39.結婚話

「休暇の間中…エミリーとは毎日会うことになりました。

勿論…二人そろって『ハヅキ』の話ばかりです。その内に僕は彼女に打ち明けました。

『いま・ミゾノ中佐と付き合っている』と…彼女は大変驚いて…。

僕の中で揺れている気持ちをすべて親身になって聞いてくれました。

でも一つだけ。エミリーが耳を貸してくれませんでした。

『ミゾノ中佐は…私の中では英雄だから。女々しい女の話は聞きたくない』と…。

彼女の中では『ミゾノ』という人間は女であっても…元気な勇敢な女の子でなくてはいけないんだそうです。

だから…『可愛いお人形さん扱い』をする僕には大変怒りました。

『ロニーは間違っている。ハヅキサンをそんな風に閉じこめようとするなんて彼女を認めていない』って。

僕も気が付いていました…。ハヅキの本来あるべき姿は『軍人』と…。

でも。もしかしたら…僕だけが彼女を『女の子』として幸せに出来るんじゃないかと…

すると…エミリーはまた怒りました。『それは…ロニーの勝手な男のエゴだ』と…。

妻に諭されたわけです…。妻は早く日本に帰ってやり直した方がいいと僕に勧めました。

『もう・遅いよ。ハヅキは今フランスに行ったまま…新しい側近候補の男と出会って帰ってこないんだ』

そう言いました。」

隼人はその話がやっと出てきてドッキリした。

あやふやに離れようとしている恋人が新しい男と出会って彼はどう感じていたのか…

隼人は『罵られる』覚悟は出来ていたが…。

「妻は何も構わずに僕に言いました。『手紙でも電話でも良い。フランスから取り戻せ』と。

でも、僕には解っていました。葉月は帰ってこない。その男を気に入ったと。

僕にはない何かが…僕の所には戻ってこない何かを…『サワムラ大尉』の中に見つけた。

その直感ぐらい…付き合っていた男としてありました。

『ハヅキの好きなようにさせたい。それで僕の所に戻ってくるなら…それで良い。』

これで…この一言を最後に妻はハヅキの所に行けとは言わなくなりました。

『そうゆう男が…彼女を大きくしてゆくのね…きっと』彼女はそう笑って言って僕の前から消えました。

エミリーと夏期休暇の間…ハヅキという想い出を通して親しくなりました。

僕の中で結果が出て…エミリーも離れていった。

僕の中に隙間がぽっかり出来ました…。僕はアメリカで休暇を終えるときエミリーにもう一度声をかけました。

エミリーも応じてくれました…。自然に僕の口から出た言葉が…『エミリーも日本に来ないか?』でした。」

「それは…『結婚』ってことで?」

隼人は葉月も知らないだろうハリスの夏のひとときにすっかり引き込まれてしまっていた。

「ええ。そこまではその時は考えていなかったのですが…。

なんとなく・『同志』を見つけたような気がして…。

エミリーも何となく…ハヅキの格好良さが忘れられなくて

どんな男と付き合っても…『弱い男』と映って仕方がないらしく…

僕とハヅキのことを語り合った一時がここ最近で一番の楽しい時間だったと言っています。」

(おいおい…。女にそこまで思わすなんてなんてウサギさんだ!)

