◇・◇ お許しください、大佐殿 ◇・◇

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 4. 菊と雲、空海艦長殿 

 

 その映像は、まさに心優が空母艦で傭兵と戦闘したもの。
 父が訓練指導を引き受ける際に確認したという、あの日あの時のものだった。
「光太も見ておきなさい」
 光太にも数日前に、不審者侵入事件についてあらましを『口頭』で説明したばかり。『心優さん、空母でそんな危険な目に遭ったのですか』と茫然としていた。『空母は安全ではない』、それを心優は教え込んだ。
「あ、あれが……、ほ、ほんとうに、あの時の、ですか?」
 音声はないが、鋼のナイフと金属のロッドがぶつかり合っている映像。
「これは、なんですか。どこかの訓練ですか」
 春日部嬢の質問に、ミセス准将は『なにも言わずにとにかく見ていろ』と氷の眼差しのまま。それに従うように御園大佐もラングラー中佐もなにも答えない。
 だが心優は目を背けたくなる。あの時は必死だったし、功績にはなった。だが改めてみると、ほんとうに動きにアラがある。父が言うとおりだった。
 安全を保証された試合に訓練、そして戦闘員としてではなく護衛に特化した『護衛部』という訓練では、危険はないから思い切って身体を動かし、自分の能力を最大限に使っている。でもこの映像は違う! 身体の動きがまったくなっていない! これを父が見たなら心配するし怒るのも当たり前だと心優も納得する。
 心優が傭兵を制圧し、背中に乗ったところまで再生が進んだ。
 そこでやっと春日部嬢が表情を堅くして呟いた。
「え、この闘っている人、園田さん?」
 しかも傭兵が銃を手にしたところ。雅臣がドアへと走り出し、外にいる警備隊の諸星少佐を呼ぶ姿も映る。
「城戸大佐……も? パイロットの訓練じゃないのに……?」
 ドアが開くと諸星少佐が突入し、すぐさま銃を構える。心優が制圧している傭兵が片手だけで少佐に銃を向けるが、少佐はすぐに床に伏せた。傭兵の狙いがミセス艦長へに移り、銃を発砲したところ。同時に大柄な男ハワード少佐が駆け込み、ミセスを抱きしめ銃撃されるシーン。男の銃から硝煙が立ちこめている。
 春日部嬢の息引く驚きが、静かな准将室の空気に伝わってくる。
「あの、これ、……うそ……、そんな」
 映像は続き、心優が傭兵を解放してしまったところ。傭兵が足を負傷して動けずにいる大陸国の総司令子息『王子』を狙って駆けていく、彼を守ろうと雅臣が王子の盾になって伏せる、それを心優が追いかけてベッドを掴んで……となっている。
「もう、いいわ。テッド」
 そこでミセス准将が再生停止の指示をする。ラングラー中佐がマウスで再生を止めた。
 その後の映像には大陸国のパイロットがはっきりと見えてしまう可能性と、機密に潜入していたシドが顔を隠しているとはいえ突入してくるため、そこは誰と判明せずとも見せない判断をしたのだとわかった。
 ミセス准将がそのままソファーに座っている春日部嬢のそばに跪いた。隣に同じように腰をかけるのではなく、彼女の目線の下にわざと。
 でも、次に彼女が春日部嬢を見上げる眼差しは柔らかかった。
「この後、不審者は拘束。翌日、司令部に引き渡している。園田がいなければ、私を含め、死者負傷者がもっと出ていたわね。私も危なかった」
 春日部嬢の肩が震え始めている。
「わかったかしら? 園田がシルバースターを叙勲した理由」
 意外と素直に、春日部嬢が頷いた。
「ここでは秘書官として淡々と務めている園田だからこんな活躍もわからないでしょうけれど、目に見えないことを想像してほしかったのよ。叙勲したということは、実績が公表されなくても功績があったということなの。それが軍人の評価」
 でも、なんだか悔しそうな顔をしているので、心優はやっぱりまだ飲み込めないのかなと……、そんなに基地にいるわたしは仕事もできない女に見えるのかなとがっかりしてきてしまう。
「貴女、澤村に空母に乗りたいといったそうね」
 もう彼女は自分からなにも言おうとしない。
「この危険に遭遇する覚悟はある?」
 認めたくないのか、春日部嬢は強固に口を結んだまま。
「そういう約束で任務に就くの。いま、あのあたりの国境は混沌としていて気を抜くとあっという間に突破されるし、こちらがしっかりと防衛すれば、向こうもムキになって衝突してくる。だから腕のある護衛官が私のそばには必要なの。それが園田よ。彼女の経歴を知っているでしょう。空母に乗っただけで叙勲するわけないでしょう。広報という目的があったとしても、どんな決定もフロリダ本部から判断されたことなのよ。貴女はそんな本部の意向に抗議をしていることになる」
「そんなつもりはありませんでした。ただ……、簡単に、と思っていただけです」
「簡単ではないでしょう。園田も澤村のスパルタのハードスケジュールをこなして、幹部試験に合格しているのよ。それだけでも努力でしょう」
「そのチャンスも平等であって欲しいです」
 いつもの気強さが垣間見えてきたので、そこでちょっと葉月さんが言葉を止めたほど。でも表情はアイスドールのまま落ち着いて彼女の顔を、母親のように窺っている。
 チャンスは平等。彼女がそう思ったのには条件が揃いすぎたのではと思えてきた。空母に乗ることができれば、自分も心優みたいに認めてもらえると彼女は思っていたのかもしれない。そう思うと、ほんとうに『お手軽に昇進した女』と思われていたのだということになる。それなら私も出来るじゃない。しかもその力がある御園大佐のそばに来た。ちょうど良く空母乗船も目の前で、新人の吉岡光太が初心者の状態でいま空母研修を受けている。私もそこになんとか入れば……と画策してしまうのも、そう思いつくのも仕方がなかったのかもしれない?
