5.熱風

 ベッドサイドの灯りを、隼人は消す。

そうすると、より一層、彼女が扉を開くことを知っているから……。

 

 青い夜灯り。

浮かび上がる白い曲線。

微かに聞こえて、吐息をつつむさざ波。

 

 あの夜より、週末のあの夜より……一昨日の夜より。

 彼女の瞳が熱く溶けたのは…… 

『気にしていないよ』

任務から小笠原に帰ってきて、落ち着いたある夜。

葉月とやっと波長が整って、お互いがその気になった時。

 

 『でも、なにされたか気になるでしょ?』

葉月は、隼人の神妙な眼差しから避けるように、隼人の胸の下で顔を逸らした。

『どの男も一緒だろ? 胸触って、大事なところを多少触られたんだろ?

そんなの……階段で見せつけられた。悔しくもなんともない。だって……』

気にする葉月から、その重石を除けなくてはいけない。

隼人はその日は、そういってその男が葉月にしただろう事を同じようにやってみせた。

『やっぱり……気にしている』

『やっぱり……こうされたか』

いつもの優しい隼人じゃないと、その時葉月は哀しそうな目をしたのだ。

だけど、隼人は……

『俺には許してくれる事じゃないの?』

『え?』

『あの男には感じなかったなら、俺には感じてくれ』

そういうと葉月がなんだか『決心』を固めたような真剣な顔をしたのだ。

それを乗り越えないと……お互いにわだかまりになる。

そう彼女は思ったらしいし……隼人もそのつもりだったのだ。

 

 それに……葉月が『犯された』わけじゃない。

『火傷』を負ったぐらいのモンだ。

でも……そう言いながら隼人も男だから気にはしていたのだ。

この時は、まだ帰ってきて『最初の再開』だったから……。

あの黒い男が、好きなように葉月を触っていた『短い時間』

変な薬を飲まされたとか言う葉月が受けた屈辱。

 

 『はぁ……あ……なんだか、隼人さんじゃないみたい!』

(だろうね? 俺……本気だから、今)

どうだろうか? 隼人は今まで葉月を丁寧に扱ってきたが

この日は異様に貪欲に扱っていた。

しかし、驚いたことに……葉月の反応も尋常じゃなかった。

今まで以上の『素早い反応』に隼人は驚いたというか?……感激したというか?

だからといって、すぐには飛びつかない。

『葉月も変だよ……今までと違う』

隼人は始終、冷静に葉月の反応を観察していた。

いつも熱くなる隼人を冷静に観察していたのは『氷の瞳』を持つ彼女だったのに。

 

 左肩は絶対に思うように動かせないから、

好都合というのは気の毒のような気もするが……

まさにその通りで、葉月はまったく隼人の腕から逃れられない状態だった。

そんな中……貪欲に突き進む隼人に対して葉月の感度は『良好』過ぎるぐらい。

 

 彼女が持っている奥の泉から生まれ出る銀色の糸が隼人の指に絡み付く。

それも今までにない輝きが夜灯りの中、煌めく。

充分すぎるぐらい……それでも、隼人は満足しない、安心しない。

今までと変わらない……じっくりした『下準備』は怠らなかったが……

(いや……驚いたな……)

そう思うほどの『感度』だったのだ……。

 

 「……私……」

「なに?」

葉月が、天井を見つめたまま呟いた。

まだ、冷静な口調が少しばかり隼人を苛つかせた。

いつまで経っても彼女は『氷の花』

凍りついて、雫すらつけようとしない堅いつぼみ。

その固いつぼみを覆う氷が今夜は少しばかり解凍されて

雫をまとい始めているのだけは、新しい感覚として隼人を何とか満足させるだけ。

 

 「なに?」

言葉を止めた葉月にもう一度隼人は問いかけた。

今度は少しばかり苛立った声だったと思う。

「……本当は」

「本当は?」

隼人の指先に相も変わらず、無反応のような葉月を見下ろした。

「……本当は……いやらしい女なのよ」

天井を見つめて『ポツリ』と呟いた葉月。

隼人は平淡な口調なのに、ものすごい発言をした葉月に驚いて動きが止まる。

「……そうか? そうには見えないよ」

なんだか余計に苛立った。

(そんなに淡々と言われても、説得力も何もない)

そう……身体だけが隼人が求めているすべてじゃない。

こんなに『感度良好』であるのは、新しい変化かも知れないが。

(その顔、瞳、表情、声、体温……どうして熱く変化してくれないんだ!?)