隼人は、いったいどんな『少年お嬢さん』だったのかと言葉も出なくなって呆れてしまったほどだ。

「エミリーとは『同志』と言うことで…一緒に暮らすことを決めました。

ハヅキを挟んでの僕たちの会話は本当に笑いが絶えなくて…

エミリーは日本に行くことに最初はためらっていましたが…新しい冒険気分だったようです。

葉月にまた会えるとそれは…日に日に活き活きしてきて…。

それを見ているうちに僕まで…そう…今まで遠くからハヅキを見守ってきたときの

『ときめき』が蘇ったほどです。それで…解りました。

僕は…ハヅキを見守ることが幸せだったんだったと。エミリーを見ているうちに彼女となら

一緒にそれを…ずっとやっていけるんじゃないかと。その気持ちをエミリーに伝えました。

エミリーから言いました…。『結婚しよう』と…。きっかけがきっかけだったので…

女性としてのエミリーに対して『結婚』だけは僕もためらいました。

でもやっぱり…僕のエミリー…。

『ハヅキサンを見守る夫婦が一組くらいいても良いんじゃないか。ロニー!一緒にファンになろう♪』って

それはもう…明るく。夫婦なんて兄妹みたいなモンだ。私とロニーにはそれが出来るからきっと!と…。

そうゆうノリで僕とエミリーは『結婚』を決めたわけです。

ですが、今考えればそんなの体の良い『照れ隠し』で…

僕もエミリーも…結局は惹かれ合っていた『男と女』だったと言うことを…

一緒に日本で暮らし始めてお互いに口にはしませんが噛みしめているところです。」

「…………。私は…結婚とかは考えたことないので解らないのですが…。

確かにそうかもしれませんね…。きっかけがそうであっただけで。

側にいた『藤波夫妻』を見ていても良く感じていました。

彼と彼女も毎日・毎日…どつきあいながらも仲が良くて…兄妹のようですし…。

結婚って『家族になる』そうゆう意味では…エミリー夫人とあなたは良い出会いだったんでしょうね?」

「サワムラ大尉にそう…受け入れていただけると僕も救われます。」

「受け入れるだなんて…私の方があなたに…葉月を返さなかった男なのに」

「成るべくしてなったこと。あなたとハヅキも出逢うべくして出逢ったんですよ。

ただ…今回のメンテ指導の話。ハヅキがやはり僕のこと…

何処か怨んでこんな事しているんじゃないかと。『結婚』を決めた話の『誤解』はないと思っていましたが。

どう考えても…今の彼を当てつけで僕に押しつけているのだろうか?と。

葉月がそんな女性でないことは解っています。そうだとしても…葉月が何を考えているのかさっぱりで…。

ハヅキがフランスから帰ってきてすぐに僕は…今・大尉にした話をすべて語るつもりでした。

ところがハヅキはやっぱり…いつもの落ち着いた顔で『言わなくても解っていたのよ』とばかりに…

僕が話し出そうとするとすぐさま『側近候補の彼に惚れた。でも振られてしまった』と言いました。

だから…僕が結婚を決めようが決めていまいが…フランスで既に新しい恋をしてしまった。

だからもう戻れっこないのだとばかりに…。そこであやふやだった別れ話もまとまってしまったわけです。

僕は仕事以外ではもう…ハヅキの前に姿を現すことはないだろうと思いました。

ところが…サワムラ大尉がフランスから側近としていきなりやってきた。

ハヅキに聞いた話とは違うけど…きっとあなたもハヅキを追いかける決心をしたに違いないと。

エミリーはあなたが来たことを喜んでいました。

『その大尉はきっと…ロニーと違ってハヅキサンを上手に動かしてくれる人よ。

結局…ロニーでは力不足だったのねー』とか言われる始末です。」

ハリス少佐はそれすらも憎めなくて可愛い妻とばかりに頬を染めてまた照れるのだ。

隼人も今度は笑っていた。

(本当に。幸せな結婚をしたんだな)と…。

「私が…葉月の役にどれだけ動けるかは解りませんが…。

私の中では一つ。葉月という女性は『普通の女の子』で…。

軍人の時は、跳ね回る『弟』みたいな者です。

彼女は僕など平凡な男が持っていない力を備えています。

それで彼女が『若い女』ってだけで立ち止まるなら…私達…男が『兄貴達』が

彼女が動けるようにサポートして行くだけです。

特に…山中中佐とはそう心に決め合っています。たいしたことはしていないんです。」

