27.御園いじめ

「はぁ……よかったなぁ……なんにもなくて♪ 安堵、安堵♪」

デスクの上座に戻った父がどこから出したのか?

扇子を広げ、頬を煽りながら急に『にこにこ』

それを見て……悪友の細川が呆れたため息を葉月の頭の上でこぼしたのが解った。

だが……何も父には口悪を叩かずに……

やっと葉月の背中から離れていった……。

そして彼は悠然と座る父の元へ……

「遅れて悪かったな」

「なぁに♪ 間に合ったじゃないか! なぁ、葉月! 助かったよな♪」

「あ……はい……有り難うございました。両将軍」

葉月が敬礼をすると、父は『にこにこ』 細川は『フ……』と疲れたようなため息を……。

「御園。こっちへ来い」

早速……お叱りがあるのだろう……。

葉月は厳しい目つきの『鬼おじ様』に支配されるように言われるまま側へ向かう。

父もなにやら……そんな娘の監督に急に緊張の面もち。

「初の実戦指揮、緊張しただろう……。

見守ってくれた御園『総監』にもう一度改めて御礼を言いなさい……」

細川に両肩を握られて無理矢理、父の方に身体を向かされた……。

『え!』と……父・亮介もいきなりの細川の部下への指示に硬直したようだ。

葉月も戸惑い! 父であって将軍である亮介にどう御礼を言えばいいのか!?

勿論……アルマン大佐も……

他、管制員も仕事をしつつもこちらの不思議な場面が気になる様子……。

「……あ……あの……」

「いやー! なんて事ない! どの部下だって毎度のこと、毎度のこと!!」

妙に父がおちゃらけて扇子をバタバタ煽って……照れているではないか??

葉月だって将軍に御礼を言うつもりなのにそんなに照れられては困ってしまう。

だが……葉月の背中で細川が焦れったそうにして葉月の背中を……

『おじ様』としてそっと指でつつくのだ。

「み……御園中将……あの……」

葉月も言いたい言葉は解っている。

でも! 父の指揮下任務は初めてだから……

指揮官として御礼を述べるなんてしたことがない。

後は、将軍と中佐の距離は今まで保ってきて娘として反抗的にしてきたから……。

だから……

すると、細川の呆れたため息がまた……頭の上から。

「御園総監殿。呼ばれてもいないのに部下の不出来さが心配で

無理を言って私を指揮下にいれて下さいまして有り難うございました。

その上……私が遅れたばかりに……

こんな不出来な私の部下の面倒を自ら見て下さいまして

申し訳ありませんでした。

中佐……言わねばならぬ事があるだろう?」

悪友の父に細川は……低姿勢に指揮下監督である態度に出てきた。

だから……今度は葉月も……

「御園将軍……未熟な私のために……

安堵できるお言葉……激励、的確なアドバイス……有り難うございました。

お陰様で……監督不在の間も役目が果たせました……」

葉月はいつもの冷たい表情で、でも言葉は心を込めて……

父の自分と同じような瞳を見据えて最後にお辞儀をする。

「…………」

『将軍らしくして下さい』

今度は父の横でマイクが焦れったそうに父に耳打ちを……。

父は咳払い一つして……

「アルマン大佐。どうだったかな?御園中佐嬢の指揮は……」

急に大佐に振ったので黒髪のフランス大佐も驚き硬直……。

「あ……はい。もたつきはありましたが……初指揮にしては

ハキハキして機転も良く……落ち着いていましたね。そこはお世辞抜きに

それに……チームメイトに『突っ込んでしまえ』の指示は……驚きました」

彼もニッコリ……葉月に笑顔を……。

「うーん……空の事はさっぱり? 専門の大佐がそう言うからいいのじゃないのかな?