「その危険を覚悟できるのならば、吉岡と一緒の研修を受けてもいいわよ。ただし、前回と、先日の岩国の高須賀准将の艦も、攻撃を受けている。次回の任務も厳しいものになるわよ。いいわね」
「父は! そんな危険なものだなんて、言ったことありません!」
 ああ……、またお父様。心優が溜め息をつきたかったのに、目の前にいる御園大佐が額を抱え、大きな溜め息。呆れると言うより、困り果てている。
 心優も思う。彼女の『お父さんが絶対』の呪縛はいつからどう、彼女を締めつけてしまったのか。これを解かないと、彼女は前に進めない気がする。
「きっとお父様も、いままでの危機については決してご家族には話さなかったでしょうね。それは園田も同じよ。こんな危ない目に遭っても、家族には報告できない。城戸大佐もそうよ。ファイターパイロットも空で遭遇した不明機がどこの国だったとか、今日こんなことがあったなんて家族には言わない。園田のお父様は業務上、これを知ることが出来る立場にあるけれど、この映像を見たのはついこの間。園田のお母様はまったく知らない。貴女と同じ、『艦長の護衛を無事に務めて帰還しただけで叙勲なんてすごいわね』と驚かれていたそうよ。つまり……貴女も『なにも知らないところの人間』ということになるの」
「……でも、こんなこと、現実に……」
「いいわよ、目を背けても。でもこれが現実。それをよく考えた上で、どうして自分が軍人であるのか考えなさい。私達はこの連合軍に防衛を託してくれたそれぞれの祖国の国民の血税で働かせてもらっている。だから防衛に身を捧げるのが使命。この軍でその能力に長けていれば長けているほど最前線へ送られる。一般市民の目には見えない『現実の危機』と鉢合わせをするリスクが高まる。それを承知したプライドを持った者が空母に乗船するのよ」
「私だっていままでも、そのつもりでちゃんと働いていました。いつか父のそばに行きたい、父のように上層部をサポートできるようになりたいって」
「だったら。お父様の現実を考えて想像して、受け止めなさい」
 怒るわけではない静かな声だが、そこには葉月さんの『父娘』を思う気持ちが込められているように心優には思えた。そう葉月さんも、お父様が元陸部総監、そして自分は現場のファイターパイロットだったから。知っている知っていないの距離もあったに違いない。
「この時、貴女のお父様も横須賀の司令本部で一睡もせずに、私がいる空母へのサポートの手配に、大陸国との交渉にと駆け回っていたはずよ。防衛は自らがその使命を望んだ者にしかできない。お父様は海には出ないけれど、毎日、私達が乗船している空母を見守って、国家と国家の間にある非常に神経を使う判断をしてくれているの。間違えれば失脚、左遷、懲戒と重い責任を負う。軍人にとって不名誉のリスクと背中合わせ。そこに毎日、毎日いるのよ。貴女も空母に乗るならば、家族にも甘えられない責務を背負うのよ」
 最後、ミセス准将が目も合わせないお嬢さんを見つめて問う。
「それでも空母に乗りたい?」
 さあ、どうする。
「これはたまたま起きたことですよね。何度もそんなに起きませんよね。空母が事故に遭うなんて聞いたことありません。そんなことが起きれば国際的問題になるはずです。小競り合いがあってもそんなことはあり得ません。業務もこことは変わらないはずです。それをすればいいと思っています。そんな脅さないでください」
 え? 事故に遭わない? いまここで司令部極秘のリアルな事件映像をその目で見たでしょう? それともやっぱり自分がそれに遭遇しない限りは、聞いた話だけでは現実味がわかないから認めないってこと? 
 心優はがっくりうなだれた。つまり、空母に乗ってもこの基地のオフィスが海上になっただけで安全だと言い聞かせて、安全な上で乗船したいということだった。そして自分も指令中枢のブリッジクルーの一員として任務を終えてそれを経歴にしたいという願いだけが透けて見えてしまう……。
 だがそこで空気が一変する。
「葉月、もういい」
 ついに穏やかな男が、恐ろしい形相になっていた。ややドスが効いた低い声。婿養子の旦那様が、ゴッドファーザーに変貌する時。
「でも、あなた……」
「うるさい。俺の部下だ。おまえはひっこんでろ」
 初めてではない心優もゾッとしたが、光太はもう顔面蒼白。この基地に来て一番怖いもの見たと言いたそうに、御園大佐から目を逸らす始末。
 あのミセス准将に『おまえ』といい、『ひっこんでいろ』。御園のご当主候補のお婿様が、お嬢様の奥様を軽くいなすその姿。
 そんな眼鏡の大佐の鋭く痛い視線が護衛秘書官の心優と光太に向けられる。
「俺と葉月と彼女だけにしてほしい。少しだけ、外に出ていてくれ」
 その目線はラングラー中佐にも無言で向けられる。中佐も会釈だけして、同じく無言でノートパソコンを回収して秘書室へ下がっていく。
 心優と光太も礼をして、准将室の外へ出た。
 通路向こうはざわめく大隊本部事務室、そして厳重に閉ざされているミラー大佐のデーター室、そして限られた人間しか訪れない静かで厳粛な御園准将大隊長室。そのドアのまえ、通路のガラス窓のところで光太と待機する。
 窓の向こうは、配送課や整備課や運送課など、離島基地での暮らしを支えている労務隊部署が配置されている二階建てまでのビル。その向こうはジャングルのような緑の山。今日も緑が綺麗に映えている。
 