「その気持ちは…今の僕の中にもあります。」

「………」

ハリスの瞳が初めて男らしく輝いたので隼人も息が止まる。

ここまで話がまとまったらもう答えは出たようなものだった。

『一緒にメンテの仕事をしよう』

二人の絡む視線にそういう答えが出ていた。

しかし…そこはまだ…言葉にはお互いにすることが出来なかった。

「また。変なのろけ話とお聞きください。あなたの『欠員補助要請』が出たとき…。

僕はあなたと一緒に滑走路を走ることにためらいを持っていました。

何処かでやはり…葉月の今の男…と言うわだかまりがあったようです。

しかし…やっぱりエミリーに諭されましてね…。

『ハヅキサンのためにもその大尉が上手く動けるように先輩として協力するべきじゃないか』って。

『ロニーの方が先輩なんだから。格好いいところ見せるぐらいの度胸はないのか!』と…。

まぁ。今となっちゃ…彼女の方がまるで第三チームの影キャプテンみたいな積極さです。」

ハリス少佐の照れ笑いに隼人も『すごい奥さんだなぁ』と…

この大人しいキャプテンにはぴったりの奥さんだと苦笑いしてしまった。

「彼女は…最近は…コリンズ中佐の奥さん『サラ』にも新居者として

良く気を使ってもらってお茶会にも出かけたりして…そこでコリンズチームで活躍する

ハヅキのうわさ話を聞いては嬉しそうに僕に報告してくれます。

僕には思いっきり意見をする妻ですが、本当は奥手で大人しい女性なんです。

なのに思い立ったらやることは積極的で、最近は日本食に凝っていて

フェンスの外へ買い物にまで行く有様です。

そこで…時々真っ赤な日本車に乗ったハヅキを見かけてはまた喜んで帰ってきます。

おまけに、いつだったか…ハヅキの助手席に紺色の制服を着た真一君を見つけて

また大はしゃぎです。『あのころのハヅキサンにそっくり♪』とかなり興奮していました。

最近はハヅキより真一君を気に入っているようですよ。」

「真一君を!?」

これまた・すごいミーハーな奥さんだな…と、隼人は妙にコミカルな生活をする

ハリス夫妻の生活ぶりになんだか徐々に笑いがこみ上げてきてしまった。

「そうそう。時々スーパーストアでも自転車で買い物に来ている真一君を見かけては

また・僕に大はしゃぎで報告してくれるんです。

そのうえ…僕がコリンズチームをサポートする日には僕の帰りを待ちかまえています。

『今日はどんな訓練だったか…』とね…。」

「す・すごいですね〜。」

エミリー夫人の熱ッぷりに隼人も思わず引いてしまった。

だが…そんな妻の喜ぶ姿がハリスとしては毎日楽しくてしょうがない…そんな風に隼人には見える。

「どうせだったら…葉月に…奥様を紹介しては?葉月は…かえってその方が喜ぶかも?

葉月の中ではあなたの結婚は『幸せであるに違いない』と思っていて…

その方が別れてしまった手前安心という節は私も見ていますし…」

「と!とんでもない!そんな事したら妻に殺されます!!」

『は?』と隼人は彼の慌てぶりに首を傾げた。

「だいたいにして…彼女がハヅキに憧れていることは…

夫である僕との間の『秘密』なんですから!!

今日は…サワムラ大尉がこうして向き合ってくれたし…。

あなたにはこれからは葉月を幸せにしてくれると言う確信を得たから…。

こうして葉月にも言っていない僕の昔の話もしたんですよ!

いいですか!?『男同士』の話ですからね?

葉月には絶対ぃぃ!僕と妻の昔の葉月に対する『想い』は言わないでくださいよ!!」

ハリスに今にも襟首をつかみかれないほど、テーブルに詰め寄られて

隼人は思わず…『ウン・ウン』頷いていた。

葉月もおそらく今話を聞いたら…動揺するに違いないし…

昔の『少年嬢ちゃん』の姿を隼人に知られたことにもどう反応するか解らない。

葉月から言い出すまではこの話はハリスが隠し通しているように

隼人も知らない振りをする方が賢明だと心が結果を出していた。

おまけに最後にもう一言。

「例え。僕の妻と会うようなことがあっても…僕が妻の話をしたことも!言わないでくださいよ!」

と…。

隼人はもう一度…苦笑いをして『ハイハイ』と頷いておいた。

(はぁ…ビックリしたなぁ。まさか…昔の葉月が絡んで結婚を決めたとは…)