と……言う事で、良くやったね? 御園中佐♪」

ワザとそうして父将軍として直接的お褒めのお言葉は避けたようだった。

細川もそれで満足したのか、そっと御園父娘の側から離れて管制員の後ろへ……。

『まったく。素直じゃないんだから』

亮介の耳元でマイクが納得いかなそうに一言ぼやいた。

(しかたないじゃーん。。)

亮介はいちいち小うるさい側近にまたムッと顔をしかめる。

『お疲れ〜お嬢。。すごかったよぉ』

控えていた側近代理の山中が葉月の側によってニッコリ労っていた。

葉月もホッとした瞬間だった。

「えっと……御園中佐。ちょっと、ちょっと……」

落ち着いたところを父がなんだか手招き。

葉月は首を傾げながら……『はい……中将』と

もう一度悠然と座っている父の側に寄った。

「手を出してご覧?」

「はい?」

「いいから……」

葉月がそっと手を差し出すと……亮介がポケットから何かを握って出した。

それを葉月の小さな手の上で大きな手がパッと開くと……

「ご褒美」

「!!」

「大好きだっただろ??」

葉月の手のひらには……小さな頃良く父が『ご褒美』と言ってくれた……

『苺ミルク味のキャンディー』

葉月はそれを暫くジッと眺めて……

『パパ……』 心でそう呟いてそっと指でつまんだ……。

「いま……心で昔通りに呼んでくれた?」

父がニッコリ……昔の笑顔を……

葉月は……ここでは口に出せないから……そっと頷いた。

父の顔がもっとほころんだ。

マイクと……山中がそれを側で見ていてやはり微笑んでいる。

細川も横目で静かに眺めていた。

管制員達は忙しそうに着艦の指示を……

甲板には無事に帰還したチームメイト達が次々と着艦をしているところだった。

「さぁて……マイク。次は突入隊だな」

亮介は、娘の初指揮仕事を見届けて、悪友に任せ、管制室を出た。

「そろそろ、漁船と供にフォスター隊がウィリアム大佐と戻ってくる頃です。

漁船が空母艦に到着すれば、フォスター隊は銃器の準備です」

「いよいよだなぁ〜」

亮介の心にも並々ならぬ不安が襲い始め……そっとため息をこぼした。

「中将? 私に苺ミルク味のキャンディーを探してこいと

出発前にだいぶ煽りましたね〜……中将ったら……

いつもはあの様な甘い物は食べないのに何故かと思いましたよ……。

リトルレイの為に最初から……」

いつも『ニヤリ』とからかう若側近がこの時は優しい眼差しで亮介を見つめる。

「いや〜……うん……」

まぁ。そう……本当の事なので亮介もそんな慈しんでくれる息子のような側近の

優しい眼差しにいつものおちゃらけが出なくなって照れてしまった。

二人で『突入隊作戦室』に向かうところ……

「亮介!」

そう呼ばれて振り返ると細川が亮介を追ってきているところだった。

「なんだ……フランスの当直パイロットとミーティングだろ?」

「今、アルマン大佐が小娘を従えて始めている。

当直組はあの『フジナミチーム』だからな……コリンズチームとも歯車合うだろう?

それに私がいてはアルマン大佐もやりにくいかと……」

細川がそう感じて、若い者に任せた気遣い……。

亮介は悪友に感心してニッコリ微笑んだ。

「悪かったなぁ……葉月のために」

「いや……気になることがあってな。登貴子さんにも突っ込まれたことだし

ちょっと……話せるか?」

『ああ。いいよ』

と……亮介が快く返事はした物の……悪友の細川はなんだか厳しい顔つき。

「あ……食堂からコーヒーでも持ってきましょう。

えっと……官僚室でお話しされてはどうですか?」

マイクの勧めに将軍二人は頷き合った。

『失礼いたします』

マイクはその場から気を利かすようにして、二人の間から去って行く。

亮介と細川は官僚室に向かった。

官僚室に入ると……。

「亮介……お前……純一と接触したのか?」

(やっぱりね。お前は察してると思ったよ)