わかったか! 二度と許さないぞ!!
 
 御園大佐の怒声がドアの向こうからでも、険しく聞こえてきたので、心優と光太は飛び上がる。
 ふたり揃って顔を見合わせた。その後、遠い声だけれど御園大佐のマシンガンのような説教が聞こえてきた。空母で事故が起きないのは、それだけの判断を艦長とクルーがしているからだ、その緊張に対するプレッシャーを乗り越えて守られているとわからないのか――! 簡単な業務とたかをくくっているヤツは絶対に搭乗させない、許可しない! いまのおまえは空母に乗せるに値しない!! と聞こえ、さらに……。自分本位で周りに迷惑をかけていること、自分に都合の悪いことは都合のいいことに書き替えてしまうこと、効率が悪いせいにして手間をかけなくてはいけない仕事から逃げていること、父親の名をかざして人を脅すこと、人を見た目で判断してけなすことなどなど……。いや、そこまで言っちゃうの、逆に気の毒なような、立ち直れるのかな彼女……と心配になってしまうほどだった。
 しかし、御園大佐が矢継ぎ早に注意しているその全て、彼女がここにくるまでに迷惑をかけてきたことばかりなのだろう。泣いた人もいたし体調を崩した人もいるというのまで聞こえてきた。しかも、新婚夫妻を別れさせたこともあるとかないとか聞こえてきて、心優はゾッとする。もしかして、雅臣のソニックのファンだった……ではなくて、心優よりも自分の方が女性として優れているという証明をしたいために、心優を敵視していたのかとわかってしまう。
「どうしてかな。春日部中佐は評判のよい秘書官らしいですよ。なのにお嬢さんがあんなだなんて……」
 光太も居たたまれないのか、苦痛の表情を見せている。
「お父さんが好い方でも、お嬢さんには多忙故に手間をかけなかったんすかね。春日部さん入隊時の成績は抜群だったそうですが、学業が優秀でも組織に馴染めない人間もけっこうみますしね……」
 心優はガラス窓に映る自分をみて、まだ痣がうっすら残る唇の端を指で触れる。
 娘なのに、こんなことをする親父。園田教官は『大魔神』、小笠原の隊員にそう名付けられてしまった。でも、心優の父はこうして手間をかけてくれたんだと痛感する。
 准将室のドアが開いて、心優と光太は姿勢を正した。
「悪い、待たせたな」
 まだ眉間に深い皺を刻んだ御園大佐が出てきた。だが心優と光太は硬直する。一緒に出てきた春日部嬢が、もうぐちゃくちゃに涙に濡れて清楚なかわいらしさもどこへやら、とんでもなく無様な泣き顔に崩れていたから。
「春日部、しなくてはならなことあるだろう。なんだった?」
 後ろに控えている眼鏡の男の威圧感。ひくひく泣いているばかりの彼女はもう前後不覚のようでよろめいていた。
「春日部!」
 御園大佐が吼えた。このフロアの通路いっぱいに響いたので、心優も光太もビクッとする。
 心優の父も大魔神と言われたが、眼鏡の大佐も充分、大魔神! 大隊本部事務室から、なにごとかと数名の隊員が覗きにでてきてしまうほど……。
「そ、園田中尉、吉岡海曹……、も、も、申し訳、ありません、でした!」
 春日部嬢が心優と光太に深々と頭を下げた。
「まだ言うことがあるだろうが」
 すごいドス声に、心優のほうがびくびくしてしまう。光太に至っては『御園大佐、こええ』と言いたそうに震えている。
「い、いままでの、無礼、お許しください……」
 追いつめられての詫びなので、本心かどうかは心優にもまだわからない。でも心優もこの有様に眉をひそめつつも、ここまでされたら言い返すこともない。
「いいえ。今後、注意して頂ければ結構です……」
「自分も中尉と同じです」
 そう自分で言って……。心優も気がついてしまう。『規律を守らなかったのは彼女だけじゃない、自分もだ』と。中尉として堂々と、彼女の態度が失礼だと思ったその時に厳重に指導するのも上官の役目だったのではないのか。彼女が聞き入れてくれたとは思わないけれど……、自分にもそんな甘えがあってこんなことになったかもしれないと、初めて気がつく。
「上官の俺からも、部下の非礼を詫びたい。園田中尉、吉岡海曹、申し訳なかった」
 御園大佐にまで頭を下げられてしまい、もう心優と光太はあたふたするだけ。
「おやめください、御園大佐。わたしも中尉としての自覚が足りませんでした」
「自分も園田中尉と同じです。はっきりと言うべきでした」
 それでも頭を下げたままの御園大佐が言う。
「そんなことで収まることではなかった。こちらで引き取るから、もう心配しないでくれ。また春日部のことでなにかあれば、すぐさま報告してくれ。彼女のためだ」
 ひとまず『わかりました』と答えた。
「いくぞ、春日部」
 返事もできないようだったが、御園大佐が腕を引っ張るようにして連れていく。
 彼女はもうふらふらしていて、魂を抜かれたように見えた。