それらがすべて揃って……やっと『最高』の答えがでるのだから……。

 

 すると、葉月がそっと……左肩をかばうように横に寝返って起きあがろうとしていた。

「……ジッとしていればいいのに……傷の負担にはなりたくない」

でも、葉月は起きあがった……そして……

「……本当にいやらしいのよ……」

起きあがって、隼人の指先をジッと見下ろしたのだ。

それを眺める葉月の瞳もまだ……『氷の瞳』

だけど……初めてだった。

隼人の『仕草』を……愛されている先を眺めよう、確かめようとする葉月は……。

「……あの、」

葉月がなにか躊躇っている。

「じれったいな……さっきから! 言いたいことは全部言えよ!」

「……いいの?」

「ああ、誰も聞いちゃいない。俺とお前だけじゃないか……」

「……」

また、葉月が躊躇っていた。

余計に隼人は苛立つ……。

 

 「……すごいのね。今日の私」

「え? ああ……そうだね」

自分の感度を確かめてもまだ、他人事のように言う葉月に隼人はとうとう呆れて……

もうすこしで、隼人の方が冷めてしまいそうになったぐらい。

「……だって、私、さっきからあの時のこと考えていて」

「あの時?」

「……はやく……こうしてもらいたかったの」

「……は?」

「あんな男に触られてそれっきり……早く、隼人さんに触ってもらいたかった」

「──!?」

葉月は、止まってしまった隼人の指先をまだ……

冷めた瞳で見下ろしていた。

「薬……覚えている?」

「ああ、うん」

「……あんな薬なんてだいっきらい。。だったんだけど……」

(え!?)

隼人は次々と『……らしくない発言』をする葉月にとうとう驚いて……

そっと葉月から手を引いた。

「……ほら、驚いた」

葉月が、少しばかり傷ついたような微笑みをこぼしたのだ。

「……俺だってそんな薬、頼るような男になりたくないから……

『結構良かった、使ってみてもいいな』と思われても困るよ」

「……そうじゃなくて……」

「……?」

すると葉月が……夜灯りに自分の愛液で光る隼人の手をそっと握った。

そうして、驚いたことに……

『やめないで』とばかりに……元の位置に戻そうと隼人の手を自ら誘導して行く。

隼人は胸がドキドキした。

ときめきとかそんな甘い物じゃなくて……

見てはいけない、怖い物に出逢いそうな……そんな緊張を含めた鼓動だった。

「あんな薬、二度と飲みたくない。でもね? 飲まされたんだもの……

知ってしまったんだもの……」

(……葉月が……葉月が……)

こんな形で、彼女が『解放』されて良いのだろうか??

怪我の功名言うべきなのだろうか??

闇物の薬によって快感を覚えてしまったと思ったのだ。

隼人はややショックを受けたのだが……葉月がもう一つ違うことを言いだした。

「あの時……誰にどうされたってもうおかしくない状態だったから……

『覚悟』はしたわよ? でもね……あの感覚の中、私……

ずっと、隼人さんを思い浮かべていたわ……」

「そう……良かった。と、言えば良いのかな?」

とてもじゃないが、今、葉月を触ることは躊躇った。

『怖い』からだ……。

違う女が急に目の前に現れた気分だった。

「あの朝のこと……責任とってよね」

葉月がそっと潤んだ瞳で隼人を見上げた。

その声が……今まで話していた声より、か細くて小さくて自信がなさそうな声。

「あの朝の事、忘れられないの……薬、飲まされてもずっと思い出していた……

あの朝と同じようにビックリするぐらい気持ちよくて……どうにかなりそうだった!

