容赦なかったものです」
 御園准将が立ち上がった父を引き留めるように哀しい眼差しを見せる。その目が心優にも向けられた。
「あの顔を見た時、お父様に徹底的にやられたと聞いて……。そんなことを思い出しました。この地位に就くまでいろいろありましたけれど、父が父を捨てたからこそ、私はいまこの部屋にいるのだと思い出しました。御園中将という男が御園葉月は『娘』という情を残していたのでは、私はここにいなかったことでしょう」
 娘の顔にある殴られた痣は痛々しいが、それも『娘が決めた道』だからこそ、立場と将来を護るための父親故の厳しさ。御園大佐が『愛』だと察してくれたように、ミセス准将も切ない想いがあるようだけれど、その痣は父娘だからこそと言ってくれている。
 ――『失礼いたします! 雷神室の城戸です!!』
 ノックと共にそんな慌てる声が聞こえたから、心優はびっくりしてドアに振り返った。
 そのままドアを開けてみると、息を切らして慌ててきた様子の雅臣が立っていた。
 心優の顔を見るなり『うわ、嘘だろ、ほんとだ!』と驚いている。
「み、心優!」
 職場なのに、雅臣の大きな手がすぐに心優の頬をつつんでくれる。
「あ、あの城戸大佐……ここでは……」
 でも雅臣は構わずに心優に焦るように詰め寄ってくる。
「俺に挨拶をする隊員がみんな、奥さんの顔が腫れて口元に痣ができていたと教えてくれて。それに、雷神室に帰ったら、園田のお父さんが来ているって松野達が教えてくれて!」
「はい、いま、御園准将とお話しされていますけれど……」
 ここにいるだって!? さらに驚いた雅臣がそのまま准将室に踏む込んだ。
「お、お父さん! いつ来られたんですか!」
 応接ソファーで御園准将と向きあっている父を見て、雅臣が混乱状態。知らせもなく、知った時には『奥さんが顔に負傷』、『お父さんの園田教官が来たとか……』、『お父さんが甘いと、警備隊員を目の前にやりこめたらしい』と大魔神のキルコールを聞きつけて、もうびっくりしてすっ飛んできたのだろう。
「あ、えっと、うん。……すまない、雅臣君」
 本来は父より上官の『大佐殿』だけれど、雅臣から『お父さん!』と叫んだためか、父が気後れしたように頬を赤くしてうつむいてしまう。
「びっくりしたではないですか。来てくださるならそう言ってくだされば、俺もいろいろお迎えの準備をしましたのに――!」
 心優はふとつい最近の自分と重ねてしまった。ゴリ母さんが突如来ることになって、準備もしていないのにどうお迎えすればいいのかと。今度は雅臣が婿殿として慌てている。
「ちょっと、雅臣……、城戸大佐。落ち着きなさい」
「いえ、その……。本当にびっくりして、しかも……心優、じゃない、妻の顔のことを何人もの隊員が教えてくれて」
「園田教官のキルコールを聞いたの?」
「はい……、戦闘機でいうならキルコールと娘は殉職したとたとえる模擬戦で、娘に圧勝したと」
「その通りよ。お父様がそれだけの気迫と覚悟で来られたということよ。お舅さんではなくて、園田少佐としてお仕事のつもりで来られたの。お婿さんと娘さんのところで世話になるつもりはないから寄宿舎を手配して欲しい、そして、娘の心優には知らせないようにとのご希望だったのよ」
 いつの間にと雅臣も戸惑っている。
 御園准将が今日までのいきさつを彼に説明する。
「金原隊長にとって、不審者と艦長の私が同室で遭遇してしまったのは警護隊長としてのプライドが傷ついた出来事でもあったのよ。どうしたらいいかと悩まれた結果、園田少佐に格闘指導をお願いしたいとの申し出があったから説得の許可をしていたの。金原隊長は心優の護衛部の訓練もよく見学していたようだったし、金原隊長の右腕でもある諸星少佐も、不審者侵入の際に現場にいて、心優の戦闘と格闘を目の当たりにしていて女ひとりでの制圧に衝撃を受けていたみたいで、頼むなら心優の父親で師でもある園田教官にしたいとの強い希望だったのよ。でも、お父様はお父様で娘がいる場での短期間での統率は難しいと懸念されてずっと断っていた。金原さんの粘り強い説得でやっとよ、その説得の決め手が『初日の一発目に娘から徹底的に指導する』ということだったみたい……」
 妻の顔が負傷しているいきさつを知って、雅臣もなんとか落ち着いたようだった。
「雅臣君、また帰る時に話をしよう。それまでは、舅と婿ではなく、軍隊の規律通りに、大佐殿と少佐でお願いしたい。心優の父親という気遣いは皆無だ。警備隊の指導を徹底したいために頼む」
 立ったままの父が頭を下げた。雅臣も義父にそこまでされたら、なにも言えないよう。
「わかりました、お父さん」
「これも、雅臣君が副艦長となる空母の警備を強化するため」
「お父さん、有り難うございます。……だからですね。娘と俺を送り出す前のサポートをかってでてくれたんですね。お願いいたします」
 やっと雅臣が、凛々しい大佐殿に、また婿殿として礼を返している。
「えっと、それから……。先に謝っておこう。あとで心優に聞いてくれ。雅臣君、大事にしているものを私が壊してしまった。申し訳ない」
 さらに父が頭を下げたが、雅臣はまだなんのことかわからないからきょとんとしている。そして心優を確かめた。仕事場だからプライベートの話はなるべく避けたいようだったので、心優も父が伝えたいことはすぐに伝えられなかった。