 

 ―◆・◆・◆・◆・◆―

 

 准将室に戻ると、御園准将も『あとは澤村に任せましょう』で終わった。
 いざとなると恐ろしいゴッドファーザーみたいになるご主人を見てしまったせいか、奥様の葉月さんは疲れた顔をしていた。

 終業時間17時のラッパが鳴るが、秘書室はまだ業務中。いつものひと息のお茶をミセス准将に出すと『貴方達もひといきついてきなさい』と言ってくれたため、光太と一緒にカフェテリアへ。
「え、心優さん。それ食って帰って、また自宅で夕飯を食べるんですか」
 ハム野菜サンドを手にした心優をみて、光太が眉をひそめる。
「うん。なんか今日はエネルギー使っちゃったから。二時間もあればお腹すくよ」
「さすがっすねー。いや〜、俺は寄宿舎に帰ってからがっつり行きます」
「半分、あげるよ」
「え、やっぱ食いたいっす」
 ちゃっかりしてる後輩を見て心優は笑いながら、軽食コーナーのレジへ向かう。
 そこで精算をしていると、後ろに背が高い誰かが立った。
「エスプレッソ、ひとつ」
 会計にいるアメリカ男性が『yes!』と顔なじみのようにグッドサインを出したのは、
「あ、フランク大尉」
 光太が先に気がついた。心優も振り返る。目が合うと……、今日のお礼を言いたいのにすぐに言えない。そしてシドも素知らぬふり。
 でも光太がさっと言葉をかけた。
「フランク大尉、今日は有り難うございました」
「なんのことだよ」
「フランク大尉が……、工学科の女性のことを報告してくださったそうで、准将室にお詫びがありました」
「ああ……」
 あれな。知っているくせに、シドの視線が横に逸れまた知らぬ顔。シドのことはもうよく知っている心優だから、真っ正面からお礼を言っても、そうした逃げた態度を取られるとわかっていたから……。
「光太、わりい。俺のこれ持って、席を取っておいてくれねえ? ちょっとこいつと話があるから」
 心優が手にしていたハム野菜サンドまでぱっと奪って、自分のエスプレッソカップと一緒に光太にぜんぶ渡してしまう。
 光太もすぐにわかりましたと素直に聞いて、行ってしまう。いいつけられた通りに、三人で座れそうなところで待っていてくれる。
「報告しただけだからさ。でも、葉月さんと隼人さん手を打ったんだ」
「うん。ありがとう。彼女から私と吉岡君にもお詫びがあったよ」
「目に余るもの、かんじたからさ。俺が報告した時に正義さんはなんにも言わなかったけれど、やっぱ葉月さんに報告したんだな」
 でも――と、シドが真上から心優を少しだけ睨んでいる。
「でも、おまえもちょっと考えた方がいいぜ」
「わかってる。自覚が足りなかったと、反省したばかりだよ」
 すぐに返答したことが、シドも言いたかったことドンピシャだったようで、睨んでいた水色の目が驚きで丸くなった。
「そっか……、わかったんならいいけどさ。おまえさ、いつまでも、わたしは何にも出来ないボサ子という卑下た真似よせよ。これから部下を抱えていく身分になっていくんだから」
「うん、それ……すごく思った。わたしの言われっぱなしの態度も良くなかったって」
 そこでやっとシドが満足そうに笑ってくれる。
「やっぱ、すげえじゃん。おまえはちゃんと中尉だよ」
 シドの長い指先が、心優のおでこをちょん……とつっついた。うわわ、ただでさえ目立つ王子なのに、そんなことする!? 遠くで若い女の子達がこっちを見てるその視線が痛い。それでも『園田中尉はもう人妻だから、訓練相手として仲が良いだけ』ということで今はなんとか切り抜けているよう?
 そんな女の子達の視線なんてなんのそのシドが気にして視線を向けたのは、光太。
「知っているか。あいつ、お遣いにいく先々で、あの愛想がいいの逆手にとって、いろいろと情報をかき集めているみたいだな」
「え、そうなの?」
 来たばかりなのに、そんなことをしていると知って驚く。そういえば……、最近なんだか『ひとりでお遣いに行けます、行けるようになりたい』と積極的だったと思い出す。
「先輩のおまえが関わりそうな他部署の上官のことをさらっと聞くらしい。俺にも横須賀のこといろいろ聞いてきたしな。『僕、来たばかりでなにも知らないから教えてください』と、あのかわいい顔で言われたら、小笠原のお姉様方はぽろっといろんな話をしてくれるだろうさ」