亮介は長年の付き合いがある悪友が……

『それ』が気になってわざわざ娘の葉月のためと称してやってきたのだとため息をつく。

だが……娘・皐月が哀れにも亡くなった時も……

末娘の葉月が精神的に大打撃を被ったときも……

いつだって親身に側にいてくれた。

もっと昔。

ハーフで体が大きく、顔立ちが日本人離れしていた亮介が

軍隊で馴染めなかったときも……

空と陸と別れてはいたが、いろいろと亮介を普通扱いしてくれたのも

この……細川だけだった。

もっと……いうと……妻『登貴子』との出逢いもこの細川のお陰……。

それも……彼が片思いをしていた『登貴子』を……

亮介はその気がなかったのに……

彼と登貴子が上手く行くことを願っていたのに……。

亮介も片思いだったとは言え……最後には自分の願い通り

『科学者の彼女』をもらってしまったのだ。

でも……彼はいつだって親身になってくれる。

口は悪いが、絶対に捨てると言う事はしない男だった。

今回も……。

「ああ。栗毛の『エド』がきてね」

「あのイギリス男か!?」

「ああ。ジュン坊はこなかっよ」

「純一が……何か握ったから……お前が動いたのか!?」

「まぁね……」

官僚室に入るなり……まくし立てるように質問を投げつける細川。

いつもは静かな男なのに、妙に興奮しているので

亮介は呆れて自分だけソファーに座り込んだ。

それを見て、細川良和も我に返ったように深呼吸……。

やっと落ち着きを見せて亮介の向かい側に腰を落とした。

「……と、言う事は……亮介? お前は岬基地の中にいる犯人グループを?」

「ああ。もう、知っているよ」

「どこの誰だ!?」

細川が追求すると……いつもはおちゃらけている『お気楽な親友』が

時折見せる、鋭い眼光で、ガラス玉の瞳を輝かせたので

ふと……細川は身体が自然とソファーの背へと退いてしまった……。

この瞳を娘の葉月も時折見せる……。

『御園の不思議な力』を感じ取られずに入られない瞬間だ。

「闇の男だ。ジュン坊に……『引き渡せ』と言われた」

「純一が知っている男なのか??」

「ああ。『元部下』で……去年、純一が一時姿を消しただろ?」

「ああ。連絡がないとお前も右京も焦っていたな……死んだのではないかと」

「殺されかけたらしい……その元部下に……闇の任務中に」

「それで? 純一は……その自分のカタキが『岬基地占領の犯人』だから?

手を出さずに、犯人の身柄は闇側に引き渡せと? どうするつもりだ??」

「どうするも……。こちらの軍事施設を乗っ取られたんだ……。

簡単に犯人の身柄は引き渡せないと俺は返事したよ。

勝手に殺されても困ると……。こっちはこっちで原因追及解明の為に

犯人の身元は明確にしないと軍側も黙っていないからと……」

「だが……その犯人……つまり、純一の元部下の身元、経歴がばれると……

純一の組織が表に明確に……軍に知られてしまうではないか??

それが……御園と関わっている男と解ったとき……真一の父親だと解ったとき……

お前達、御園一族の立場はどうなるんだ!? それぐらいお前も解るだろ??

お前が総指揮官なんだ……なんとか上手く犯人を純一に渡せないのか!?」

いつにない……熱く真剣にくってかかる親友の細川。

静かな男が持つ、熱い情熱。

その姿を見て……亮介はなんだか有り難くなってきて……

やはり……『お前は良い奴過ぎるよ』と泣きたくなってきたほどだ。

「……エドに言ったよ。やるなら上手くやれってね」

そういうと……細川はビックリ驚いたように亮介の前で一時息を止めたようだ。

「じゃぁ……『上手く殺せば、後はなんとか身元は上手く隠す』と?」

「だね……」

亮介の『決心』に細川が大きく疲れたため息を床に落とした。

「それから……亮介。葉月を上手く指揮側に押し込んだな……。

本当なら訓練通り……空を飛んでいるところなのに」

「葉月は……絶対に外に出て行くよ」

父親の勘なのだろうか!?