 

 ―◆・◆・◆・◆・◆―

 

 その夜。心優はベッドルームで雅臣とくつろぐ。心優はベッドに腰をかけ、雅臣は窓際にあるパソコンデスクで戦闘機の絵図をノートに書いて明日の訓練に備えイメージトレーニングをしている。
 それでも片手間に心優にいろいろと話しかけてくれるので、今日もあんなことがあったこんなこともとお互いにお喋りをするのも日課。
 そこで初めて、心優は雅臣に今日のことを話した。
 父が心優を名指しにして、シルバースター叙勲に値しない、前回の戦闘は未熟なばかりで殉職に等しい、運が良かっただけと評し、警備隊員の目の前で投げ飛ばされ張り倒され、ドッグタグまで奪われ捨てられた――と。
 雅臣は愕然としていた。父のその本気と気迫がいかなるものだったのか、やっと痛感しているようだった。
「それでね……。お父さん、ドッグタグをわたしの首から引きちぎる時に、これも一緒に引っ張っちゃったの」
 手のひらに、ブラックオパールと切れた金の鎖を見せた。
「うわ、一緒に引きちぎっちゃったのか。ていうか、お父さん……本気だな」
 パソコンデスクから、ベッドまで雅臣も来てくれる。心優の隣に雅臣も腰をかけると、ちぎれた金の鎖をつまんで、自分の手のひらに乗せて眺める。
「でも。お父さんが言っていること合っている。プロの格闘家から見たら、本当に運が良かったんだよ。制圧した傭兵を一時でも放ってしまったのもわたしのミスだった」
「無茶だろ……。心優は新人だったし、初めてプロの傭兵と対峙したんだ。そんななかでも良くやったんだよ」
「ううん! わたしが制圧を解いてしまったから、ハワード少佐が撃たれてしまったということ、忘れていた!」
「いや、心優……」
 雅臣がなにかを言って慰めようとしてくれたようだったが、プロの格闘家の娘である妻になにをいっても慰めにならないとわかったようでなにも言わなくなった。
「心優……」
 雅臣が抱きしめてくれる。
「心優、それでもあれは心優のおかげで皆が助かったんだ。一緒にいた俺もだよ」
 長い腕の囲い、おっきな胸、いまもパイロット達と一緒にトレーニングをしているしっかりした筋肉の、その頼もしい雅臣の胸に抱きしめてくれる。
「臣さん……」
「お父さんだってわかっているよ。お父さんがいちばん胸を痛めていると思う。こうして『仕方がないんだ。ごめんな』と抱きしめたいのはお父さんの方だと思う」
「わ、わかってるよ。お父さんの真剣さも言いたいことも、今回の方がよく伝わったよ」
「それをお父さんが横須賀に帰る頃に、伝えてあげたらいい。こんな時は、これからは、俺がお父さんの分まで抱きしめてやるからさ」
 そういって、雅臣はさらに心優をぎゅっと抱きしめてくれる。黒髪の頭も大きな手で、いつものように優しく撫でてくれる。
 今になって……。心優は娘として泣きたかった涙が溢れてきた。
「な、泣くつもりなかったのに……。もう、子供じゃないよ」
「お父さんからみたらまだ子供だよ。ぶっ飛ばしたのも、次回もなにがあるかわからないから気を引き締めろという気持ちだって俺も解るよ」
 今日のお猿さんは、優しいお兄さんお猿。こんな時、心優は女の子にもなれるし、ずっと年上の大人のお兄さんに甘えられる気持ちにもなれる。