「ええっ! もしかしてあちこちの事務官のお姉様方に話しかけてばっかりいるの?」
「……みたいだな。俺に良く話しかけてくるお姉さん達が『吉岡君てこんな子なのね』と勝手に報告してくれるンで」
 ンで? いつもと違うとぼけた返答に『そのお姉さん達はどんなお姉さん達なの』と心優は密かな疑いを持つ。でも、踏み込める立場でもなく、そんな匂いを感じても心優は流すだけ。
「コータはコータで、秘書室の人間になろうと自分で必死に考えて動いている。使える男みたいだしさ、おまえのそばにいるの許すことにした」
「ああ、そうなのね……」
 有り難いような、でも、違うような、心優にしても複雑な気持ち。でもそうしてシドが心優の周辺を気遣ってくれるのも事実で、やっぱり嬉しい。
「ありがとう、シド」
「べ、べつに。あのお嬢さんはいずれああなったよ。俺と同い年と思ったら余計に腹立ったわ」
「お父様がフロリダ本部大将でも、大尉はそんなことまったく頼らず実力主義ですもんね」
「あったりまえだろ! ていうか、お父様っていうな」
 あれ、なんかいつになく頬を真っ赤にして怒ったので、心優は首を傾げた。フロリダの養父であるロイ=フランク大将のことは滅多に話題にしないシドだけれど、それもほんとうにお父様ではないからだと心優は思っている。
 そう考えている隙に、シドは光太がいる席に向かっていく。
 サンキュ、光太。あいつに注意したいことビシッと言っておいたわ。
 はい? 心優さんにそんなところありますか?
 あるってーの。大尉の俺から見たら、全然ダメ。
 ――そんな会話してるし、すぐにああやって心優より俺はデキル男気取るのもいつものこと。
 まったく、もう、しようがないな……。でも、シドの本質を知っているから、心優はやっぱり嬉しい方が勝っていて頬が緩んでしまう。
 わたしも仲間に入れてと、男二人が先に座った席に行くと、シドが勝手に心優が買った野菜サンドを開けて食べているし!
「ちょっと! これ、わたしが買ったんだけど!」
「うまそうだったし、おまえのだからいいかなと思って」
「今日はだめ! 新人の吉岡君の目の前でそういう行儀悪やめてよっ」
「二個入りだから、もう一個あるだろ」
「吉岡君と半分コだったの!」
「いえ、お、俺は結構ですから。これ心優さん食べてください」
「えー、俺いままでおまえのもん勝手に食べても怒られなかったからさ、開けちゃっただろ」
 光太が増えたことで、いままでの行動もいきなり許してくれなくなったと、勝手に開けたシドがむくれている。
「もう、いいから。もう一つ買ってくる」
「ええ、心優さん。いいですよ。もともと俺、食べるつもりなかったんですから」
「わたしがイヤなの! 吉岡君が食べたいと言ってくれたのに我慢させるのが!」
 シドのせいだからね! と睨んだけれど、シドも『悪かったよ』と言えない分、心優に背を向けてもぐもぐ食べているだけだった。でもその背が『悪かった』と見えてしまうから困ったもの。
 まったく。頼りがいある男に見えたり、やっぱり出会った時のまま子供っぽいし。しかも心優がふたつ目のサンドを買って戻ってくると、シドはもういなくなっていた。
「え、帰っちゃったの??」
「はい。ごちそうさまとひとこと言って、さらっと……」
「もう〜……! あのわがまま王子め」
 心優が目くじらを立てていると、光太がくすりと笑っている。
「俺もわかってきましたよ。フランク大尉は、心優さんのこと姉貴だと思っているんですね。甘えやすいんでしょう」
 そ、そうかな……。密かに心優の頬が熱くなる。
 意外と素直になれない彼だから、そうしてわがまますることで、ちょっとでも気が楽になってくれるなら……。心優はそう思っている。
 心優の大事なものをしまうために、結婚に合わせて、万華鏡のような螺鈿細工があるシックな木箱を買った。
 そこに、彼に託された翡翠のロザリオもちゃんとしまっている。
 彼の魂がそこに還ってくるからという目印。預かっている限り、心優は彼の姉貴でいようと思っている。