何はともあれ…おかしな話だが葉月がどうやら『結婚キューピット』になっていたようだった。

世の中…何がどうなるか解らないモンだと隼人は一人…首を振ってため息をついてしまった。

最後に彼がこう言いだした。

「僕はハヅキとは戻れなくなりましたが…エミリーのお陰で…

昔と変わらないまま…結婚しても妻という同志と共に『ハヅキ』は生活の中に生きています。

下手に別れて苦い存在になるより僕は…よっぽど良かったと妻にも感謝しています。」

彼のそんな『透明』な笑顔をみて…隼人もそっと…微笑んで

心から彼の結婚を祝福することが出来ていたのだ。

話が一通り終わって、今度はやっとそれらしくお互いの『メンテナンス』に関する

『概念』や『理想』についての話に花が咲いた。

隼人が睨んでいたとおり…ハリスはマメで細やかで真面目なしっかりした男だった。

特に、後輩の使い方については隼人としてはこれから参考になる話を聞かされて

すっかり…意気投合をしていると…17時の定時のチャイムが響き渡った。

二人そろって…『もう・そんな時間?』とカフスをめくって腕時計を眺めた。

ハリスがため息をついた。

「ハヅキ。戻ってこないですね。だいぶ怒らせちゃったかな?」

隼人も呆れてため息をついた。

「こうしてそっぽを向くのもいつものことです。どっかで一服してすねているんでしょう。

帰りの終礼があるからすぐに戻ってきますよ。」

隼人がシラっとした目つきで、そう言うと彼がクスリとこぼした。

「僕も…あなたぐらい余裕で…上手にハヅキを扱えたら良かったんですけど。

今日は…あんなに慌ててムキになるハヅキを初めて見させていただいて。

やはり…大人しいお人形さんに仕立てようとしたのが僕の間違いでした。

ああゆうハヅキも見ていて何処かホッとしました。

あまりにも感情を外に出さない…大人しい女の子だったので。

そこがまた・放っておけない可愛らしさがあったんですけどね…。」

「やめてくださいよ。あいつの何処が大人しい可愛らしいお嬢さんなんですか?

まったく…フランスでも私の生徒はバンバン投げ飛ばすし。

藤波とは口うるさい喧嘩ばっかりするし。とんでもないことばっかり言い出して。

人前ではクールなお嬢さんぶっていて実は本当にがさつで…よく食べるし…

お調子モンだし…私なんか毎日・じゃじゃ馬にやられてばっかりですよ!」

葉月を『可愛いお嬢さん』とハリスが平気で持ち上げるので

隼人が『けっ!』とかいいながら葉月をこき下ろすと彼がまた…クスリと微笑んだ。

「そんなこと言って…。解っていますよ。

僕だってハヅキと短い間でしたが一時を共にしてきた男です。

ハヅキは…可愛い栗毛のお嬢さん。あなただって知っているんでしょう?

ハヅキが微笑んでくれたらすごく…可愛いでしょう?小さな女の子のようで…。」

それは…『同感』だったので…ハリスもそんなハヅキを知っていることに

隼人はちょっとばかし『嫉妬』が湧いたが…それ以上に…

顔が火照って照れていた。

「じょ・冗談じゃないですよ!あいつの何処が…!!」

隼人が今度はムキになるとまた…ハリスにクスクスと笑われていた。

そこへ…葉月が自動ドアをくぐってやっとかえってきた。

二人の男がまだいることに一瞬驚いていたが…構うことなくシラっと隊長席に戻っていった。

「じゃぁ。私はここら辺で…長居をいたしました。」

(あ。指導の件の答え…)