「心優のお父さんも、アグレッサーだな」
 戦闘要員の仮想敵をする男。格闘家のアグレッサー。そうたとえられると、確かに。と心優も思った。
「きっと、前回、空母に潜入してきた不審者の情報も収集して、なにがどうなっているのか調べ終えていると思う。心優の親父さんは恐らく、いままで特殊部隊が接触してきた国外兵士との戦闘事項はすべて把握しているんだと思う。その上で演習を組んで、格闘を教える。そういう部署にいるんだよ」
「知らなかった……。ずっと、ただの武道教官だと……」
「特殊部隊員との演習となると、家族にも言えないし、シドがそうであるように表向きは『それなりの職務と役職』で動いていて、極秘の職務をしている者も多いから、お父さんもそうなんだよ」
 そして雅臣が心優を抱きしめながら、大佐殿の眼差しで見つめてくる。
「だからこそ、この前の戦闘が如何に娘にとって危険なものだったのか、改めて知ることができて身につまされたんじゃないかな。お父さんの危機感の表れだったんだよ」
 そう真剣に語りながら、雅臣は心優の口元についた痣を指先で撫でる。労るようにそっと……。
「新婚なのに、こんな顔なんて……、ごめんね」
 なのに、雅臣が笑う。
「どうして、なんともないよ。いつものかわいい心優だよ」
「そんなわけないじゃん。頬が腫れて、口に痣があるんだよ」
「妻は護衛官。俺の自慢だよ。覚えているか。俺と初めて会った時、面接の時」
 うん――と心優も頷く。
「あの時から『かわいいな』と思っていたよ。だからホルモン焼きを食べに行った帰り、我慢できなくて強引にキスしたし……」
「まえもそう聞いたけれど、なんか信じられないよ。だってボサ子だったんだよ」
「見た目そうだったかもしれないけれど、俺はほんとに一度も思ったことないって。なにも知らなさそうな無垢な女の子が来たと思ったし、面接で心優が鮮やかに塚田をダウンさせたその動きも美しいものだった。魅せられていたよ、俺は。俺の妻はそういう妻、俺はあの時から気に入ってるんだ」
「臣さん……!」
 嬉しくて、心優からもぎゅっと逞しい旦那さんの胸に抱きついてしまう。また泣いちゃいそう。そう、女子力なくても、わたしらしいままでいいんだと思わせてくれる旦那さんの愛が嬉しい。
「さ、もう寝るか。な、ゆっくり休もう」
「でも、臣さん。まだイメトレしているんだよね」
「いいんだよ。俺もこんなことばかりしていると、息が詰まるんだ。心優と一緒に休むことの方がリフレッシュになるんだよ」
 雅臣からデスクのスタンドライトもルームライトも消してしまい、ベッドサイドのほのかな灯りだけに。
 一緒にベッドに入って、肌を寄せ合う。今日のお猿さんはいつものように心優の肌を欲しがらない。
「ネックレスの鎖、また俺が探すから」
「うん、ありがとう。それまで、お母さんのシャーマナイトの石と一緒に袋に入れて持っているね」
 おやすみのキスは今日は優しく……。心優の口元が切れているから、今日は柔らかなキスをしてくれ、そのままただただ抱き合って眠りについた。
 ほんとうに……。わたしも、臣さんとゆっくり一緒にいること。それが一日のなにもかもをリセットしてくれるよ。
 もう蛙の声は聞こえない。裏の雑木林からは、秋の虫の声――。