 

 ―◆・◆・◆・◆・◆―

 

 それから数日、御園准将から報告があった。
「今日、お客様が来られるから。岩国からよ」
 岩国。そう聞いて、心優の脳裏にすぐに浮かんだお客様がひとり。
「高須賀准将が来られるの。それと、空海の飛行隊長をしている日向中佐も一緒にね」
「よく来られるようになりましたね」
 あちらも波乱の航海から帰還したばかり。わざわざこちらに出向いてくれるとのことで心優は驚いた。
「それだけ早く、直接に伝えたいということみたい。私からのお願いも詳しく聞きたいといってくれたわ」
 光太も尋ねる。
「雷神のアグレッサー役のために、空海が来てくださることになったのですか」
「そこはまだ。高須賀さんもはっきりとイエスとは言い切れないみたい。ダメージを受けている機体もあるし、岩国の場合、スクランブルの陸任務もあるからね。主力飛行隊をこっちに貸すとなると全国のどこかにしわ寄せも来ちゃうから」
 そこは難しいらしい。そういう話を聞くと、やっぱりアグレッサーという専門部隊は必要なのだと心優も思う。
「連隊長も来られると思うから、福留さんにコーヒーの準備が出来るようお願いしてね」
 『はい』。光太と二人、外部からのお客様をお迎えするためにお部屋を整える支度を始める。

 岩国のエースチームは『空海』と呼ばれている。尾翼に菊と雲の日本画のようなペイント。
 広報誌で見たことがある高須賀准将は、優しい僧侶のような微笑みの人。それが心優の印象。