ハリスが立ち上がって隼人は肝心の答えを聞き逃してしまったと慌てて自分も立ち上がった。

すると…彼は、そっと…隊長席の葉月の方に向き合った。

「ハヅキ…。僕。サワムラ大尉を気に入ったよ…。例の話…引き受けても良いよ。」

彼はすねている葉月にそっと優しく微笑んでハヅキの反応を待っていた。

葉月はまだ…彼に素直になれないのかペンを持ってシラっと業務をしていた。

ハリスはため息をついて、隼人に『仕方ない』というおどけた笑いを返して

ヒゲを撫でながら…少しばかり帰るのをためらっていた。

「おい!葉月…彼がこう言ってくれているのに!」

『礼ぐらい言えよ!』と隼人も兄貴らしくくってかかると…。

葉月がやっと席を立ち上がって二人の男の所にやってきた。

そして…葉月は何も言わずに背の高いハリスの背中を一生懸命押して…

ソファーの方に戻そうとしたのだ。

『ハ・ハヅキ??』

子供のように何も言わずに背中を押す葉月に戸惑いながら

ハリスはもう一度ソファーに座らされてしまった。

「私のお茶ぐらい…飲んで行ってよ…。『レモンティー』気に入ってくれていたじゃない…」

栗毛の隙間から…ちょっと恥ずかしそうに葉月が呟いていた。

「そうですよ。このお嬢さんが呼びつけておいて…側近の私に1時間以上も押しつけて

トンズラしたままじゃ…隊長の立場ないようなモンです。お茶ぐらい飲んでいってやってくださいよ♪」

隼人がまたまた…ニヤリとからかうと葉月がまたふてくされて唇をとがらした。

「じゃぁ…一杯。いただいていきます。」

「隼人さんは?カフェオレ?」

ハリスが快く腰を落ち着けて…おまけに『指導の件』も引き受けてくれて…

隼人という男と意気投合したことに葉月の笑顔が急に輝いた。

しかし…

「おっと…俺は…忘れていた。ジョイに頼まれていたことがあったんだ。じゃ!」

隼人は急いでパソコンデスクから一枚のフロッピーを取り出して

サッと隊長代理室を出て…元・恋人同士を二人きりにさせることにした。

『隼人さん!?』 『サワムラ大尉??』

二人の慌てる声を耳にかすめて…隼人は自動ドアを素早く出た。

もう…わだかまりはないだろうから…

ちょっとぐらい別れた後の積もる話もさせてやりたくなったのだ。

隊長代理室を出ると早速ジョイに食いつかれた。

『隼人兄!ハリス少佐と1時間もふたりっきりで何を話していたの??』と…。

山中も知っているのか…シラっとしつつもジッと隼人を見ているのだ。

「さぁね…。ジョイが期待したとおり…男と男の擦った揉んだはあったかもねぇ…」

『マジ!?』とジョイは顔を真っ青をにして叫んだが…

「ハリス少佐は…大人だよ。ああゆう男になれよ。ジョイ♪」

隼人がニヤリと笑い付けると、ジョイはからかわられている事に気が付いたのか

『俺!心配していたのに〜〜!!』と葉月のように子供っぽくつっかかってきた。

「ちょっと…休憩。二人きりにさせてあげて…」

隼人がちょっと疲れた顔をして本部を出ていこうとすると…

「解った。じゃぁ。終礼は俺がしておく…。ゆっくり…してこいよ。」

山中にはどことなく通じているのか…隼人をそっと送り出して

本部員を…葉月の代わりにまとめだした。

そんな山中の兄さんを見て…ジョイも『ごゆっくり…』と隼人をいたわるように送り出してくれた。

(サンキュー…兄さん…)

隊長代理室で二人きり…元・恋人同士が、別れた後の『語らい』

隼人はそっと…山中の声がまとめる本部室の入口を振り返った。

(これが最後だ。素直にしっかり…やれよ。葉月)

夕暮れの中…隼人はポケットに手を突っ込んでそっと…カフェテリアに向かった。