 

 ―◆・◆・◆・◆・◆―

 

 軍隊は上下関係が絶対、特に階級に従っての規律は絶対。
 しかし、それもままならないこともある。

 午後遅い中休みの時間帯、基地の隊員のほとんどがブレイクタイムを楽しむ頃。
「心優、私のピアノの調律を頼んでいる調律師の方がお土産を持ってきてくれたの。正義兄様にもお裾分けで届けてくれるかしら」
「はい。かしこまりました」
 自宅のピアノにヴァイオリン。元音楽家志望だった御園准将は定期的に本島から楽器の調律依頼をして、業者を呼んでいる。その調律師さんがいつも准将が気に入りそうなお菓子を手土産にくるのもいつものこと。
 今日は、米粉シフォンケーキだった。透明フィルムで包まれ、店名が記されているかわいいリボンが結ばれている。アールグレーにキャロットにパンプキン、プレーンにショコラに抹茶。小分けに包まれているもの全種類、それをいつものエレガントなペーパーナプキンを敷いたトレイに乗せて、連隊長室へ。
 御園大佐との空母艦研修を終えて帰ってきた光太も一緒に連れていく。
「お洒落っすね。浜松基地ではこんなかんじ見たことないですよ」
「石黒准将も言っていたかな。こういうお洒落な小物使いをするのは、ミセス准将だからだって」
「軍基地にこんなものいらないとかあの細川連隊長はいいそうですけれど、なにもいわないんですか」
「言うけど……。なんだかんだ言って、こういう女性らしい空気に触れるのも嫌いじゃないみたいだよ」
「しかも、甘党なんっすね」
「そうだね。わたしも意外に思ったよ。でも嬉しそうなお顔をしてくれるんだよ」
 おいしいスイーツを手に入れたら、御園准将はまず『兄様にお裾分け』という。そして、心優が届けに行くのも恒例で『お、うまそうだな』と一瞬だけ目元を緩める連隊長を見ることができるのも、心優の楽しみになってしまった。
 大隊本部の大きな事務室を通り過ぎ、四階にある連隊長室に行くため、エレベーターの前へ。階下から人が来るようだったので待っていると、三階で止まり扉が開いた。
 ばったりと出くわし、降りてきた女性を見て、心優と光太は一気に気構えた。
「あ、お疲れ様です。園田さん」
「お疲れ様です、春日部さん」
 後ろで光太が『中尉と言え』と声を噛み殺していたが、心優は肩越しに相手にするなと目配せをしてしまう。
「こちらにご用事ですか」
「ミラー大佐のデーター室に、御園大佐から頼まれたデーターを届けにきまし……、あ! そのケーキ! 鎌倉で二時間待ちの行列ができるショップのじゃない!!」
 目ざといし、女子力満点の彼女らしく、そういう情報はよく知っているようだった。
「どうしたの、それ! もうこれだけしかないの!!」
 彼女がトレイに手を伸ばしてきたので、心優はびっくりして半歩下がりそうになった。
 でもトレイに伸びた彼女の手を、がっしりと掴んだ男の手が心優の目の前に。
「謹んでください。こちらはいまから連隊長室にお届けするものです」
 光太が心優の前に半分だけ立ちはだかり、彼女を退けた。後先考えずに手を伸ばした春日部嬢も、我に返って引っ込めた。
「なによ。こっちにきてこんなお菓子と無縁になったからついびっくりしただけ……。仕事でそんなスイーツを持ち歩いているなんて思わなかったんだもの。でも、ずるい。どうして園田さんがそれを持っているの」
「御園准将が鎌倉から来られた方よりいただいたものです。それを連隊長にお裾分けされたいとのことで、お届けするところです」
 彼女のがっかりした顔……。本島で横浜だ鎌倉だ都心だとお買い物を楽しんできた独身女性ならば、離島暮らしとなるとそんな流行のお店とは縁遠くなるのは確かだった。
 島の基地は日常生活には困らないほど物資も豊富だけれど、独身女性がお洒落に暮らしたいとなるとそこは楽しみに乏しいのも事実。