 正午前。岩国からの輸送機が到着する。
 出迎えとしてラングラー中佐とコナー少佐が向かった。心優と光太は、ミセス准将と共に准将室で待機。
「お連れいたしました」
 ラングラー中佐がお出迎えから帰ってきた。准将室の扉が開き、そこからもう制服ジャケット姿になっている男性が現れる。
「お久しぶりです、高須賀准将。ようこそ、小笠原へ」
 ミセス准将の微笑みのお迎えに、すぐにあちらの男性もにっこり笑顔になった。
「お久しぶりだね。お嬢さん」
 広報誌で見たことがあるだけの高須賀准将。五十は超えていると聞いているけれど、まだ髪は黒々と艶やかで優雅なたたずまい、細面でとても優しい顔をしている男性だった。イメージ通りのふんわりとしたムードで心優もホッとする。
 その男性が臆することなく、御園准将の白い手をぎゅっと両手で握った。
「ああ、やっぱり冷たいね」
 うちのミセス准将の手を、そんな軽々握ってしまうなんて――。心優はぎょっとした。
「君の手はいつも冷たいと男達が言うからね。まだ温められる男がいないみたいで安心したよ」
「また、もう。からかわないでくださいませ」
「澤村君でも無理なんだよね」
 にっこり笑う高須賀准将だったが、ミセス准将がちょっとだけ気恥ずかしそうにうつむいてしまう。いつもの澄ましたアイスドールの顔を必死に整えているが、その動揺は見て取れる。つまり、そうは言われても『夫は私の手を熱くすることできる』のだというのを、逆に高須賀准将に読まれているということ。
 なんと。ここにも一人、ミセス准将をお嬢ちゃんにしちゃう大人の男が!
 思っていたイメージ通りの優しい人、じゃなくて、イメージがちょっと崩れそうな優男風で心優は唖然としてしまった。
 それでも葉月さんは信頼しているのか、無碍にはしない。そして高須賀准将も『冗談だよ』と彼女の鼻先で笑って、ふっと離れた。
 これはこれは、なかなかの手練れの男性に違いない。細く柔らかいイメージのくせに、葉月さんと同じ頑とした精神で国境を攻める男なのだから、飄々と見えてしまうのも当然か。しかも、艦長とあってこちらも元ファイターパイロット!
「日向さんもいらっしゃい。先日の任務もご苦労様でした」
「痛み入ります、御園准将。力及ばず、悔いを残しての帰還となりました」
 中佐の肩章を持つジャケットにネクタイ姿の飛行隊長殿は、クールな面差しでこちらの方が笑顔を見せない。
「そんなことないわ。司令から撤退を命じられたのですから、行きたくても行けなかったでしょう」
「行けるものなら、もう一度行ってやり返す気持ちなら充分にありました」
「ファイターパイロットなら当然の気持ちよ。察するわ……」
 大陸国の王子の煽りにやられっぱなしで、そのまま司令部の中央指令管制センターから撤退命令が出て国境から退去、予定より早くの帰港となった岩国艦隊。その無念が日向中佐の表情に滲み出ている。
 どうぞ、こちらへ。
 御園准将のエスコートで、お客様二人、ゆったりとしたソファーに座って頂く。
 御園准将も向かい側にしっとりと腰をかけた。
「高須賀准将、先日の航海任務、ご苦労様でした」
「うん。思わぬことになったね。いや、君があのような攻撃を受けて、あちらの国の事情にまで巻き込まれたと聞いていたから、いつも以上に腹はくくっていたけれどね」
「王子――と、高須賀さんから呼ぶようになったそうですね」
 高須賀准将が、優しい目元をニッと緩める。
「ピンと来たよ、『彼』だと」
 すぐに彼ではないかと感じられたと言いきる高須賀准将の自信。御園准将も気圧されたのか、じっと先輩を見つめているだけ。
 そうして『ピン』と勘が冴え渡る。それが艦長を任せられる海軍人に備えられたもの。心優にはそう見えた。
「白い飛行隊を名指しで迫ってきて、しかも、新しい機体番号が積極的に前に出てくる。前回、海上爆破で機体を失ったバーティゴ事故を起こした大陸国海軍司令総監の子息殿。彼じゃないだろうか。その執拗さは『御園葉月を出せ』とも私には聞こえた。彼ならば、王子のような男、だから『王子』とね……」
「さようでございましたか。やはり、彼なのでしょうか……」
「目の前で話した相手だったね、君にとっては」
 それでも人違いであって欲しいと、ミセス准将が密かに思っていたことを心優は初めて知ってしまう。
 そういうミセス准将の表情を引き出してしまう高須賀准将は、彼女にとっては気が許せる信頼している先輩。それが二人の間に現れていた。
 ミセス准将の目が、今度は日向中佐へ。
「日向中佐も、目の前で見たのかしら」
「はい。何度も措置のアナウンスをしたのですが皆無です。あちらから侵犯をすることは厭わない様子です。元より、小競り合いを繰り返してきたエリアではありますが、いままでとは異なる強い意志を感じます。……ひきずりこまれそうで、そこは日頃の訓練で養っている冷静さが不可欠だとひしひしと感じさせられました」
「冷静さ、ね……」
 御園准将が溜め息をつく。彼女の脳裏にあるのはきっと鈴木少佐。一番前に出すと決めた男が冷静でいれくれるのだろうか、あの悪ガキが。そう案じているのが心優にもすぐにわかった。
「それで……、高須賀准将。先日おねがいたしました空海にアグレッサーをして頂く件なのですけれど」
「ああ、うちが抜ける間、ではどこがアラートのカバーをしてくれるかとなると、なかなかね……」
「パイロット数名でも、ですか」
「数名だけのことならば、貸す意味がないだろ」
 優しい男性の声が、そこで鋭くなった。目つきもキッとミセス准将を睨んだのだ。あの葉月さんが一瞬怯んだ……。心優もゾッとした。やっぱりこの人、攻めの航海を信条とする艦長殿だけある。そう艦長になる男はこうでなくてはならないのだと。
「空海のパイロット数名だけのことならば、小笠原のファイターパイロットで充分いけるではないか」