なにされてもいいとおもった……でも、それは……『あなたなら』……だったから……

すごく、悔しくて……あの男に最悪のコトされたら死んだ方がマシだと思ったら……

隼人さんが……達也が助けてくれて……

あなたは……私に『泣くな!』って叱った……」

「……!!」

ジッと隼人を見つめる瞳が……切なそうに何かにすがるように……

隼人を泣きそうな眼差しで見つめた……!

「待っていたんだから……

あの男に触られたきり……どれだけ我慢していたと思う?

あんな感触、あの朝、隼人さんに焼き付けられて……どれだけ我慢していたと思う?

私……いやらしいんだから……」

動かない隼人の手を葉月が爪を立てて、もどかしそうに引っ掻いた。

『ねぇ?』

隼人は、熱く潤んだ葉月の瞳を見て、目をこすった。

『ねぇ?』

目の前には髪が短い恋人が切なそうに見つめているのに……

そこに『ぼんやり』……髪が長い栗毛の彼女が同じ瞳で隼人を誘っていた。

いつも涼しげな目元から……少しばかり何かが輝いた。

涙までとはいかないが、そんな雫が目尻で光っていたのだ……。

 

『溶けた!』

 

隼人の心がそう確認をした音を弾き出した!

そして……

 

 『はは……』

隼人は半身お越し上げている葉月の身体を覆うように……

ベッドに両手をついて俯いた……そして、そっと笑い声を漏らした。

「隼人さん……?」

葉月が、不安そうに隼人の反応を待っている。

 

 そして……

隼人の胸に『熱風』が瞬時に巻き起り、さっと顔を上げる!

その『威力』は、黒い瞳の輝きから、溶けた彼女の瞳に伝達される。

「そんな事がいやらしい? お前がいやらしいなら、

俺は卑しく獰猛と言わなくてはならないだろうな?」

葉月が一瞬、息を呑んだように表情を止めたのだが……

花びらのような唇が、そっと何かを求めるように開いたのだ。

 

 『葉月……』

 『うん……』

 

 もう鍵はいらない。

何故なら、葉月が白いドレスをまとって、風が入り込む扉の向こう……

扉を全開で激しい風を受けながら……両手を広げていたからだ。

長い髪を強風にはためかせて……大きく両手を広げて待っている。

そこに隼人は飛び込むように走り込んだのだ。

 

 やっと入れてくれた部屋の中……

彼女を抱き上げて……くるくると部屋の中彼女を振り回す。

必死に隼人の首にしがみついて、彼女がクスクスと笑っている。

隼人は白いドレス、長い栗毛の彼女を固く抱きしめて、

ずっと……ずっと……板張りの部屋の中、

風の中、一緒に笑いながら、クルクルと回る……。

 

 「ん……ん、んん!!」

そんな事、お互いの頭に思い浮かべているかどうかは解らないが、

現実、髪が短くなった葉月を、途端に隼人は組み伏していた。

「それ……もしかして、お前のクセ?」

あの朝のように……葉月は左腕は力無くシーツにおとしていたが

右手は頭の上に伸ばして、また……角からシーツを剥がしていたのだ。

そして……口元に運んで、噛みしめていた。

そこから漏れてくる、切なそうな声。うめき声。

それを堪えて、堪えて……漏らさないように葉月は噛みしめている。

水色のシーツは隼人の視界では、角から剥がされて……

見えない背後では、葉月が足の指に挟んで、中央に引き寄せている気配も解る。

意地悪なことに……隼人はそのシーツを葉月の右手から奪い取った。

「ああ、はぁ……ああん」

それでも、まだ、喉から我慢するように葉月は声を奥から絞り出す。

 