落ち着き払ってそういう親友に細川はまたビックリ……息を止めたのだ。

「登貴子さんが……父親が側にいても……俺が側にいても

心配でしょうがない……何とか指揮側のまま押さえつけられないのかと。

なぜ? 娘の側近が一人突入隊にいれられたのかと……

『正義感が強い葉月が部下を放って指揮側で大人しくしているはずない』と、

気も狂わんばかりに俺に連絡してきて……

任務辞令を出したロイも『おばさんに叱られた』とかなり手を焼いていたぞ?」

「そりゃね。俺が出発するときも鬼のように怒っていたからね。

これで……側近の澤村君が『娘の恋人だ』とでも言ったら……

今以上に手の着けようがなくなるよ。この半年黙っていて正解だったよ」

「まぁな。あれだけ葉月と澤村が上手く行くとは……俺も思っても……」

「……いいや。俺は今度こそ、上手く行くと思ったよ♪」

そこはいつもの持ち前の『明るさ』で嬉しそうに微笑む父親に……

細川はまた驚きおののいたのだ。

「なんだ。猫かわいがりしていた娘を取られたと騒ぐかと思ったぞ?」

「あはは〜♪ そう言いたいところだけど……葉月の場合はね……」

明るくなったと思ったら、また瞳に影を落とす亮介。

彼も本来なら陽気なまま生きているはずの『お坊ちゃま』なのに……

娘の悲劇を受けたときから彼は時折、光と影を持ち合わせた父親になってしまったのだ。

そこは……細川も哀れで……。

そして……片思いをしていた『彼女』が

裕福な家に嫁いだのに……

賢くて、美しく貞淑な『彼女』が夫と供に娘の苦難を背負って

精神的に『狂う』様を見ていられなくて……そうして

細川も首をいつも突っ込むハメになってしまうのだ。

「さっき。『隼人君』とも話したよ。良和が教えてくれたとおり……。

落ち着いていて意志をしっかり持った男だったよ。

見た目はそんなに目立つような男じゃないけど……

中身があれだけしっかりしていたら……

葉月の内面的弱さをどれだけ守ってくれているか良く解ったから……」

「だったら。何故? 軍側が澤村を突入隊に選んだときお前の力ではずさなかった?

それを一言……言ってやりたくてね!」

「良和にそう言われると思った……。

『御園いじめ』っていうのかな??」

「御園いじめ?? まだ、そんなことがあるのか? お前が将軍になったのに??」

「ああ。俺じゃないよ。じゃぁ『葉月いじめ』と言っておこうかな?」

亮介が静かにテーブルの上にある……先ほどマイクが拾い集めたクラッカーをつまんだ。

「葉月いじめか……」

細川も何となく察したのか……呆れたため息をこぼした。

そして亮介はクラッカーを頬張らずに……指でいじりながら話し出す。

「つまり……葉月があの若さでしかも『女』で『中隊長』になった。

賛成側、反対側。いまでも真っ二つって事さ……。

とりあえず、賛成側が押し切って中隊長になった。

今度はまだ、反対側が諦めていないから……

この任務が失敗すれば……葉月を中隊長から引き下ろすことが出来る。

その為に第一陣に小笠原四中隊の通信科が選ばれた……。

もう一つ、葉月の直接的部下……側近の隼人君が

これまた運が良いのか悪いのか? 工学についてちょっとばかし詳しいところを

上手く目を付けられて……『彼こそ適任』と本部の反対側が推したのさ

『本部』の通告だから、いくらロイの力でも葉月と隼人君のために

メンバーから外すという事は出来なかったのさ

そして……私自ら『総監』を願い出た……

『娘の責任』を見届けて父親として責任をとれとね? そう言い出すだろうから

総監を自ら願い出たことは、本部としては『丁度いい』ってところ。

つまり……この任務『失敗』した場合は『御園の汚点』がつくチャンス

岬基地などいつでも軍の力で取り返せる……反御園の派閥の奴らが

そう思って……今回の任務の失敗を虎視眈々と願っていることだろうさ!」

亮介がテーブルのクラッカーを『グシャリ!』と大きな手で握りつぶした。

それを見て細川もそっとため息……。

前屈みにうなだれている向かい側の親友の肩をそっと叩いて……

クラッカーが砕け散っている彼の手をそっと……開いてクラッカーを払いのけた。

「失敗の後始末で『成功』を狙っている……そんな奴ら……

こっちで何とかやってやろうじゃないか?