「もちろん、わたくしだって、空海まるごと来ていただきたいです」
「昨年やらせてもらった航海前の対領空侵犯措置の合同訓練という形にはできないのかな。お嬢さん、そういうお願い事を海東司令にするのは得意じゃないか」
「あの時のような『一日限定の合同訓練』ならば、岩国からの飛行で充分です。ですが、こちらは出来れば数日の徹底した敵役をお願いしたいのです。そうすると、岩国から伊豆上空までの燃料や費用の問題が出てきます。だから小笠原の待機空母に着艦した状態でお願いしたいのです」
「そんなことは私にも計算できるよ。だからその数日、岩国で空海がまるごと留守になることを懸念しているんだよ」
 やっぱりだめかも……。橘大佐が願っていたような訓練は難しいのだと心優も感じてしまう。
「そういうことを、細川少将を交えて相談しようと、前回航海の報告も兼ねてこちらに来たわけだけれど」
 高須賀准将がそこでまだ開かぬ、准将室ドアへと目線を向ける。
「細川少将が、こちらミセスの隊長室で待っているようにとのことだったけれど、忙しいのかな」
「心優、連隊長室に連絡してくれるかしら。光太、福留さんを呼んできてお茶を差し上げて」
 『はい』と准将の背後で起立姿勢にて待機していた心優と光太は返事をする。だがそこで高須賀准将が心優をじっとみている。
「やーっと会えたよ」
 彼がニヤッと表情を崩した。
「ソニックを悩ませていた女の子、だろ」
 そのニヤッとする笑顔がもう怖い。笑うことが仮面である悪魔にねっとりと囚われた気分になる。そういう妖しい人だとわかってきた。
「岩国に来た頃に心優さんと葉月さんが並んだ写真が掲載された広報誌、あれを何度も開いては、その度にとてつもなく思い詰めた顔をしていたからね。もしかして、彼女が引き抜かれて追いかけようとして現場に戻ってきたのかと冗談半分にかまをかけたら、おかしいね、雅臣はすぐ顔に出る」
 でも心優が知らない岩国にいた雅臣の様子を初めて聞いた。お猿さん……、別れてから岩国でもそうして心優のことをとっても気にしてくれていたんだって。
「おまえ、ここまでして彼女を捕まえられなかったらただのアホだよと言って、横須賀に送り出したんだから。ま、結婚してくれなくちゃ、今回雅臣に会ったら『アホ』と説教していたところだよ」
「まあ、高須賀さんにそんなこと言われると思ったら、それは雅臣も必死になったことでしょうね」
 そうだったんだ! お猿さんをすごく後押ししてくれていた人がここにもいたんだと心優は感動してしまう。
「酷かったよ。落ち込んだり、急に頑張ろうと元気になったり、久しぶりの現場に震えていたりね……。始めてしまえば、やっぱりソニック。最後には堂々としたものだった」
 久しぶりの現場に震えていた? 知らぬ岩国での半年。雅臣がどれだけのものに立ち向かっていたことか……、とてつもない壁を乗り越えて、心優のところに戻ってきてくれたんだと……、業務中接客中なのに涙が滲んでしまった。
「その節も、わたくしの願いで、ソニックを受け入れてくださって有り難うございました」
「君に恩を売るのはいいもんだよ。君からのお礼、いつも助かっているよ。あらゆることをサポートしてくれるしね……」
 こちらも御園家と共にいるメリットの恩恵をあやかっているのだと心優も察する。完全たる御園派ということらしい。
「おかげさまで、ソニックを今回は副艦長に就任させることが出来ました。岩国で、元より先輩だった高須賀さんの支えは雅臣にも大きかったことでしょう」
「気になるよ。哀しく酷い事故でソニックを失った哀しみは、彼自身ではなく、君もそうだったように私も悔しくて涙がでた程だよ。あのままいけばパイロットとしてだけではなく、指揮官としても有望だっただけに。防衛の要を育てるのも私達の使命だ。そのソニックが帰ってくるとなったら、そりゃ全力で復帰をさせるべきものだったからね」
 その彼がいままでのような妖しさを潜め、今度はほんとうに穏やかで優しい微笑みを向けてくれる。
「園田さん、ソニックを頼みましたよ。私にとっても横須賀で飛んでいた時の後輩だからね」
「高須賀准将、有り難うございます。まだ未熟な妻ですが、支えていきたいと思っております」
 ここに、こんなにも助けて頂いた恩人に会えて心優も嬉しかった。
「ご結婚、おめでとう。城戸中尉。ソニックが伴侶を得て安心しましたよ」
「有り難うございます。いま、連隊長室に連絡いたしますね……」
 内線受話器を手に取った時だった。ドアからノックの音。ああ、ちょうどいらっしゃった。細川連隊長! おつきはいつもの水沢中佐? それともシドも来るのかな? なんて思いながら心優は受話器を置いてドアへと向かう。
「いらっしゃいませ、細か……」
 ドアを開けてそこにいる『私服スーツ姿の男性』を目の当たりにして、心優はビクッと硬直する。
「初めましてー、君がミユ!」
 その男性が心優を指さし、嬉しそうに青い目を輝かせた。
 しかもそのまま遠慮もなく准将室に入ってしまう。心優も止められなかった。何故なら、その男性も広報誌で見たことがあるから!
「葉月! 久しぶりだな! 来ちゃったぞ!」
 私服姿の、金髪青眼の男性が飛び込んできて、ソファーにいる高須賀准将も日向中佐もとんでもなく驚いた顔で立ち上がったほど。
 当然、あのミセス准将までもが唖然として、彼女はびっくりしすぎて座ったまま。
「に、に、兄様……」
「おう! 久しぶりのこの景色に潮の匂い。いいねえ。俺の基地だったんだから当然だよな」
 きらっきらとした底抜けに明るい金髪の男性。その人は、元小笠原総合基地連隊長殿。いまはフロリダ本部海軍大将である『ロイ=フランク大将』! 

 

 

 

 

Update/2016.12.12
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