 「待っていたよ……ずっと……」

「何を??」

「随分、長いこと、焦らされたなと言っているんだ」

「焦らしてなんか……」

お互いの肌がピッタリと密着していた。

その触れ合う温度がとても熱く感じる。

いつも冷たいような葉月の氷の身体。

みるみる間に溶けてゆくように、しんなりとしっとりとしなってゆく感触。

 

 葉月の白い肌に、久振りに……

隼人の唇から生まれる『魚たち』がたくさん泳ぎ出す。

その魚の列が、白い丘の頂きに達した時……。

「も、もう……」

葉月が隼人の背中にしがみついた。

身体の強ばりようで隼人はすぐに察した。

右手片手で葉月が隼人の背中にそっと爪を立てて引っ掻く。

「……すごいな……」

思わずそう呟いてしまった。

扉に踏み込んで……ほんのわずかの、短い時間だった。

(……最高の感度じゃないか? 知らなかった……!)

「はぁ……あ!」

 

 背を逸らして、呻いた彼女を見下ろして隼人の心の中……。

『返してもらったぞ……悪いな。アンタのお陰もすこしあるかもね?』

隼人は何故かこんな時、最高の瞬間を迎えた彼女を見下ろして眺めながらも

『林』の事を思いだしていた。

あの屈辱を隼人にも与えたあの男。

その男に『完全勝ち』した瞬間を得たのだ。

あんな男と張り合っている自分も情けないかも知れないが……

この時、すっかりすべては流されて……

だから……この後、なんにもあの犯人の男に対しての感情はなくなったのだ。

 

 次の朝……葉月は疲れたように気だるそうに隼人の横で目を覚ました。

傷が痛む……と、気分が優れないようで、隼人も無理をさせたと思ったのだが。

裸で起きあがった彼女の身体には、何匹もの魚がまだ残っていたのだ。

それを見て、葉月がそっと……満足そうにただ笑ったのを確かめた。

「……昨夜、私のことすごいと言っていたけど、隼人さんだって散々じゃない?」

いつもの口達者に戻っていて、隼人も思わず笑った。

二人一緒に朝日の中笑って、シーツにくるまって、また口付けて。

お互いに日頃は言わない『愛言葉』も朝の挨拶のようにお互いが囁く。

 

 その情熱の印を、葉月があの軍服の下にすっかり隠してしまう。

 そして……また、あの男姿に戻る。

 

 でも、隼人は知っている……。

『凍っていた花が雫をまとい開いた美しさ』を……。

 

凛々しい軍服姿の葉月を後ろから眺めて一緒に出勤をする。

でも……

隼人の脳裏には……長い栗毛の彼女が

沢山の薔薇の中、熱風に吹かれながら

悪戯げに微笑んで花びらをまき散らして隼人を誘っている……

そんな情景が、焼き付いたままだった。

 だから隼人は……彼女の瞳が溶けてから数夜も、

ワケもなく彼女に手をかける。

彼女はいたって普通に受け入れてくれているだけなのだが

隼人としては、毎晩……薔薇の花びらをまき散らして笑う長い栗毛の彼女に

『誘惑』された気分になっているのだ。

 

 そして……今夜も……。

犯人の男の影は、隼人から消えた。

そして、夢を見たという葉月の中からも、やっと消えたような気になった一夜。

「暑い!」

葉月の扉は徐々に、隼人の熱風を大量に受け入れるようになってきて

そんな一時をそっと終えた後だった。

「なぁ……窓ぐらい開けようぜ?」

「……いや」

あの瞳が溶けたあの晩、窓が開いていた事を葉月は気にしていて

次からは『閉めて』と言うようになったのだ。

 