 心優は御園准将のおかげで、普段、女の子達が我慢しているものも安易に手にはいることがある。そう思うと、来たばかりの彼女には酷なことかと、『では、わたしが頂いたものをお裾分けしようか』と思い至ったのだが。
「いいわよね、園田さんは。御園准将のおそばにいるおかげで得していることいっぱいあるんでしょう。空母に一緒に乗って、無事に還ってきただけで『シルバースター』なんでしょ。それだけで讃えられて」
 彼女がいつかそう言いそうだなと心優は予測していたが、光太は呆気にとられていた。
 沼津の母が『付き添って無事帰還しただけでシルバースターなんて、御園って凄いわね』と感じていたように……。春日部嬢も母と同等の部外者みたいなもの。そう思われていて、そう言い出すのも当然かと心優は思っていた。
「春日部さん、失礼ではないですか。園田中尉が叙勲したのには、それだけの功績があったんですよ」
 もう光太も黙っていられないようで、今回はついに春日部嬢に踏み込んだ。
「はあ? 女性護衛官として持ち上げられているだけでしょ。女性採用の広報みたいなもんでしょ。横須賀でもそう言われていたわよ」
 いい気にならないでよ! 真っ正面からそう言われ、さすがの心優も怯んでしまう。だが今回は光太も止まらない。
「春日部さん。勘違いしないでくださいよ。こちらは、中尉だってことを」
「たいして歳も変わらないし、御園の力を借りて、女性護衛官ってだけで昇進した人のこと認めてなんかいないから。城戸大佐だって、御園のそばにいてなにかと有利だから園田さんを選んだんでしょ。でなければ、ねえ……」
「それが上官に対して言うことですか!」
「やめなさい、吉岡海曹!」
 かばってくれて嬉しいけれど、ここで騒ぎを大きくすれば、上官である心優にその甲斐性がないとされてしまう。ここを収めるのも上官で先輩の実力――。
 だがそこで、またエレベーターの扉が開いた。今度は上から誰かが降りてきた。
 また降りてきた男性を見て、心優はハッとする。
「おう。おつかれさん」
 金髪にアクアマリンの目、凛々しい黒ネクタイに白シャツ制服のシドだった。
「おつかれさまです。フランク大尉」
 きらっとした金髪の王子が現れたので、途端に春日部嬢がしおらしくなって黙った。
「なにしてんだよ、こんなところで」
「いまからそちらの連隊長室へお届けものにいくところでした」
 だがシドの手にも、心優と同じように銀のトレイ。
「同じだな。俺もだよ。ボスの奥様が本島にお買い物に行かれたとかで、葉月さんへと紅茶缶をいくつかお土産に持ってこられて、届けに行くところ」
 トレイの上に、海外高級銘柄の紅茶缶が三つ。葉月さんが好きなアールグレイとダージリン、チェリーフレーバーの缶だった。
「そっちはシフォンケーキか。うちのボスが喜びそうだな」
「鎌倉から来られたいつもの調律の業者さんがお土産に持ってこられたそうです」
 だがシドの目線がキッと心優のそばにいる光太へ向いた。
「おい、そいつどうなんだよ」
 最近、シドは光太を見るとこうして睨んでくる。『なんだよ、おまえにひっついているあの男!』と最初は怒っていた。でも雅臣の意向と今後を見据えたためのバディ配属と知ると、なんとかその感情を収めてくれたのだが。
「だいぶ慣れたよね」
「はい。フランク大尉、これからもご指導よろしくお願いします」
 光太も最初は怯えていたが、護衛部の訓練などで顔合わせをするうちに、シドのことすら慣れてきて、逆に光太の方がうまく距離を取ってくれている。
「で、そっちは誰」
 シドが、しとやかにそこにいる春日部嬢を見た。でも心優は訝しむ。シド、知らないの? 連隊長室にいるならどこに誰が来たとか良く知っているはずだけれど……と。