言っておくが……私が育てた部下達だってそうヤワでもないからな」

細川が意味ありげに『ニヤリ』と黒髭をひねる微笑みを浮かべると……。

『フフ』と……いつも『呑気な親友』もガラス玉の瞳を光らせた。

彼がその瞳を輝かせると何かが起こる。

細川はその瞳の輝きに一瞬……寒気を起こした。

「良和。ただで総監を願い出たワケじゃないからね。俺も……

総監を……ワザと願い出たとは反対派も知らないだろうさ……。

向こうとしては『御園が思うつぼにはまった』と思っているだろうけど……。

こっちには『最高の私設諜報部員』との繋がりがある。

純一とは『ギブ・アンド・テイク』

世間知らずな反対派は何も知らないのさ……」

亮介の妙に自信ありげな……そして闘志を携えた瞳に……

細川はそっと息を呑んだ……。

そう……そうしてこの親友とは……いつだって『ライバル』

この訳の解らない『御園の力』に魅せられて細川もここまで来たのだ。

「ま! そう言うことで……ジュン坊がいずれ、決着を付けるだろうから……

葉月も外に飛び出しても、役立たず・出番なしってところかな?

早々に決着を付ける。

とにかく……突入隊が上手く侵入してシステムが起動する……。

それを見計らったところで『黒猫』が暗殺するって所かな?

ジュン坊が動きやすくなるために総監を願い出たって所♪」

急に……いや……やっといつものおちゃらけ将軍に戻った親友に

細川はまた……ため息。

「お前にはついていけない。まったく心配する方が損だった」

「あはは〜♪ でもね。葉月はなんて言うのかな?

皐月の『真似っこ』するようになってから……巧みすぎて……。

私の目を縫って本当に何処かに飛んで行っちゃう所があるからね。

それも心配で総監を願い出たところもあるよ?」

「そうだな……。そこは俺が良く見張っておく……」

「悪いね……良和、いつも恩に着るよ……」

いつまで経っても憎めない笑顔をこぼす親友に……

「ミャンマーの二の舞は嫌だからな」

細川はちょっと照れて……『ふん!』っとそっぽを向けた。

「はぁ……そうだね……。あんなにプリンセスみたいに可愛かった葉月がねぇ

傷だらけの身体になって……戻ってくるなんて二度とみたくないからね……

はぁ……どうしてこんなになっちゃったのかなぁ……

神様は意地悪だよ……。私じゃなくて可愛い娘になにもあんな試練あたえなくったって」

また……疲れたパパになる亮介に細川も……

今度はため息でなく一緒にうなだれた。

「でもな。亮介……その試練はきっと……

葉月の『栄光のため』そして……それが『御園の誇り・血筋』なのじゃないか?

それに……その『葉月いじめ』……乗り越えて誰にも文句を言わせない

押しも押されぬ『中隊長』になる良いチャンスじゃないか? 覆そうじゃないか!」

「そうだねぇ……」

二人はそっと……小さな窓から見える青空を一緒に眺めた。

「遅くなりました〜……」

良い頃合いに側近のマイクが、コーヒーを持って官僚室に戻ってきた。

でも……亮介も細川も解っていた。

マイクが外でそっと……話が終わるのを待っていたことを。

その証拠に、マイクが持ってきたコーヒーは少し冷めていた……。

御園の事は……良く心得ている側近のマイクなのだった。

お互い解っていながらニッコリ……コーヒーをすすったのだ。