 葉月は隼人と違ってグッタリとシーツに顔を埋めていた。

やっぱり、シーツは角から剥がされている。

「……疲れた?」

「その言葉、そっくり、あなたに返すわよ。

私なんか……全然、何にもしていないもの。

隼人さんが『おかしい』のよ。変よこの頃? どうしちゃったのよ?」

二日と空けず、葉月に手を出すものだから、そう言われても仕様がない。

『お前が誘惑する』は、言えなくて……

「うーん。俺もおじさんになる前に頑張っておこうかなと」

「なにそれ!」

隼人の真顔の冗談にグッタリしていた葉月が急に無邪気に笑いだしたのだ。

(おかしいのは……お前だろ? 俺をこんなにして……)

そう言いたいが……確かに葉月は『普通』なのだ。

やっと普通になったのだ。……と、思っている。

だけれども……

隼人の脳裏に焼き付いている花びらをまき散らす髪の長い葉月が

どんどん……悩ましい姿で隼人を誘うのだ。

確か……白いドレスを着ていたのに。

近頃は、一糸まとわぬ姿で白い肌は赤い花びらに覆われて

隼人に向かって、手のひらに載せた花びらをフッと吹きかけるのだ。

 

  だから……一緒に入浴も、風呂上がりの姿確認も。

今まで以上に今の隼人は『危険極まりない』のである。

 

 「あー。明後日、親父が来るんだっけ?」

隼人は裸のまま、葉月の横に寝転がった。

「うん……『玄海』、予約しておいたわよ?」

「そ……」

「まったく、全然お父様が来る準備してくれないんだもの」

「同じだろ? 葉月のパパママが来るときは、俺が色々してあげるさ」

「……きっと、パパとママ喜ぶ……

パパとママ……フランスですごく楽しそうだったし……

隼人さんが色々連れていってくれたことすごく喜んでいたから……有り難う」

有り難うなんて勿体ないと隼人は思った。

(違うよ……お前が娘らしくなったから、よけいに楽しかっただけだよ)

そう言いたかったが……

彼女が、両親が今まで楽しくなかったのは自分のせいと、気にしそうなので言えなかった。

逆に……

「葉月がもてなしてくれたら、うちの親父は俺がもてなすより喜ぶよ」

「隼人さんが予約したことにしておくもの」

葉月はそうして始終にこにこと隼人の横で楽しそうに話すのだ。

だから……

「俺も有り難う……葉月の家とは逆だな」

「逆?」

「うちの親父は娘が出来なかったから、葉月が可愛いんだよ。きっと……

あんなに張り切る親父も……久振りに見たかも?」

「そうなの?」

「……横浜、一緒に行くのか?」

「う、うん……」

葉月が一瞬躊躇ったような気がした。

隼人も躊躇いはある。

きっと、葉月は気が付いている……継母と隼人の関係がどんなものなのか。

確かめること、目の当たりにすることに躊躇っているのだろう。

でも、隼人も同じだった。

(右京さん……今度は、逃れられないだろうな)

そう思っていた。

残念ながら……今年は横浜の桜は葉月と見られそうになかった。

小笠原はもう、湿った暑い空気の季節に入ろうとしている。

葉月がもう、横で寝息を立て始めていた。

以前よりずっと、安らかな顔で眠っていた。

短くなった栗毛を隼人はそっと彼女の額からかき上げる。

最近は露わになった彼女の首筋とうなじが妙に目についてしまう。

そこにそっと口付けて、ベッドを降りて窓を開けた。

 

 ここ最近、よく巻き起こる熱風を身体から追い出すように……

隼人は窓辺で柔らかな夜風に当たってみる。

彼女があまり使わないドレッサーに煙草の箱がおいてあった。

それをなにげなくそっと手にとって

……葉月が吸わなくなった煙草を久振りに吸ってみたのだ。

 

 『親父……葉月が髪短くなった上に男姿だと知ったらガッカリするだろうな?』

そんなところは血の繋がった男同士。

感覚が似ているとどことなく感じてはいる息子の気持ち。

『そろそろ、本気でスカート穿かせるか』

隼人は、誰も使わなくなった綺麗なガラスの灰皿にスッと煙草を押しつけた。