「工学科科長室にこられた春日部さん」
「ああ、隼人さんが毎年受け入れているヤツか」
「初めまして、フランク大尉。いままでのご活躍、よく耳にしております。素晴らしいですね」
 う……、やっぱり王子にはそういう態度なんだと心優は溜め息をつきたくなった。もうさっさとここから離れよう。エレベーターに乗りたい。
「では、わたしは連隊長室へお届けしますので、失礼いたします」
「おう、またな。あ、今度、コータも一緒にダイナーに来い。わかったな」
 シドから誘ったので心優はびっくりしたけれど、光太のことをどこか認めてくれたんだと安心した。もちろん光太も『はい!』と飛び上がるほどに喜んでいる。
「ほら。効率悪い」
 お互いのお遣いに戻ろうとしたのに。シドと心優をそれぞれ指さした春日部嬢がしかめ面になる。
「ここでトレイを交換されて、ケーキをフランク大尉が、紅茶缶を園田さんがそれぞれのボスのところへ持ち帰って届ければいいではないですか。なんでそんな効率の悪いことされるのですか、秘書室の方ならそれくらいおわかりになりますよね」
 そうなんだけれど……と心優もいいたいところだけれど、そういうわけにはいかないのが、このお遣い。
 そんな春日部嬢を既にシドが冷ややかに見下ろしていた。
 すごい目つきをしているのが心優にはわかってヒヤリとする。この男、怒ったら手のつけようがないし、子供っぽいモードにスイッチがはいると大人げない激しさで容赦なくののしられることもあるから。
 なのにシドはふいっと春日部嬢から視線を逸らしてなにもいわない。
「じゃあな、心優。コータもな。またな」
 笑いもしない冷たい顔だったが、いつもの気軽さで、さっさと銀トレイを持ったまま准将室へと歩き去っていく。
「え、え……。どうして」
 効率魔のお嬢さんは、いい提案をしたはずなのにわけがわからないときょとんとしていた。
 でも心優の後ろで光太はニヤッとしていた。『王子、眼中になし。彼女なんて存在していないってこと』。シドに相手にされなかったということだった。
「園田さんもそう思ったでしょ」
「思いません。では、急いでいますので、失礼いたします」
 また彼女がぎょっとしている。このお遣いでボスが望んでいるのは、自分の様子や言葉も届けて欲しいこと。だから頼まれたお遣いは、上司が望んだその方本人のところまで直接届けるまでがお遣い。途中で他の者に託すなどとんでもない。たとえそれが届け先の秘書官だったとしても。もちろん効率を優先する場合は業務上それがベストな時もある。でも、この場合は交換することで効率をはかるお遣いではないから。
 シドもそれはよくわかっているから、自分自身で御園准将まで届け、ボスから預かった言葉を届けに行ったのだ。それが秘書官の務め。
 エレベーターの扉が開いたので、心優はそっと会釈をして乗り込んだ。光太も同じく。
 でも春日部嬢は納得できないと、また頬を真っ赤にして怒っている。
 そんな彼女がエレベーターの扉が閉まる前に叫んだ。
「私も空母に乗るんだから!」
 え? 心優と光太は一緒にぎょっとして、閉まるボタンを押せなくなる。
「私も御園大佐に頼んだの。私も次回の空母航海任務に連れいってください――て。いま吉岡君も初乗りのために勉強しているんでしょう。私も間に合うように勉強したいって」
 ええ!? ふたり揃って目を丸くしていると、彼女はやっと気が済んだようにして空部隊大隊本部へと去っていった。
「は、マジで? いやいや、ないでしょ」
 きっとお得意のわがままでしょと光太は笑い飛ばした。
 心優もそう思う……。けど、これは御園大佐がまた苦労しているだろうなと、珍しくやり手の旦那様のことを案じてしまった。

 

 ―◆・◆・◆・◆・◆―

 

 そんなこと気にすまい。いまはもっともっと考えなくてはならないこと、気を引き締めなくてはいけないことがあるから――。
 だが、今日の春日部嬢との摩擦は思わぬ流れを運んできた。
 夕方になって今日の事務作業もそろそろ仕上げという頃、准将室に訪問者。
「お疲れ様、邪魔するよ」
 御園大佐だった。しかも春日部嬢を伴っての訪問。大佐の後ろで心なしか彼女がしゅんとしているように心優には見えた。
「御園准将、お連れいたしました」
 ミセス准将が呼んでいたと知って、それを知らされていない心優と光太は顔を見合わせる。
「ご苦労様です、澤村大佐」
「こちらこそ、ご迷惑をおかけしました」
 奥様のご機嫌伺いにきたならば、兄貴な旦那様の顔でからかうばかりなのに。今日の御園大佐はとても謙って恐縮している。
 しかも御園大佐の隣にいる春日部嬢も萎縮している。いつものあの自信はどこへ行ったのか。
 だがこのミセス准将を目の前にしたら、そうなるのも無理はないかと心優は思う。
 木彫りがある大きな准将デスク。ゆったりとした皮椅子に座るミセス准将。夫の工学科科長室の雑然とした事務室とは異なり、ここは高官にふさわしい格調ある大隊長室。
 それだけで威圧感があるのに、さらに御園准将が皮椅子から立ち上がる。
 ミセスも心優同様に身長があるため、彼女が立つと小柄な春日部嬢は上から睨まれるようになる。今日の准将はそういう目をしていた。
「春日部さん、どうしてここに連れてこられたかわかっていますね」
「はい……」
 心優はわからない。でも彼女が葉月さんに直々に呼ばれ、なにかを注意されるためにそこにいるのだけがわかる。
「そこにいる園田と吉岡ですが、私と澤村が選びわざわざ引き抜いてきた隊員です。その私の秘書官に対しての非礼はどういうことなのか説明してもらおうかしら」
 心優と光太はまたハッとして視線を合わせた。
「いえ、歳が近いので……」
「歳が近ければ、親しみもあって、なんでも許されるということ? それとも親しくなりたくて馴れ馴れしくしているということ?」
 はっきりしたミセス准将の言葉に、さすがの春日部嬢もうつむいてしまう。
「フランク大尉から聞きました。園田のことを上官として敬う様子もなく、こちら秘書室の業務について勝手な意見を当たり前のように発言したとのことですね。貴女から見れば、園田はもちろん、吉岡も上官ですよ。ましてやフランク大尉はさらなる上官であり連隊長秘書室にいる隊員、その隊員に意見をするとはどういうことですか」
 ますますびっくりして心優は飛び上がりそうになる。シドが! なにも感じない振りして、あそこで春日部嬢が心優に対してだけムキになる非礼を見抜いていたうえに、上官に報告していたと!
「その報告を受けた細川連隊長から、こちらに知らせがありました。見逃せないため、澤村に連絡をして来て頂きました」
 さらに『おまえが指摘しろ』との指示と報告は連隊長直々からと聞いて、『規律に厳しい連隊長』がついに動いたとやっと知る。
「園田を上官として敬わない、その心情を説明しなさい」
 春日部嬢は黙ってうつむいたまま。心優と光太は真っ正面から『認めない!』と言われた理由を知っているけれど、あんなことミセス准将に言えるわけがない。
「つまり、貴女は園田より勝るところがあるため、そこを評価されないから、歳も近く昇進したばかりの園田を相当の地位として認めないというわけなのでしょう」
 やはり、彼女は言わない。
「言えないことならば、貴女が上官を敬わないその理由は、ただの非常識と判断します」
 彼女が顔を上げた。
「横須賀で……、」
 やっと出た言葉だったが、ミセス准将の冷えた琥珀の目に囚われた彼女はそれだけで口をつぐんだ。アイスドールの目がどんなものか初めて知ったかのように。
「横須賀で? なに?」
「横須賀にいるとき……、まわりの隊員達は、園田中尉の叙勲は、女性護衛官を採用し無事に帰還したことで受けられた広報的な昇進だと聞きました」
「それで?」
「それがほんとうに実力と言えますか。園田さんはその恩恵を受けすぎていると思います。ご結婚にしても、城戸大佐が御園のそばにいる女性と一緒になれば有……」
「プライベートなことは、ここでいわなくていい」
 冷たく切ったその声は、いつもの葉月さんではなく、ミセス艦長の時のような重く険しい声だった。
「春日部さん、貴女、その横須賀で聞いた話について、裏付けは取れているわけ?」
「裏付け、ですか?」
 ミセス准将がそこで冷ややかに笑った。心優はゾッとする。葉月さんがその笑みを見せた時の恐ろしさ、秘めたる闘志が芽生えているという合図だから。
「本気で、横須賀の、一般隊員達の『くだらない』、裏付けもない噂を信じて、園田に対抗してるわけ?」
 春日部嬢にもその恐ろしさが伝わったようだった。もう口もきけない状態に陥ったのか、顔色は真っ青。彼女もやっと『裏付けのない噂話で騒いでいた』と気が付けたのか……?
「まあ、よろしいわ。横須賀の一般隊員の裏付けもない噂を真に受けた、だけということね」
 周りの情報を判断処理できない烙印を押されたことになる。さらにミセス准将は追い打ちをかける。
「お父様が泣くわけね……。真実を知らなぬ隊員は多々いれど、想像力を働かせかみ砕ける者もいるというのに、貴女にはそれがない」
 冷ややかなミセス准将の眼差しなど、到底見られる状態ではない春日部嬢はいつもの饒舌さも出てこない。
「光太、テッドを呼んできて。話をしてあるから」
「はい」
 准将室と隣接している秘書室へのドアで、光太がラングラー中佐を呼んだ。
「准将、ご用意できております。こちらでお見せすればよろしいですか」
 ラングラー中佐の手には一台のノートパソコン。それを応接テーブルまで持っていき、そこでなにかとセッティングしている。
「こちらへいらっしゃい」
 テーブルに置かれたノートパソコンの前、そこに春日部嬢は座らされる。
「テッド、説明してあげて」
 御園准将は腰をかけず、腕を組んでまた上から冷たい空気を送り込んでいる。心優と光太は、奥様にすべてお任せしている様子の御園大佐のそばに控える。
 ラングラー中佐が春日部嬢のそばでマウスを動かした。
「司令部にいらっしゃるお父様の許可を得ているものだ。これを閲覧できる者は限られているので、閲覧後は口外しないように」
 そう聞いて、心優は胸騒ぎがしてきた。司令部でわざわざ許可を得なくてはならない程の映像なら、かなり極秘のもの。
 さらに御園准将が付け加える。
「いまラングラー中佐が言った意味も忘れて、べらべら喋ったり『内緒よここだけの話』なんてことを気軽に口外した時点で、連合軍所属する者のコンプライアンス違反として貴女のお父様の首が飛ぶからね。貴女もよ」
 その念押しに、彼女の肩がすこし震えた気がした。
「どうして、そんな大事なものを私に……」
「どうして? 貴女の疑問そのものがわかるものだからよ。うちの澤村が口で伝えても、貴女は実体のない言葉だと信じないでしょう、覆そうとするでしょう。だから一発で理解させたいわけ」
 もの凄いきつい口調のミセス准将に、春日部嬢だけじゃない、心優もドキドキ緊張してきた。
「再生します」
 ラングラー中佐がマウスをクリックする。モニターで動画が再生される。
 心優はハッとする。その映像はそれほど鮮明ではないが、『空母艦内』のもの。そして、自分が男と向きあって三段ロッドを構えている映像だったから!

 

 

 

 

Update/2016.12.6
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